一人暮らしの高齢者や、ぺット不可のマンション居住者に人気のペットロボット。ぺットロスで辛い経験はしたけれど、「またペットを飼ってみたい」という人にも需要があります。そんなペットロボットに認知症軽減などセラピー効果も確認されていることをご存じでしょうか。最新のペットロボットが、我々の未来にどんな影響を与えるのか、考察していきます。
ストレスや認知症の軽減にも効果を実証…単なる「代わり」じゃない!癒しと安心の最新ペットロボット (※写真はイメージです/PIXTA)

「要介護5」から「要介護2」に軽減させたペットロボットの可能性

 

ペットロボットは一人暮らしの高齢者の見守りもしてくれます。ミクシィが開発した「Romi(ロミィ)」は手のひらサイズのかわいいペットロボット。会話型AIロボットで、Romiのほうから話しかけてくれ、毎回話す内容も異なります。天気予報や目覚まし機能、占いなどの機能も充実。

 

また、顔や声の登録が3人まで可能で、名前で呼びかけてくれることも。専用アプリのインストールで飼い主の行動を記録する機能も使えるため、離れて暮らす高齢の親御さんの見守りにも最適ではないでしょうか。英会話や脳トレ機能を利用すれば、認知症予防にも一役買ってくれるかもしれません。

 

さらにペットロボットは高齢者の認知症軽減にも効果が認められています。アザラシ型ロボットの「パロ」は、国内外で高齢者治療に多くの実績を残しているメンタルコミット型ペットロボットです。

 

デンマークでは2009年ごろからパロのセラピー効果を評価。国家プロジェクトとして高齢者ケアに積極的に採用しています。

 

アメリカ・テキサス州では61名を対象に「パロあり」と「パロなし」の2グループにわけ、実験を実施。20分間の触れ合いを週3回、12週間続けたところ、不安やうつ・痛み・ストレスなどの改善が認められました。不安に対する抗精神薬投与が低減するなどの効果もあったといいます。

 

ペットロボットは薬の投薬によって付随する副作用の心配もありません。高齢者にとって極めて健全なケア方法といえるのではないでしょうか。

 

日本でも介護福祉施設や高齢者病棟など、パロの導入を開始している施設があります。2013年から在宅介護でパロを導入している富山県では、認知症介護者の問題行動が低減化したことが報告されました。

 

認知症と統合失調症で「要介護5」だった高齢者が、パロと触れ合うことによって「要介護2」まで改善したという好例もあります。特に在宅介護の場合は介護する家族の負担も問題となっています。介護度が下がることによって、介護する家族の精神的・身体的ゆとりにもつながるでしょう。

 

ソニーの有料老人ホームではaiboが導入され、施設の入所者だけでなく介護スタッフの心の癒やしにもなっているようです。

 

犬や猫を老人施設に入れるには、噛みつきや引っかきなどの問題があったり、感染症のリスクがあったりとなかなか難しかったようですが、ペットロボットならこれらの問題もクリアできます。

 

ペットロボットは「癒やし」や「かわいさ」といった役割だけではなく、高齢化社会やストレス社会に向けた大きな可能性を秘めているといえるのではないでしょうか。我々の未来の心の安寧にペットロボットは欠かせない存在になるかもしれません。

 

 

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吉田康介

フリーライター