60歳から資産運用をする場合、若い世代と比べると時間に限りがあります。そこで、CFPの藤川太氏は、新NISAの制度を上手に使って「使いながら増やす」ことにより、資産の寿命を延ばす工夫が重要だといいます。どのようにすればいいのでしょうか。藤川氏の著書『60歳からの得する! NISA大改正』(株式会社ART NEXT)から一部抜粋して紹介します。
60歳からの新NISA「雪だるま式に増やす方法」と80歳〜100歳までの「取り崩しシミュレーション」【CFPが解説】

新NISAで「使っても増える」ようにするには

資金に余裕があれば「一部売却して再投資」

新NISAで運用中の資産は、いつでも自由に売却し、現金化できます。ある程度利益が出たら、その分を売却し、旅行や子どもの住宅取得資金の援助などに充てたいと考えている人もいるかもしれません。

 

新NISAでは、資産の一部を売却しても、運用を継続していれば再び資産が増えることも期待できます。また、新NISAは、非課税運用期間が無期限であるのに加え、売却した分の枠が翌年復活するしくみもあるため、売却して空いた枠に翌年再投資することができます。これにより、「使いながら増やす」ということがしやすくなるのです([図表3]参照)。

 

[図表3]新NISAで「運用しながら取り崩す」イメージ

 

このことを考慮に入れると、実質1,800万円以上の資金を投資できることになります。投資する資金に余裕があるという人は、このしくみを上手に活用し、ライフプランに合わせて必要額を引き出すという使い方をしてもよいと思います。

 

その場合、預貯金等の安全資産や生活費をまかなう年金収入と併せてNISA資金の使い道を考えることが大切です([図表4]参照)。

 

[図表4]老後に必要な「特別支出」にNISAの一部を取り崩して充てる(イメージ)

 

頻繁に売却すると資産寿命を縮める

ただし、あまり頻繁に売却してしまうと資産が増えるスピードが減速し、資産寿命を延ばす効果も得にくくなってしまいます。若い世代であれば、結婚資金や住宅資金のために一部解約したとしても、その後の運用にたっぷり時間がかけられます。しかし、60歳からは運用できる時間に限りがあることも考慮しなければなりません。

 

短期間で売却を繰り返し、お金を引き出してしまっては、運任せの運用になりやすく、資産が複利で増える効果をドブに捨てるようなもの。すぐに使うのであれば預貯金として持っていたほうが、元本割れリスクもなく安全です。

 

資金に余裕があり、「楽しみのためにNISAの運用をしている」という人は別ですが、資産寿命を延ばしたい人は、売却する目的や必要性を十分検討しましょう。