「百薬の長」ともいわれるお酒。確かに適量のお酒は善玉コレステロールを増やしたり、心筋梗塞を予防する効果のある薬ともなり得ます。しかし、その一方で飲みすぎてしまうと肝臓がんや、認知症のリスクもあると東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師はいいます。今回は、「適度なお酒」とはどのくらいなのか、そして「お酒の飲みすぎ」がもたらすリスクについてみていきましょう。
お酒の美味しい時期だが…“飲みすぎ”で認知症リスク2.6倍!毎日の飲酒「種類別の適量」【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

飲酒率と死亡率の関係

飲酒と死亡率の調査が厚生労働省によりおこなわれており、男女とも、1日平均アルコール消費量が日本酒1合未満である、23g未満の人は死亡率が一番低いということがわかっています。

 

そのため、「節度のある適度な飲酒」に関して、厚生労働省は1日平均値アルコールで約20gであると考えています。

 

[図表1]に純アルコール換算量をまとめましたが、人によっては少ないと思う人もいれば多いと思う人もいるでしょう。

 

[図表1]「節度のある適度な飲酒」/主な酒類と純アルコール量換算表

 

こちらでも禁酒者よりも少しお酒を飲む人の死亡リスクが低いということであり、確かに「百薬の長」と言える効果があるのですが、少し飲みすぎるとすぐに「毒」としての性質も出てきてしまうことも知っておく必要があります。

 

国によっては、そもそもアルコール自体を禁止している国もあります。ここで問題になってくるのは、日本では法律で禁止されている20歳未満の飲酒経験が高いことです。

 

20歳未満の飲酒は、「未成年者飲酒禁止法」により禁止されています。違反した場合は50万円以下の罰金が課されることとされています。加えて、身体的精神的な影響も大きく、アルコール依存症発症のリスクも高いことがわかっています。絶対に20歳未満での飲酒は禁止です。

 

厚生労働省「中高生の喫煙および飲酒行動に関する全国調査 2017」より作成
[図表2]未成年の飲酒経験 厚生労働省「中高生の喫煙および飲酒行動に関する全国調査 2017」より作成

まとめ

今回は、アルコールが「薬」なのか「毒」なのかについて見ていきました。確かにアルコールを適度に飲むことは体にいいことも多く「酒は百薬の長」と言われていることも納得がいきます。しかし少し飲みすぎると「毒」としての性質も垣間見えるため、注意が必要です。

 

適切な飲酒量を守り、飲みすぎた次の日は休肝日を定めるなど、アルコールとうまく付き合っていきましょう。

 

医師の間では、薬には副作用があるのでしっかり考えて処方しなければいけないという意味で「クスリはリスク」という言葉が広まっています。漢書に記された言葉と並べるのは少し畏れ多い気もしますが、「酒は百薬の長だが、クスリはリスク」と言うのを今回の結語とさせていただきます。

 

 

秋谷 進

東京西徳洲会病院小児医療センター

小児科医