河部吉孝:株式会社プロムスタイル モデルコード プロデューサー
前原欣正:株式会社カンディハウス横浜 常務取締役
若杉武志:株式会社カンディハウス横浜 取締役/インテリアコーディネーター
富樫航海:株式会社KAKERU CREATIVE STUDIO 代表取締役/フォト・ビデオディレクター、コミュニケーションデザイナー
※所属・肩書等は取材時
モデルコードの上質なコンセプトに沿う家具をコーディネイト
――今回は神奈川県鎌倉市に新築された「MODEL CODE 七里ガ浜Ⅱ OCEAN PICTURE」にて、皆さんにお集まりいただきました。窓から見える美しい海の風景が何より印象的な物件ですが、前原さん、若杉さんは本物件に納品する家具選びにあたり、どのようなことを念頭に置かれましたか?
前原「完成前の段階から拝見していましたが、素晴らしいロケーションだと思いました。完成後に改めて訪れ、階段を昇ってリビングにたどり着いた時、窓枠によって見事に切り抜かれた景色を目の当たりにして、『この素晴らしい空間の邪魔にならない家具が必要だ』と実感しましたね。ソファとダイニングテーブルの背は低くワイドに、そしてナチュラルで優しい色調であることが必須で、清潔感のあるシンプルな空間が引き立つプランニングを目指しました」
若杉「モデルコートとカンディハウスのコラボレーションは本物件で3件目となります。タイミング的にも前2件のプランニングが終了した後だったので、モデルコードの魅力、そしてコラボの手応えを実感していました。木材の家具であることは大前提ですが、なかでも質感の高いもの、シンプルなデザインのなかにある良質な手触りを重視しています」
――河部さんは納品された家具をご覧になり、どのような感想を持ちましたか?
河部「家具の木の表情が更に洗練されていて、ラグの色彩に他では得られない感性を感じました。また、リビングの海を眺めるソファの座り心地は創り手の『優しさ』が伝わるほどの完成度を感じます」
――先ほど若杉さんが3件目のコラボレーションとおっしゃっていましたが、物件により感じられる違いはあったのでしょうか?
若杉「すべて共通してモデルコードのコンセプトを感じ取ることができます。2件目の『モデルコード材木座』は他の物件よりリビングルームが大きいなどの違いはありましたが、いずれにしても家具のコーディネイトは空間ありきです。モデルコードは住む人の快適性を追求している物件であり、動線もよく考えられています。その空間にきちんとフィットし、毎日の生活に寄り添う家具を揃えるのが我々の役目です」
富樫「私は新しいモデルコードが完成した際、写真や動画を撮影していますが、今回の物件はいつもにも増して空間に家具が溶け込んでいると感じました。シンプルなだけでなく、愛着の湧く色使いの家具で、撮りながら『さすがだな』と。ダイニングテーブルもとても手触りが良かったことが印象的です」
前原「ダイニングテーブルには、北海道産の『タモ』という樹種の無垢材を天板に使用しています。無垢材には無機質なガラステーブルにはないナチュラルで素朴な温かさがあります。日々の生活に必要なリラクゼーションを提供してくれる素材です。私どもの家具は何よりも『心地よさを提供できるプロダクト』だと自負しています」
若杉「毎回、リビングダイニングだけでなく、ベッドルームの家具もコーディネイトしていますが、寝室は疲れを癒し、新しい1日を迎える場所です。寝具だけでなく間接照明も配置しながら、入眠前のひと時や睡眠時の心地よさを実感できる上質でシンプルなデザインを意識しています。モデルコードの内装自体が本物の価値がわかる方に向けられていますので、そのコンセプトに沿うセレクションを心がけています」
作って売るだけではない、真摯な物づくりの姿勢がコラボに発展
――モデルコードのコンセプトについて、河部さんに改めてお伺いします。モデルコードは「必要以上にコストをかけない既製品であること、そして住む人を引き立てる簡潔・簡素な住宅」であるだけでなく、なぜ「家具付き」なのでしょうか?
河部「モデルコードはリビングダイニングおよび、主寝室の家具付き物件となっています。その理由は、建物と家具は一対であると認識しているから。私は日本が誇るプロダクトデザイナー深澤直人さんの言葉である『家は家具から考えるべき』に共感します。建物と家具に調和が無いと設計の意義は半減します。またモデルコードは『土地と建物だけを用意し、販売した後は知らぬ、存ぜぬ』という商品ではありません。引渡し後にこそ真価を発揮する、ライフスタイル提案型の商品なのです。このためモデルコードにマッチした簡潔簡素で味わい深い家具を用意しています」
――カンディハウスさんとのコラボレーションがスタートする前は、別ブランドの家具を用意されていたと伺っています。
河部「そうですね。モデルコードの床はすべて木目、タモ材を使用したフローリングです。タモ材には色の濃淡があり表情がナチュラルで明るい。家具もそのトーンで統一する必要がありました。リビングダイニングや主寝室に配置するすべての家具が同素材で揃うのは、当時の私が知る限りそのブランドだけだったのです。しかし家具の種類に限りがあり、バリエーションに欠けているのが難点でした。毎回同じ家具を用意するしかなかったのです。そんな時カンディハウスさんとの出合いがありました」
――モデルコードとカンディハウスを引き合わせたのは富樫さんだと伺いました。
富樫「そうなんです。私が個人的に、北海道の旭川市で開催されたデザインウィークに訪れた際、カンディハウスさんのプロダクトを拝見しました。会場でその品質を確認し、スタッフの方から熱心なご説明いただくなかで『ぜひ河部さんに紹介したい』という気持ちが生まれました。MODEL CODEのブランドをイメージを伝える上で、
河部「最初はカンディハウスさんの横浜のショップへ伺いました。実際に家具を拝見し、ぜひコラボレーションさせていただきたいと思いました」
――カンディハウスとしては、モデルコードとのコラボレーションを計画するにあたり、どのような印象を抱かれたのですか?
