複雑怪奇な日本の年金制度。そのため「年金、これだけもらえるはず」という目論見が外れることも珍しくはありません。みていきましょう。
年金一括受給で「2,000万円」もらえると意気揚々も…75歳・元サラリーマン「年金5年時効」に絶叫「えっ、聞いてないよ!」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「年金の繰下げ受給」で受取額は1.84倍に!

年金の繰下げ受給は、老齢年金を65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることができる制度。1ヵ月繰り下げるたびに0.7%ずつ増額となり、その総額率は一生変わることはありません。また国民年金と厚生年金、一方だけを繰り下げるということもできます。

 

実際、どれくらいの年金額になるのか計算してみると、月17.98万円だった年金は、66.0歳で8.4%増の月19.49万円に。そして70歳では25万円を超え、75歳ではおよそ2倍にもなります。

 

【65歳で17.98万円だった年金、繰下げ受給でどうなる?】

66.0歳:19.49万円

67.0歳:21.00万円

68.0歳:22.51万円

69.0歳:24.02万円

70.0歳:25.53万円

71.0歳:27.04万円

72.0歳:28.55万円

73.0歳:30.06万円

74.0歳:31.57万円

75.0歳:33.08万円

 

つまり丸5年待てば、年金は1.504倍になり、手取りで23万~24万円ほど手にできる計算になります。多くの人にとって「これだけもらえたら安心!」という水準といえるのではないでしょうか。

 

年金は過去を遡って「一括受給」もできるが…

年金の受け取りを待つ分、受取額を増やすことのできる「年金の繰下げ」。しかし、

 

――どうしてもいますぐにまとまったお金が必要

 

たとえば家の増改築。高齢者だから大きな借金はできない……そんな人のために、年金は遡って受け取ることができる制度があります。

 

――よかった、10年間待ったから、その分を……

 

月17.98万円の10年分だから、2,000万円近くを受け取れる。そう意気揚々としていた75歳男性。しかし少々残念なのは、「年金は5年分しかさかのぼれない」というルールがあります。男性が受け取れるのは70歳からの5年分の年金だけ、ということです。

 

――えっ、5年分だけ⁉ そんなの、聞いてないよ!

 

そう叫んだところで、ルールですから仕方がありません。ただそんな人に対して、請求の5年前の日時点で繰下げ受給の申出があったものとみなして増額された年金を一括で受け取れるという救済策があります。仮に5年前、月17.98万円の年金が1.420倍になっていたら……その5年分である1,500万円ほどを一括で受け取ることができます。当初思い描いていた金額よりは少ないですが、それでもまとまったお金が必要なときにはありがたい制度だといえるでしょう。

 

しかし「年金の一括請求」の際に覚えておきたいのが税金の問題。年金は雑所得で所得税の課税対象。年金を一括受給した場合は、過去に行った確定申告の修正申告をする必要があります。一括受給した年金が丸々手に入ると思っていると、「えっ、思っていたよりも少なっ!」と言葉を失うことになるので、注意が必要です。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査の概況』

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』

日本年金機構『年金の繰下げ受給』