多くの種類がある「がん保険」。多くの人は、どれを選ぶべきか判断に迷ってしまうのではないでしょうか。正しい知識を持ってがん保険を選ばなければ、せっかく加入していてもいざというときに役に立たないこともあると、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏はいいます。では、本当に役に立つがん保険はどのように選べばよいのでしょうか? 本記事では、伊藤さん(仮名・40歳)の事例とともに、正しいがん保険の選び方について解説します。
世帯年収700万円、40歳の妻が「乳がん罹患」で保険に給付金請求も…まさかの「支払い対象外」の悲劇【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

手厚い医療保険に加入も…「支払い対象外」となったワケ

「えっ、対象外……どうして!?」

 

今回伊藤さんは乳がんの診断を受け、抗がん剤治療を受けました。受けた治療は健康保険証が適用となる『標準治療』のなかのひとつ。決してなにか特別な治療を受けたわけではありません。

 

ではなぜ「がんに手厚い」という謳い文句の医療保険に入っていたにもかかわらず、支払対象外という最も厳しい結果になってしまったのでしょうか。ちなみに伊藤さん夫妻が加入していたがんに手厚い医療保険の内容は以下のとおりです。

 

①ケガ・病気で入院したら、入院1日当たり、10,000円(1入院60日まで)

 

②がんで入院したら、入院1日当たり、10,000円上乗せ(入院日数無制限)

 

③ケガ・病気で手術を受けたら、1回当たり5万円(回数無制限)

 

④がんで手術を受けたら、1回当たり15万円上乗せ(回数無制限)

 

⑤ケガ・病気で通院したら、1回当たり5,000円(退院後180日以内の通院を30日分まで)

 

⑥がんで通院をしたら、1回当たり5,000円上乗せ(退院後360日以内の通院を60日分まで)

 

⑦がんで先進医療を受けたら、最大2,000万円まで実費補償

 

最初にお伝えしたいことが、いくらがんに手厚いといっても医療保険は入院・手術の保険であるということです。ですから①~④でわかるとおり、がんの場合を手厚くしたとしても入院・手術でなければ支払対象外です。これが医療保険という保険種類の基本です。

 

一方、⑤~⑥をみると通院にも対応してくれそうです。ただしカッコ書きを読むと

 

退院後180日(がんは360日)以内の通院を30日(がんは60日)まで

 

となっています。退院後ということは、「入院をしたあと」ということで、これもやはり入院することが前提となっています。

 

⑦の先進医療は、これは健康保険証が適用とならない特殊な治療です。今回の伊藤さんの治療は標準治療と呼ばれる健康保険証が適用となる治療ですので、やはり対象外です。

 

伊藤さんは過去に叔父ががんで亡くなったことがあり、夫婦で生命保険を考えたときにがんについてはしっかり備えておきたいと考え、それに応じた選択をしてきたつもりでした。

 

ところが今回あてにしていたがんに手厚い医療保険からは、1円もお金が出ないという最も厳しい結果となってしまったのですが、そもそもこのがんに手厚い医療保険、がん治療全般ではなく主にがん入院に手厚い医療保険と読まなければなりません。そこが最初の落とし穴といえます。そして本当に怖いワナといえます。

 

それに加えて、さらに2つの問題点があった可能性があります。以下でその2つの問題点について、どのような内容であったのかそれぞれ見ていきたいと思います。

 

1.情報が30年以上前のまま

伊藤さんは過去に叔父ががんになった姿を見てがんが怖いと思うようになりました。伊藤さんの叔父は当時、胃がんを患い数ヵ月単位の入院をして、退院後もまたすぐに再入院といったことを繰り返していた記憶がありました。ですから伊藤さんは、がんになってしまうと数ヵ月の入院が必要で、当然それに応じて莫大な費用が掛かるという思い込みをしていました。

 

たしかに伊藤さんの叔父は胃がんでそういった闘病生活を送っていたのですが、それは30年以上前、伊藤さんがまだ小学生のころの話です。実はこの30年間でがん治療の実態は大きく変化しています。

 

まずひとつ目の問題点ですが伊藤さんが判断するための情報が古すぎるということがあげられます。30年以上前においては、がん治療は長期の入院で行うことが一般的でしたが、現在は入院は必要最低限、通院で治療できるものは通院治療でという形が一般的です。

 

ですからがんの入院時の費用をいくら上乗せしても、使う機会はそれほど多くないということがいえるかもしれません。

 

2.悪い口コミからネット経由で保険加入

2つ目の問題点ですが、それは正しい情報が無いにもかかわらず自己判断で保険選択をしたということです。

 

伊藤さん夫妻は、5年前ネットで加入できる保険会社で今回のがんに手厚い医療保険に加入しました。当時は保険未加入、ちょうど子供が生まれたところだったので、夫婦で生命保険を考えることにしました。

 

生命保険の知識はほとんどなく、始めは自宅の近所のにあるショッピングサンタ―内でみかける来店型保険ショップで相談しようと考えていました。その時利用者の口コミなどが気になり、ネットで調べたのですが

 

・相談に行ったけど担当者の知識がなく役に立たなかった

 

・自分たちが売りたい商品ばかり勧誘してくる

 

といったものが目に留まって相談に行くことをためらい、結局ネットでよさそうなものを契約してしまいました。

 

保険加入にあたって、誰にも相談することなく、ネット上で「安くていいものを」という観点にばかり意識が向いてしまい、結果がんに手厚い医療保険というキャッチフレーズに魅力を感じてしまった可能性があります。