老後の生活を支える年金ですが、専業主婦世帯がもらえるのは、夫の「国民年金&厚生年金」と妻の「国民年金」。ただこれで暮らしていくのは、少々難しいようです。「もう少し年金がもらえたら……」というなら、考えたいのが「年金の繰り下げ受給」。自分で年金を増やすことのできる制度ですが、果たして、夫婦の年金はどれくらいになるのでしょうか。
65歳なら「年金手取り20万円」だったが…70歳での「受取額」に専業主婦、歓喜 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金の手取り額を考えると、専業主婦世帯では「年金だけで暮らす」は難しいが…

「会社員の夫と専業主婦の妻」という夫婦であれば、月23.5万円

 

「会社員の夫と、キャリアに中断のある妻」という夫婦であれば、月27.8万円

 

「平均的な会社員の夫と会社員の妻」という夫婦であれば、月31.4万円

 

年金収入は雑所得なので課税対象となり、さらに社会保険等も天引きされるので、年金の手取りは額面の85〜90%程度になります。そうなると手取りは順に19.9万円、23.6万円、26.9万円ほど。

 

一方で65歳以上、無職の夫婦のみの世帯の1ヵ月の平均支出は、23万6,696円(総務省『家計調査 家計収支編』2022年平均より)。専業主婦世帯は当然のことながら、妻にキャリアの中断がある場合も年金だけで暮らすのは苦しいといったところでしょうか。

 

いくら貯蓄があるのかはさておき、年金だけで生活費を賄うことができれば、老後の安心感は増すはず。そこでひとつの選択肢として考えたいのが「年金の繰り下げ受給」です。これは原則65歳で受け取る年金を、66~75歳までの間に繰り下げて、増額した年金を受け取ることのできる制度。繰り下げた分の増額率は一生変わらず、また老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げることもできます。

 

増額率は1ヵ月繰り下げるたびに0.7%。つまり年金受給額を最大0.84%と、およそ2倍にすることができるのです。

 

たとえば「会社員の夫と専業主婦の妻」という夫婦が68歳から年金を受け取るようにしたなら。増額率は25.2%で、夫婦で月29万4,540円の年金を受け取ることに。手取りは25.0万円と、年金だけで暮らせる水準に達します。

 

ーーたった3年、我慢しただけで!

 

と思わず心を躍らせる妻。「じゃあ、70歳まで繰り下げたらどれくらいになるのかしら?」と計算してみると、増額率は42.0%。額面は33.4万円、手取りは28.3万円程度になります。「すごい!」と歓喜する妻。「じゃあ、いっそのこと、75歳まで我慢したら、どれくらいになるのかしら?」と計算してみたら、増額率は0.84%。額面は43.2万円となり、手取りは月36.7万円になります。

 

月36万円の年金収入。これだけの生活費があれば、老後の心配は随分と軽減されるのではないでしょうか。ただ年金の繰り下げ受給、「途中で亡くなったら大損!」というネガティブな部分も。「繰り下げの途中で、やっぱり年金がほしいとなったら、どうすればいいの」という心配をする人も多いようです。

 

死亡したら年金が受け取れないのは仕方がないこと。このようなリスクもあることを加味して、検討するほかありません。

 

「繰り下げ途中に年金が必要になったら……」という不安については、特に問題はありません。年金の繰下げ受給を希望する場合、通常の流れではまず「基礎年金・老齢厚生年金支給繰下げ申出書」を提出。このとき「XX歳まで繰り下げます!」と宣言するわけではありません。66歳以降、年金を受け取りたいタイミングで年金の請求を行えば、手続き時点で増額率が決まり、年金の給付が始まります。

 

年金の繰り下げ受給ではよく「損益分岐点」が話題になります。「70歳まで繰り下げたなら、81歳まで生きれば得になる」などというものです。確かに、得か損か、ということも大切ですが、最も大切なのは夫婦の老後にあったマネープランと、それに合わせて年金受給のタイミングを考えること。まずは夫婦でよく話し合うことから始めましょう。