作品住宅と商品住宅の間にある選択肢
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都内有数の高級住宅街に誕生したモデルコード
2023年夏、新たなモデルコードが完成した。場所は東京都大田区の久が原。同区内の田園調布や山王同様、閑静な高級住宅街として知られているほか、道路の広い区画整理された平坦な住宅街としては、都内最大級の規模を誇っている。物件から1kmほどの距離に日蓮宗の大本山・池上本願寺があるほか、商店街やスーパーマーケットまで徒歩圏内という、利便性の高さも魅力的だ。
本物件は建売タイプのモデルコードと異なり、施主から要望を受け建築された「請負物件」である。その経緯について、モデルコードのプロデューサー・河部吉孝氏に伺った。
「今回店舗設計を含む家具什器納品を主な事業内容とされている企業の経営者様からご依頼をいただきました。同企業はヨーロッパの著名な建築家と提携のうえで、大手企業や大手銀行、そして郵便局や国立博物館といった公共施設の設計・設備納品に関わられていらっしゃいます。経営者様にはすでに建築したモデルコードをご見学いただき『すべてお任せするから、これから入手する土地にモデルコードを建てて欲しい』とご依頼いただきました」
物件の建築階数/間取は、木造2階3LDK+インナーガレージ。敷地面積は約173平米で、建物全体の床面積の合計(延べ床面積)は約168平米となっている。久が原という高級住宅街の中でも東南角地に位置するという良好な条件を兼ね備えたロケーションに企画された。
「土地については、施主の奥様が見つけて下さいました。ご連絡をいただいた後、すぐに私が現地へ向かい、その日のうちにプランを作成、翌日にご判断をいただくスピーディな展開でした。土地の東側と南側に7メートル道路が走る『東南角地』という住宅地では最良の条件で、しかも南北に長いため一種高度地区の北側斜線制限を最低限に抑えられました」
東京都の建築条例には、北側隣地境界線の位置において、地盤面より5~10メートルの高さから南に向かい斜め50度程度の斜線を引き「はみ出す部分をカットして建てる」というルールがある。北側隣地の採光を確保するためだ。本物件でどのように北側斜線を調節したのかについては、2階部分の紹介の中で説明していく。
庭には常緑樹と落葉樹をバランス良く配置しウッドデッキも
それでは「MODEL CODE 久が原」の特徴を、詳しく見ていくことにしよう。本物件の建築面積は約86平米に対して、敷地全体の面積は約173平米と、庭に十分なスペースを割くことができる。「植栽という自然美を重ねることで、初めて人工美が引き立つ」という考えを持つ河部氏にとっては、腕の振るいがいがあったのではないだろうか。
「住まいとその集合体である街並みに緑は必要不可欠。日本には『庭屋一如』という四字熟語があります。『家屋と緑の調和が取れて然るべき』という意味を持つ熟語の中に、日本古来の家屋に対する考え方、そして日本住宅のあるべき姿が集約されているのではないでしょうか。今回は常緑樹と落葉樹をバランス良く配置することを念頭に置いたほか、美しい花をつける木を多数植栽しました」
河部氏の言葉通り、本物件の庭にはヤマボウシやエゴノキといった常緑樹、モミジやカエデといった落葉樹が植栽されているほか、ツツジやコデマリ、そしてユキヤナギなど美しい花を咲かせる植栽が家屋を取り囲む。また庭だけでなく、玄関やガレージ付近にも、モミジやソヨゴなどの植物を植えた。都内の住宅でありながら、季節の移り変わりを実感できる贅沢が約束されているのだ。さらに本物件の庭にはウッドデッキの姿も確認できる。コの字型で家屋の1階部分を取り囲むように設置されており、かなりの広さだ。
「テーブルや椅子を置き、ゆったりと日光浴を楽しむことができるスペースです。施主には小さなお子様がおふたりいらっしゃいますので、夏季には簡易プールを置き、水遊びを楽しむのも良いでしょう。またウッドデッキの端には物干しスペース、そしてスニーカーなどをその場で洗えるスロップシンクも設置されています」
そして今回もモデルコードの特徴的な建材のひとつである「アルミ格子」が庭全体を覆う塀の役割を果たしている。光と風を通しながら外部の視線をほどよく緩衝し圧迫のない佇まいを実現させる優れた建材だ。
