現代社会では、デジタル技術の進化が私たちの日常生活に大きな影響を及ぼしています。特に、COVID-19パンデミックは、オンラインでの娯楽の消費と仮想空間での交流への依存を加速させました。小説や物語と言った文学はかつてポピュラーカルチャーでした。しかし現代、紙出版や書店数の減少で、紙の本を手に取る機会が少なくなっているのではないでしょうか?※ そこで今回は、あらゆる娯楽や文化がテクノロジーによってアップデートされていく中、文学や物語とテックの新しい融合についてご紹介します。
「物語を読むのではなく、体験する」VRビジュアルノベルの世界

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

絵、映像、音楽、選択肢を伴うストーリーで進むビジュアルノベルの世界

まずは「ビジュアルノベル」というゲームジャンルについて説明しましょう。1996年に日本で発売されたLeaf社の「雫」など、美少女キャラクターが登場するビジュアルノベルが1990年代後半から高い人気を誇っています。

 

ビジュアルノベルとは、デジタルデバイスの画面上で読む、独特の小説形式で、テキストに加えて絵、映像、音楽、選択肢、画面効果などが組み合わされたものを指します。電子書籍とは異なり、ビジュアルノベルは絵や音楽が不可欠です。

 

以前は恋愛シミュレーションゲームがコンシューマーゲーム機で人気を博していましたが、現在は恋愛アドベンチャーゲームが台頭しており、多くがビジュアルノベルとして分類されます。

 

全画面にメッセージが表示される形式が多く、プレイヤーは特定の主人公を操作するより、物語に深く没入する形でゲームを進行します。対話を通じてストーリーが進み、プレイヤーの選択によって物語が分岐することもあります。

 

こうしたゲームはしばしば、その文学的な要素においても高く評価されています。

 

英語圏でも“visual novel”という言葉が、キャラクターの立ち絵と背景、テキストボックスでセリフが表示されるスタイルのゲーム全般を指す語として使われています。

視聴者が展開を選べる? ゲームのような映画も

一方、2018年12月にNetflixで配信された『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』という作品は、映画でありながらアドベンチャーゲームのような選択肢が出る新しい形式を採用しています。

 

この映画では、画面に表示される選択肢を視聴者が選ぶことで、物語の展開が変わります。映画にゲームの要素が混在しているこの形式は、映画とゲームの境界を曖昧にし、新しい視聴体験を提供しています。

 

そして現在、このような「ゲームのような映画」または「映画のようなゲーム」といった作品が、VR(拡張現実)技術によりさらに進化しています。VR技術を活用することで、より没入感のある体験が可能になり、視聴者は物語の中でよりアクティブな役割を果たすことができます。