前原「面白いコンセプトだと思いました。『しっかりとした家具付きで提案』という物件はなかなかありませんから。デティールにまでこだわりが貫かれ、引き渡し後に住む人の生活をしっかりと考え、家を作られているのがとても素晴らしいと思います。私どもは旭川の森のそばで木に支えられながら家具を作っております。またモデルコード同様、作って終わりでなく、長く使い続けるための仕組みやメンテナンスのシステムを整備し『100年使える家具を世に出そう』と考えています」
河部「共通するのは『販売後のことも考えている』という点です。家もそうですが、家具は街に出てショウルームに行けば山のように売られている。しかしその中で数十年の評価に耐え得る家具はどれだけあるでしょうか。カンディハウスさんが『自社の家具が最大限に活かせる家』を望む気持ちを持っておられたからこそ、コラボレーションを実現できたのではないかと思います」
富樫「いまお二人がおっしゃられた通り、共鳴し合うポイントが非常に多かったのだと思います」
豊かな自然を有する北海道で生まれた木工家具メーカーの特徴と魅力
――改めてカンディハウスさんの歴史や現状、理念をお聞かせください。
前原「北海道の旭川市で1968年に創業し、55年の歴史を持つ家具メーカーです。最大の特徴は、広葉樹が非常に多い北海道の森のそばで地産の木材を活用した家具作りにこだわっているところでしょうか。『100年の樹齢を持つ木で、100年使える家具を作る』という理想があり、お客様からのご要望にさまざまなかたちで対応可能な工房、職人、そしてサービスを整備しております」
若杉「現在は北海道だけでなく、首都圏から九州にまで販売拠点があります。またアメリカとドイツに現地法人を構えているほか、アジアを中心に14の拠点があります。プロダクトは国内外の著名デザイナーと共同製作を実施。例え複雑なデザインに接しても『できないとは言わずやってみよう』というチャレンジ精神で、魅力的な木製家具を世に送り出してきたと自負しています」
前原「コンピュータ制御された最新鋭の機械で木材を削り込んではいますが、最後は必ず職人の手で仕上げます。ミリ単位の差異を感じ取れる人間の指先によって仕上げられた木材の質感を、最重要視しているのです」
河部「カンディハウスさんとお仕事をさせていただくなかで『トップの方の視野が広い』と感じることがよくあります。家具職人としてご活躍された実績があり、ドイツの家具工場で修業を積まれた経験もおありになる。そんな方が築き上げた組織だからこそ、デザイナーと職人のせめぎ合いや、プロダクトの品質向上が生まれるのではないでしょうか」
――日本の家具や家づくりの現状は、どのように映っていますか?
前原「これまで家具は輸入に頼る傾向が高く、日本でのモノづくりがかたちになり、海外発信もできるようになったのはごく最近のことです。そのため家具を財産として認識している方が日本ではまだ少ない。ヨーロッパで家具は『自分の居場所を作るための大切なプロダクト』であり、壊れたところがあれば直して使い続ける、代々引き継いでいくのが一般的です」
河部「日本はまだ『スクラップ&ビルド』の考え方から抜け切れていないんですよ。家具も家と一緒で、10~20年で取り換えるものではないのです」
前原「とは言えここ日本でも、コロナ禍でおうち時間が増えたことで『家具を見直した』という人が増加したようです。低価格や機能を重視した量販店や、デザインを重視した海外ブランドが人気ですが、私共は『長く使える良い家具』を提供し続けたいと考えています」
今後も続々誕生!家と家具が引き立て合う理想空間
――それでは最後に、モデルコードとカンディハウスのコラボレーションについて、今後どのような展望を抱かれているのか、お聞かせください。
河部「私どもはこれからも変わらず、簡潔簡素な家を作り続けていきます。カンディハウスさんとのコラボレーションがスタートして決定的に変わったのは、家づくりに専念できるようになったこと。家屋内のさまざまなバランスを鑑みて、家具を配置する作業には豊かな経験と知識が必要です。カンディハウスさんには専門のコーディネイターが在籍されているので、モデルコードのコンセプトをしっかりと理解したうえで、豊かなバリエーションを実現してくださる。私どもにはない能力なので本当に助かっています。これからも両社にしかできない、お互いを引き立たせるコラボレーションを継続できればと思っています」
前原「しっかりとしたコンセプトを持つ空間に、私どもの家具が配置されたモデルコードを拝見するたび、ワクワクするような楽しい気持ちを覚えます。これからひとつでも多く、理想的な空間の実現に貢献させていただければうれしいですね」