「これだけ大きな庭をアルミのタテ格子で囲っていますが、木漏れ陽や風を通す建材なので、庭だけでなくLDKのどこから観ても明るく緑豊かな景色が確保できます。またアルミ格子は、夜間に家屋の外側を通る通行人に室内の団欒の灯を慎ましく提供します。シルバーの人工美が植栽の自然美を引き立てるのはもちろん、防犯にも高い効果を発揮する秀逸な建材としてモデルコートに欠かせません」
カウンターキッチンを備えた広々LDKが快適
続いて「MODEL CODE 久が原」内部の様子を見ていこう。1階部分の構成は、居室とインナーガレージに大別される。約23平方メートルの広さを持つインナーガレージには、車1台と自転車数台を停車可能。壁とシャッターに保護されているため大切な愛車を風雨に曝すことなく維持していくことができる。
インナーガレージと居室の間の玄関ホールの両壁は収納棚が設えられているので、家族全員分の靴をすっきりと収めることが可能だ。また居室へ続くホール部分には2階へと連なる階段、納戸、そしてトイレが設けられている。他のモデルコード同様、トイレ内には独立洗面台からタオル掛け、そして壁面全面のミラーも設置されているので快適に利用できそうだ。
そして約43平方メートルという広々とした居室はキッチンも備えたLDKの体裁。庭のウッドデッキに囲まれた部分は外部と一体化される開口部となっており、自然光がたっぷりと差し込む。そして内装はモデルコードの様式に則り白い壁と木目のフロアで統一されている。
「引き渡し後、室内に家具家財を広げれば、何種類もの色が溢れかえることになります。そのどのようなカラーリングや様式をも受容可能な真っ白な壁を用意することで、家具や観葉植物、そして住む人自身が引き立つ空間を実現しています。細かな部分では窓枠についても、特注の奇抜な製品などは使用せず、無地の白で統一しシンプルに構成しています。
また床材は、混じり気のないピュアな無垢材を厚さ2㎜の『挽き板』として加工し、表面化粧材にしています。住人の肌に直接触れる部分には天然木の命が息づいていますが、ほかの部分は床暖房にも耐えうる強度を持つ複合フローリングです。本物の木材が見せるナチュラルな表情は木製家具と相性がよく、室内全体を明るい雰囲気で満たしてくれます。設計にあたり、見切り材を一切挿入しなくて済むよう計算を重ねるだけでなく、目地方向も統一し空間をのびやかに表現することに心を配っています」
キッチンはカウンター式を採用しているので、調理しながら家族の様子を確認したり、会話を愉しんだりすることも可能だ。色は壁紙同様、すべて白で統一されている。さらにジャストサイズの理想的な設置を実現。モデルコードは規格住宅だが、水回りの設備に関しては各戸に合わせたセミオーダー対応を行っている。
「キッチンは細かいサイズ指定が可能なセミオーダータイプの商品である、タカラスタンダード社の製品で統一しています。そのため、壁から壁までの長さを計測したうえで隙間なくフィットする理想的な設置が実現します。さわやかな白の美しさはもちろん、ジャストサイズが室内全体の雰囲気をしっかり整えてくれます」
さまざまな工夫が心地よさを生み出すプライベート空間
次に本住宅の2階部分を紹介していこう。階段を登り切ると、向かって左側にバスルーム、パウダールーム、そしてトイレといった水回りの設備、右側に子供部屋と夫婦の主寝室。冒頭で「本物件の北側に一種高度の斜線制限がある」ことを紹介したが、その調整は2階の水回り部分で行われている。
「パウダールーム、トイレを通常の2階の高さに設計しようとすると、室内天井のほとんどを斜めに切らなくてはならなくなります。そこで水回りだけ床を下げることにしました。階下にあたる部分は、高さを要しないインナーガレージだからです。具体的にはホールから何段かの階段を下りたうえで入室するかたちとなっています」
パウダールームを間に挟んだバスとトイレは、やはり白で統一された気持ちの良い空間。いずれにもたっぷりの収納が設置されているほか、パウダールームにはふたつの洗面台、バスルームには壁面に沿って鏡も取り付けられている。痒いところに手の届く気配りが感じられる空間でホテルライクな贅沢な時間を過ごすことができそうだ。
