日銀は2023年7月28日、金融政策を転換し、長期金利の上限を緩和しました。これは物価上昇を抑制する方向への政策転換であり、日本がこれから本格的なインフレ時代を迎える可能性を示すものです。ただし、インフレには「良いインフレ」と「悪いインフレ」があり、それぞれ資産運用の考え方・方法が異なります。これから到来することが想定されるインフレの性質と、そのなかでの資産運用のあり方について、投資歴20年以上、金融・投資ライターの山下耕太郎氏が解説します。
日銀「方針転換」でインフレ時代の到来間近!?…令和を生きる現役世代に必要な「視点の切り替え」とは? (※画像はイメージです/PIXTA)

良いインフレと悪いインフレの違い

(※写真はイメージです/PIXTA)
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日本では、バブル崩壊以降、物価上昇率が低下し、一時期はデフレも経験しました。しかし、政策目標の2%を超える消費者物価上昇率が2022年に記録されるなど、現時点ではインフレに転換する兆しもみてとれます。

 

過去のインフレを振り返ってみると、戦後の経済復興期や高度成長期には、年平均上昇率が4~5%となり、1950年から1970年には物価が2倍以上に膨れ上がりました。

 

さらに、1970年代には、2度のオイルショックを経験し、年平均上昇率が8%を超える高い物価上昇率を経験することになり、1974年には、前年比で20%を超える上昇率を記録したのです。

 

1980年代はバブル景気でしたが物価上昇率は年1%台後半まで低下し、バブル崩壊後の1990年代後半以降の日本は、物価上昇率が0%〜-1%の緩やかなデフレを経験しました。そして、景気低迷とデフレ脱却のため、1990年代以降、金融緩和政策や財政拡張政策が繰り返し実施してきました。

 

その後、2013年に日本銀行は消費者物価の前年比上昇率2%を物価安定の目標として定め、金融緩和を推進し、2022年に、政策目標を超える消費者物価上昇率が達成されたのです。したがって、これからインフレになる可能性があります。

 

ただ、インフレには、「良いインフレ」と「悪いインフレ」があります。

 

良いインフレでは企業は利益を上げ、社員の給料が増え、消費者は生活費の増加を給料アップで吸収し、もっと商品を買うようになるでしょう。商品がたくさん売れるので、企業も儲かるという好循環が生まれ、景気が良くなります。つまり、良いインフレは「景気拡大をともなう物価上昇」です。

 

一方、悪いインフレは、商品の仕入れ価格の上昇を商品価格に上乗せできず、企業の業績が悪くなります。そして、賃金が上がらないのに身の回りの商品が値上がりして家計を圧迫する、という悪循環をもたらします。

 

もし、これから想定されるインフレが悪いインフレであったとすれば、資産を守るための対策をとらなければなりません。

悪いインフレ「ハイパーインフレ」「スタグフレーション」

(※写真はイメージです/PIXTA)
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悪いインフレには、「ハイパーインフレ」と「スタグフレーション」があります。

 

「ハイパーインフレ」とは、短期間で物価が数倍になる急激なインフレのことです。主な原因は「国家財政の極端な悪化」と「通貨供給量の過度な膨張」などで、通貨への信用が失われ、お金の価値が急落してしまいます。

 

日本でも、第二次世界大戦後の1945年8月から1949年初めまで、物価が約70倍に高騰し、ハイパーインフレとなりました。そして、預金封鎖や財産税創設、食糧確保などの措置がとられたのです。このような状況は、国や中央銀行でも制御が難しく、私たちの生活に深刻な影響を及ぼします。

 

そして、ハイパーインフレと同じくらい注意したいのが「スタグフレーション」です。スタグフレーションは、景気後退とインフレが同時に進行する減少です。不景気で給料が上がらないなか、物価が上昇して家計を圧迫するので、「悪いインフレ」です。

 

世界的にインフレが加速しているなか、日本でも物価は上昇傾向にあります。ハイパーインフレが発生する確率は低いかもしれませんが、景気後退とインフレが同時に進行するスタグフレーションへの懸念は高まっているといえるでしょう。