幼児期は人間の脳が最も発達しやすい時期であり、その期間にしっかりとした基礎を築くことが、将来的な学習において重要な役割を果たします。一方、幼児期の教育には注意点もあると、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師はいいます。詳しくみていきましょう。
重要には違いない、しかし…「幼児教育」と「早期教育」のメリット・デメリット【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

早期教育も脳にとってよいが、やり過ぎは弊害も

では、3歳までに行われるが「早期教育」はどうなのでしょうか? 実は、早期教育は「やり過ぎはよくない」という報告もみられています。

 

たしかに多くの研究で「早期教育は脳の構造的な成長をうながす」ことがいわれています。

 

脳は一般的に6歳までに90%くらいは決まってくるといわれていますが、3歳までに脳の「重さ」が急激に重くなることは分かっています。

 

裏を返せば、0歳から3歳までの時期は脳もまだまだ発展途上の状態であり、どれだけ詰め込もうとしても限界があるのです。

 

そんな脳の機能も構造自体も未発達な段階で「詰め込み教育」をしたらどうなるでしょうか。

 

たとえば、次のようなデメリットがでてくるかもしれません。

 

●過剰な教育へのストレスを植え付けてしまう

誰しも自分の能力以上を求められるとストレスは大きいものです。教育そのものが嫌いになってしまうかもしれません。

 

●自由な遊び時間の減少

遊びは創造性を育む大切な時間。早期教育をしすぎると、これにより、子どもの創造力や好奇心を抑えつけてしまう可能性があります。

 

●能力開発の偏り

どうしても勉強というと、「座学」が中心になりがち。しかし、世界は色々な経験があります。早期教育が過度に行われると、特定のスキルや能力の開発に偏りがちになります。

 

このように、子どもたちの現状を把握しながら、適度な早期教育が望まれるでしょう。

幼児教育と早期教育のまとめ

早期教育と幼児教育の違い、わかっていただけましたでしょうか。

 

幼児教育は単なる先取り教育ではありません。6歳までの子どもたちに色々な経験を早くから多くさせてあげることで、脳をどんどん刺激していくこと。読書やドリルだけが勉強ではないのです。

 

そして、色んな刺激を受けた子どもたちはますます勉強や社会的なアクティビティに夢中になっていく。これが理想ですね。

 

一方、早期教育は3歳までに育む教育法。ついつい、ひたすら「詰め込む」教育に走りがちですが、3歳の子どもの脳はまだまだ未熟です。

 

温かい目で、子どもたちの成長を見守っていく。そんな親の度量が求められます。人と比べず、早いうちから一つひとつ子どもたちが「できた」ことを見つけて伸ばしていってほしいと思います。

 

 

秋谷進

東京西徳洲会病院小児医療センター

小児科医