「ひとり親」といえば、母子家庭が取り上げられることが多い。しかし、その影に隠れて経済的に厳しい状況に置かれている父子家庭も存在すると株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏はいいます。本記事では、吉田紘一さん(仮名)の事例とともに父子家庭の実態とその救済措置について解説します。
月収30万円の52歳シングルファザー…止まらない物価高に悲鳴「妻さえ生きていれば」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

利用できる手当てや支援の存在

(※画像はイメージです/PIXTA)
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吉田さんは自動車の処分や親子で料理を学んで自炊を増やすなど、さまざまな家計改善をしましたが、どうしても月3万円程度の赤字は残ってしまいます。

 

吉田さんはすべて自力で何とかしなければいけないと考えているようですが、実は日本には公的な支援がさまざま存在します。まずは国や地方自治体での支援が受けられないかどうか確認することが大切です。

 

東京都江戸川区在住の吉田さんの場合は『児童育成手当』の受給を受けられる可能性があります。児童育成手当は、東京都内各区市町村が条例を設置し実施している事業です。東京都江戸川区のHPには

 

児童育成手当とは、離婚・死亡・遺棄などの理由で、父親もしくは母親と生計を同じくしていない父子・母子世帯等の児童の福祉の増進を図るために設けられた手当です。

 

とあり、一定の所得制限はありますが、正社員で働いているひとり親世帯でも利用しやすい制度といえます。なお、手当の金額は『支給対象児童1人につき月額1万3,500円』となっています(2023年7月17日時点)。

 

また、直接お金を受け取る支援以外にも、親子の医療費の助成や、転職のための職業訓練に対する給付金の制度など、想像以上に国や地方自治体では支援制度が存在します。

 

それから吉田さんが万が一死亡した場合には、公的年金制度から娘に遺族年金が支払われますし、先ほどあげた医療費の助成があることを考慮すれば、生命保険や医療保険などの見直しも可能かもしれません。

 

ただ注意点として、これらの支援は原則として申請ベースであるということ、すなわちその制度の情報を知って自分で申請しなければその恩恵を受けられません。

 

厚生労働省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告(令和3年11月1日現在)では、ひとり親世帯の福祉関係の公的制度等の利用状況というものもありますが、市区町村福祉関係窓口の利用に関して『利用したことがない』という回答が、

 

母子家庭世帯:54.0%(うち知らなかったが8.9%)

父子家庭世帯:68.7%(うち知らなかったが30.4%)

 

となっています。父子家庭においてはそもそも知らないという割合が多くなっているのです。また、仮に知っていたとしても、父子家庭世帯の場合、母子家庭に比べて少数派という点から、なかなか相談しづらいという気持ちもあるのかもしれません。

 

吉田さんのように、自力で苦しんでいる父子家庭世帯は少なくないと思います。立て直しにかかる前に、得られる情報を揃えてから対策を考えたほうが、選択肢も広がりますし自分の負担も軽くなることが多いと思います。まずはお住まいの地域の役所の窓口や家計や生命保険相談ができるファイナンシャルプランナーなどに相談してみましょう。

 

 

谷藤 淳一(株式会社ライフヴィジョン代表取締役、CFP/1級ファイナンシャルプランニング技能士)

2010年夏、母が乳がんにり患し、がん患者の家族という立場に。約9年間の闘病期間中、母のがん治療に付き添い、医師やがん医療と向き合ってきて、がん保険の知識だけでは、まともにがんと戦うことができないということを痛感。それ以来、がん保険に加入する時点で、がんのことや日本の医療のルールなど必要な情報をあわせ持って、初めて本当の備えになることを知る。現在はがんの備え専門パーソナルアドバイザーとして、個別相談、執筆、セミナー講師、研修講師などに従事し、がん保険だけではできない真のがんへの備えを提供することを使命に活動している。