続く子供部屋は約25平方メートルという広い空間構成だが、ドアや収納ともにふたつずつ設置されている。これは施主のお子様がまだ小さいのでいまはご一緒に広く使われ、将来的には間仕切りを設置して二部屋に分割する予定だからなのだとか。
「お子様がまだ小さい現在のうちは広々と仲良く利用できるよう、壁を作らずに仕上げてあります。窓も6枚あるので、子供部屋にぴったりな開放的な空間に仕上げました。壁沿いのテーブルはお子様のためにお客様が用意したものです。またのびのびと落書きを楽しめるようホワイトボードも設置しました」
続いて主寝室。こちらには4畳以上ある大きなウォークイン・クローゼットが設置されており、あらかじめ数段の引き出しを備えたタンス数台や、ハンガーレールが備えられているので、かさばる衣料や細々とした装身具をきちんと整理整頓できそうだ。
「今回の施主様は、店舗設計を含む家具什器納品を主な事業内容とされている企業を経営されていらっしゃいます。通常のモデルコードでは、ベッドなどの寝具もすべて用意したうえで引き渡しとさせていただいておりますが、今回は施主様の販売されている『魅せる収納』のGiGiを主寝室に設置し、MODEL CODEがGiGiを惹き立て、GiGiがMODEL CODEを惹き立て、施主と請負者によるお互いの相乗効果が生まれています。その点も他のモデルコードとは大きく異なります」
施主からのリスペクトが、稀に見る秀逸な住宅を誕生させた
本物件を請け負うにあたり、河部氏は施主との話し合いの中で重要なコンセンサスを得ている。先述の通り、物件の建築階数・間取は、木造2階3LDK +インナーガレージ。敷地面積は約173平米で、建築面積は約86平米、そして建物全体の床面積の合計は約168平米と十分な余裕があった。全体のスケールに対し、部屋数の増加も検討可能だったが、最終的に3LDKを選択している。
「今回の物件のように、土地にある程度の余裕があり、延床面積も確保できている場合は、4LDKの間取りも想定の範囲内となります。近年は部屋数の多い住宅を望む施主が多いので、施工を担当する会社はその要求を受け入れてしまいがちです。しかしインナーガレージと4LDKを一緒に望むと、家屋内のすべてに狭苦しいシワ寄せが及ぶことになります。施工中は『部屋数は多いほど良い』と考えていた施主も、実際に生活し始めるとさまざまな不満を感じ始めるのです。
このため私共は今回も余裕のある3LDKの間取りを提案しました。本物件の施主様は『どんな土地にも限りがある』ということを十分に理解され、私共の提案を受け入れてくださいました。おかげで各々の空間をゆったりと豊かに仕上げることに集中できました」
毎日の暮らしを快適に過ごすため、各部屋には充分な収納スペースが必要である。また「トイレから出ずとも手を洗える独立洗面台」など、細かな設備の有無がいかに重要であるかを入居後に実感することとなるはずだ。しかしマイホームづくりの過程で、施主は自分たちの希望を実現させようと躍起になるあまり「入居後に始まる生活への配慮を見落としがち」である。その点について河部氏は明快な意見を持っている。
「部屋数にこだわり、部屋数を最優先すると、出来上がった住宅は必ず歪みが生じ、各室が本来持つべき機能も失われていきます。家づくりに専門的な知識を持たない施主が希望する間取りに、迎合してしまうハウスメーカーが殆どです。しかし、たとえば料理の場合、顧客が料理人に調理法や食材を指定してしまったら最高の味に出合うことはできません。熟練の見識を尊重すれば、引き渡し後に何十年間も続く毎日を快適に過ごせるのです。私は、お客様が後で後悔されるご要望に迎合することは、むしろお客様への背任行為だと認識しています。このためモデルコードは請負であっても、すべてお任せいただく同意を条件に家づくりを行っています。本件の施主様は『何かを潔くあきらめる』という家創りの秘訣を心得ていらっしゃいました。これはモデルコードの理念のひとつです。結果として、稀に見る秀逸な住宅が完成したと自負しておりますが、この熟練された見識を持つ創り手の数は、実は極めて少ないのが実情であり、良い家を創る要因は、優れた設計者以上に、むしろそれを見極めて選ぶ立場にある施主の『眼』であることに、多くの方々が気付いていません。
こちらの MODEL CODE 久が原は、