Aさん夫妻はどうすればよかったのか?
絶対的な答えはないのですが、贈与というものは一旦あげたら戻ってくることはない片道切符という性質があります。あげたものである以上、その権利は贈与を受け取った方のものとなり、その後、万が一のことがあった際は、法定相続人のものになります。Bさんのように妻子がいる場合は、親が一旦あげたものがまたもとに戻ってくることはありません。
贈与したあとにどのようなことが起きたとしても、贈与した事実を覆すことはできません。どのようなことがあったとしてもその贈与に悔いが残らないのか、贈与する側はよく考えたうえで決定したほうがよいでしょう。
話が少しそれますが、筆者のもとへ相続の相談にやってきた親御さんから「息子のお嫁さんは家のこともしないし、私たち親のことも考えてくれない。息子や孫には相続させたいが、お嫁さんには少しも残したくない」という声を聴くことがあります。そう思う背景には感情のもつれがあり、気持ちとしてはわからなくはありません。遺言書などの生前の対策で親御さんの気持ちを一定叶える方法が、まったくないわけではありません。
しかし、その気持ちに執着しすぎて落としどころを見失ってしまってもいけません。法定相続人が持つ権利がどういうものかを理解して、気持ちの落としどころを見出すのは時間がかかる作業でもあります。だからこそ、相続対策は早い段階から開始しておくことが肝心です。
森 拓哉
株式会社アイポス 繋ぐ相続サロン
代表取締役