万が一のときのために加入している生命保険。しかし、病気やけがによる治療が長期化し、収入が減ってしまい家計が赤字になると、月々の保険料負担を重く感じることもあるかもしれません。保険の保障のなかには、そうした事態を防ぐものがあることをご存じでしょうか。本記事では、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が、西村優子さん(仮名・41歳)の事例とともに、がん保険の適切な備え方について解説します。
年収900万円の43歳・大黒柱の夫が「胃がん罹患」で家計破綻へ…41歳・専業主婦の妻が決断した「苦渋の選択」【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「特定疾病保険料払込免除特約」の活用

今回の事例では家計を支える夫ががんになってしまったときに、家族の生活費をカバーするために加入していた生命保険の保険料が家計を圧迫し、最終的に解約せざるを得ないというとてもつらい結果を招いてしまいました。

 

こういった事態を引き起こさないためにとるべき対策はさまざまあるのですが、今回のような事例(リスク)には実は多少の費用負担で備える手段があります。

 

生命保険の保障のなかに『特定疾病保険料払込免除特約※1』というものが存在します。これは一般的にがんを含めた特定疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)で所定の状態になった場合に将来の保険料が不要になる※2という保障です。

 

保険というとなにかでお金を受け取るというイメージが強いかもしれませんが、実はがんなどの大きな病気になってしまった時に『保障はいままでどおりに継続するが毎月の保険料負担がなくなる』という家計負担を助けるための保障が存在し時代とともに重要度が増してきています。

 

もし今回の事例においてこの特約が付帯されていたら、

 

・毎月5万円超の保険料が不要になり

・8,500万円の死亡保障が継続し

・老後と子供の学費の貯蓄が継続

 

され、当然ですが生命保険を解約というシナリオは発生することはありませんでした。

※1:保障の名称は保険商品ごとに異なる場合があります。
※2:保険料が不要になるための要件は保険商品ごとに異なる場合があります。

 

がん罹患時の現状

がんは昭和56年に日本人の死因の第1位になりその後ずっと1位のまま推移しています。40年以上前からのはなしになりますが同じ死因の1位でも、がんを取り巻く状況は大きく変わっています。

 

いまだに『がん=死』というイメージが残っていますが、国立がん研究センターによると、現在のがん5年生存率は60%を超えています。つまりがんに罹患しても多くの方ががんとつきあいながら暮らしていくことになります。

 

今回の事例のように、仕事と治療を両立しながら過ごしている人も実はたくさんいます。ただ、両立をしていく場合に、

 

・継続的な治療費による月々の支出の増加

・がん治療の影響による月々の収入の減少(喪失)

 

という可能性があることをあらかじめ知って備えをしておかないと、経済的に困窮してしまうリスクがあります。

 

がんでの収入減に備える際の2つの選択肢

がんというと治療費のイメージですが、実は今回の事例のようながんの罹患による収入への影響のほうが経済的リスクは大きくなる可能性があります。そういったリスクに保険で備える場合に2つの選択肢があることを知っておいてください。それは、

 

①がんの診断で1,000万円支払われるといった現金を受け取る保障

②保険料払込免除という保険料負担をなくす保障

 

の2つです。①はがんで1000万円受け取るというわかりやすい内容ですが、②も経済的には効果が大きくなる可能性があります。

 

今回の事例では、月々5万円の保険料負担でしたが、その場合1年で60万円の家計負担です。年間60万円は5年続けば300万円、10年で600万円です。将来に向けた600万円の支出がなくなることも経済的に大きな影響があります。

まとめ

結婚をして子供が誕生すると手厚い生命保険(死亡保険)が必要というイメージがあるかと思います。もちろんそれも大切な視点ではありますが、実はそこに至るまでの過程が以前とは変わってきています。

 

生命保険などの経済的な備えを考える場合には、がんの最新の現状などをふまえて適切な選択をしていただきたいと思いますし、もし自分でそういった情報を得ることが難しい場合にはがんを取り巻く環境をよく知る専門家に相談して適切な保険選択をすることをおススメいたします。

 

 

谷藤 淳一

株式会社ライフヴィジョン

代表取締役