近年、光熱費や生鮮食品など、暮らしに欠かせないものを中心に大きく値上がりし、物価高は終わりが見えない状況が続いています。多くの人が苦労してやりくりしていますが、自ら稼ぐことができなくなって年金が頼りの高齢者ほど物価高の影響を受けています。本記事では、Aさんの事例とともに、年金生活者をサポートする「年金生活者支援給付金制度」についてCFPの伊藤貴徳氏が解説します。
遺族年金含めて「月11万円」…夫の死後、生活苦となった70歳・おひとりさま女性「年金増額の封書」が届いていたが、5年分もらい損ね大後悔【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

申請しておらず、年金をもらい損ねたAさん

Aさん(70歳・女性)は、年金を受け取りながら生活をしています。65歳のときに夫に先立たれ、夫の遺族厚生年金と自分の老齢基礎年金の合計11万5,000円を受給しています。夫の生前と比べ、年金額が減っているため、夫一人分の生活費はなくなったとはいえ、生活は苦しくなっています。

 

初めて年金を受給した当時、年金生活者支援給付金という制度はなかったため、Aさんはこの制度の存在を知らずに5年間過ごしていました。ある日、自宅に届いた請求書の存在に気づき給付金のことを知ります。

 

請求は受理され給付金は支給となりましたが、これまで請求してこなかった過去およそ5年分の給付金を受け取ることはできませんでした。

 

「これまで請求書は届いていたのかもしれないですが、気づかず捨ててしまったり、こんな制度があることをよくわかっていなかったので気がいかなかったのかもしれません」とAさん。

 

[図表1][図表2]のような封筒やハガキが届いていたら、必ず内容を確認しましょう。

「自分は不該当かも」と申請しない人も

Aさんの年金額を例にすると、年間算で約140万円の年金を受給しています。

 

老齢年金の支給要件のなかに、「前年の公的年金の収入金額が年間87万8,900円以下」という条件があるので、Aさんは受給できないのではないか?とお考えの方もいらっしゃると思います。

 

結論からいうと、Aさんは自分の老齢基礎年金と夫の遺族厚生年金を受け取っており、そのうち遺族厚生年金は計算に含めないため、老齢基礎年金のみで年間87万8,900円以下の場合は年金生活者支援給付金を受け取ることができます。

 

支給要件に当てはまっているにも関わらず「自分は不該当だろう」と請求されない方もいらっしゃいますので、少しでも不明な点があれば給付金専用ダイヤルやお近くの年金事務所で相談してみましょう。

 

<参考>

厚生労働省 年金生活者支援給付金特設ページ

https://www.mhlw.go.jp/nenkinkyuufukin/

 

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表