令和5年12月31日までは、子や孫の住宅資金の贈与を1,000万円まで非課税とする制度を活用することができます。これを利用し、多くの親世代が子や孫の住宅購入のために贈与を行っていますが、事前によく考えておかなければ、あとになって後悔するケースというも……。本記事では、Aさんの事例とともに、住宅資金の贈与の注意点について、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。
一人息子に甘々の〈年金30万円の60代夫婦〉1,000万円を贈与も…「嫁と見知らぬ男」に渡ってしまう悲しすぎるワケ【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Aさん夫妻はどうすればよかったのか?

絶対的な答えはないのですが、贈与というものは一旦あげたら戻ってくることはない片道切符という性質があります。あげたものである以上、その権利は贈与を受け取った方のものとなり、その後、万が一のことがあった際は、法定相続人のものになります。Bさんのように妻子がいる場合は、親が一旦あげたものがまたもとに戻ってくることはありません。

 

贈与したあとにどのようなことが起きたとしても、贈与した事実を覆すことはできません。どのようなことがあったとしてもその贈与に悔いが残らないのか、贈与する側はよく考えたうえで決定したほうがよいでしょう。

 

話が少しそれますが、筆者のもとへ相続の相談にやってきた親御さんから「息子のお嫁さんは家のこともしないし、私たち親のことも考えてくれない。息子や孫には相続させたいが、お嫁さんには少しも残したくない」という声を聴くことがあります。そう思う背景には感情のもつれがあり、気持ちとしてはわからなくはありません。遺言書などの生前の対策で親御さんの気持ちを一定叶える方法が、まったくないわけではありません。

 

しかし、その気持ちに執着しすぎて落としどころを見失ってしまってもいけません。法定相続人が持つ権利がどういうものかを理解して、気持ちの落としどころを見出すのは時間がかかる作業でもあります。だからこそ、相続対策は早い段階から開始しておくことが肝心です。

 

※本記事は、実際にあった出来事をベースにしたものですが、登場人物や設定などはプライバシーの観点から変更している部分があります。また、実際の相続の現場は、論点が複雑に入り組むことが多々あり、すべての脈絡を盛り込むことは話の流れがわかりにくくなります。このため、現実に起こった出来事のなかで、見落とされた論点に焦点を当てて一部脚色を加えて記事化しています。

 

 

森 拓哉

株式会社アイポス 繋ぐ相続サロン

代表取締役