普段は黒字だが…A先生のクリニック収支状況
筆者はまず、会計事務所から提供されている月次試算表を確認しました。すると、毎月の収支はプラスですが、職員へ賞与を支給した月はマイナスとなっており、1年間を平均すると損益差額は数百万円程度のプラスしかありません。
ここから所得税・住民税を支払ったあとの生活費や奥様の介護等を考えると、かなり厳しい状況であることがわかりました。
老後2,000万円問題は「まったくの他人事」と油断していた
A先生に「老後2,000万円問題はご存じですか?」と質問をすると、テレビや新聞で見かけたことはある程度で、自分には関係ないと、詳しくは把握していないとのこと。
令和元年に金融庁が発表した金融審議会の 「市場ワーキング・グループ」報告書が発端となって「老後2,000万円問題」がいわれるようになりました。
金融庁の報告書によれば、一般的な家庭における老後資金は、退職金等や年金給付等だけでは生活できません。そのうえ、長寿化により生活資金が必要になる年数が伸びているため、最低限の生活を担保するために平均2,000万円程度の資産が必要となります。
ここに介護費用等の支出が発生すればさらにマイナスは拡大。そのためには早い段階から資産形成と運用・投資を行う必要があるという趣旨の報告書です。
A先生はまさにこの問題に直面しています。収益減であっても奥様の介護がなければ、小規模企業共済の積立金を取り崩すことで生活はできたと思います。しかし、状況が変わってしまったためになんらかの手を打つ必要が出てきたのです。
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