なかなかお金が貯まらないAさん夫婦
メーカーの営業職の43歳のAさんは、アパレル企業で正社員として働く40歳の妻と5歳と3歳の息子の4人家族です。夫婦ともに明るく仲が良く、都心にマンションを借りて生活していますが、子供のことも考えて、一戸建ての購入を検討して相談に来られました。
※ご本人の了解を得て、一部脚色して記載しています。
Aさん夫婦は家計簿を付けておらず、お互いの収入のなかから生活費を出し合っており、それぞれが貯蓄をしていると思っていたのですが、家のことについて話し合ったときに2人とも5年前からほとんど貯蓄が増えていないことが判明しました。
夫「十分に生活費を渡しているじゃないか! なぜ貯金しないんだよ」
妻「貯金できるほどもらってないわよ! あなたのほうが収入多いでしょ。何に使ってるの?」
と、喧嘩まで始まる始末です。
Aさん夫婦の貯蓄が増えないワケ
Aさんご夫婦の貯蓄が増えない理由は、次の2つが大きな原因です。
貯蓄の目的と目標額が決まっていない
貯蓄が増えない人の多くが、貯蓄の目的と目標額が決まっていないことが挙げられます。はっきりとした目標がなければ、どうしても人間は意志が弱くなってしまうもの。明確な目的と目標金額がなければ、貯蓄は増えません。
Aさん夫婦はどちらも十分に収入がありますから「そのうち貯まるだろう」という気持ちもあって、お金のことは深く考えずに今まで過ごされてきたようです。
ですが、すでにお2人とも40代。子供2人にはこれからはお金もかかってきますし、老後資金を貯めることも考えないといけません。これからは住宅ローンも抱えることにもなるので、貯蓄やお金の使い方にもう少し意識を持っていきましょう。
無駄遣いが多く、収支状況がわかっていない
Aさん夫婦のように貯蓄ができない人は、無駄遣いが多く、家計の収支状況を把握できていないケースが多いものです。無駄な出費や衝動買いが多かったり、固定費の割合が高かったり、といった傾向があるのですが、本人はそれほど自覚がありません。Aさんのケースで問題だったのは、家計簿も付けておらず、毎月の支出状況がよくわかっていないところです。
Aさんは営業回りのせいかグルメで着るものもおしゃれな方で、趣味もゴルフとお金がかかります。奥さんもアパレル企業にお勤めですから、ほかのご家庭に比べて洋服やバッグなどの小物を多く購入されるようで、子どもたちにもいいものを着せているようです。
ほかにもお話を伺って、支出を減らせる部分は次のとおりであることがわかりました。
①外食が多い
外食が多いのも気になりました。Aさんは帰りが遅く、夕食はほとんど家では食べないようですし、休日になると子供を連れて家族で外食をしています。また、仕事場でのお昼も夫婦ともに外食したりお弁当を購入したりと、その都度お財布の口を開けています。外食を減らすだけでもかなり効果がありそうです。
②海外旅行が多い
海外にも年に1~2回は家族で旅行しているようで、これも十数年続けばかなりの金額になります。しかし、小さい子供を海外に連れて行ってどのくらい理解できるのかはわかりませんし、1番問題なのは、海外に行きたくなったときに行けない状況になることです。
たとえば、「海外の大学に行きたい」とか「海外で仕事がしたい」と子供にいわれたときに、お金を理由に諦めさせざるを得ない状況にならないかどうか、ということです。
日本は今後も人口減少は加速しますし、経済成長も期待はできません。増税や社会保険料のアップもあるでしょうから、10年後や20年後のことを考えると、成長した子どもが「海外で勉強したい」「海外で仕事がしたい」と言い出さないとも限りません。
「子どものころはよく海外に行ったのにどうしてダメなのか?」といわれないためにも、海外旅行の計画や子どもの教育資金計画は慎重に行う必要があります。
特に今後も円安傾向が続くと海外にもなかなか行きにくくなります。海外移住を考える資産家の方も増えてきましたので、収入のある方でもマネープランは重要になります。「海外旅行を止めましょう」とまではいいませんが、間隔を空けるなど工夫をしてみましょう。
③習い事が多い
Aさん夫婦の場合は子供の習い事も多いのが気になりました。
上の子供だけでも、水泳に英会話、スポーツクラブと月に2万円は超える金額になっていました。習い事で問題なのは、月謝以外にも教材やユニフォームなどのお金がかかることです。さらに大会への参加や、飲食も含めた集まりなどがあるケースもあり、その都度出費が必要になる習い事もあります。
上の子供に習い事をさせるのであれば、下の子供にも同じ習い事をさせたいでしょうし、差別してしまうと兄弟間や親子間で亀裂ができてしまうケースもあります。
中学生や高校生になったら塾や家庭教師などさらにお金がかかってきます。いまさら辞めさせるのも大変でしょうが、あまり興味を持たなかった習い事であれば辞めさせてしまいましょう。子供が中学生や高校生になるころには、Aさんは50代も半ばですが、世の中では「役職定年」で収入がダウンしてしまう人もいる年ごろです。
子供に「いつ、どのくらい」お金をかけるのか、を一度考えてみましょう。
④家賃が高い
おしゃれなAさん夫婦のお住まいは、結婚当初から住んでいる賃貸マンションです。場所も都心なので家賃も管理費などを含めて22万円程度かかっています。家賃なども立派な固定費です。
今回、Aさんご夫婦は、住まいの取得を考えていらっしゃるとのことなので、住宅ローンのシミュレーションをしてみました。Aさんの年齢を考えて、20年ローンとしています。
①借入額:4,000万円 金利1% 20年ローン(ボーナス時返済なし)
毎月の返済額:約18万4,000円(総返済額:約4,415万円)
②借入額:3,000万円 金利1% 20年ローン(ボーナス時返済なし)
毎月の返済額:約13万8,000円(総返済額:約3,312万円)
毎月の返済額は現在の家賃よりも減らせますから、固定費のカットとなります。このシミュレーションを参考に、お2人でいまの貯蓄額から頭金をどのくらい出せるかを話し合っていただき、建築場所や家の大きさを考えていただくことにしました。
住まいの金額が決まってから住宅ローンを考えるご家庭が多いですが、まずは住宅ローンを試算してみて確実に返せる金額を決めたあとに住まいの購入金額を決定したほうが失敗しません。