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糖尿病は現代人にとって身近な病気ですが、「糖尿病になったらアレもコレも食べられなくなる」「糖尿病は厳しいカロリー制限が必要」といった誤解が根づいています。糖尿病の食生活は、ある一定の知識とルールさえ守れば難しくありません。総合内科専門医・團茂樹医師(宇部内科小児科医院 院長)が解説します。

糖尿病の発症・コントロールは「生活次第」

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糖尿病の大半を占める「2型糖尿病」発症の原因が、普段の食事および運動にあることは、すでにあなたも薄々おわかりになっているでしょう。

 

昨今の糖尿病治療薬の開発は目覚ましく、それぞれの患者さんの状況に合わせた種々の治療選択ができるようになってきています。しかし、残念ながら糖尿病は、高コレステロール血症治療や高血圧治療のように、薬で何とかなる、という類の病気ではないのです。

 

なぜなら、同じ処方内容(どんな治療薬の組み合わせについても言えます)で治療を続けていても、生活習慣によってはコントロール状態が大きく変わるからです。

 

これは実際に私が診てきたから言えることです。食生活の乱れや適度な運動を欠く生活を送っていると、極端な場合には、半年や1年間でHbA1c値が6→10に変化する患者さんがいる一方で、しっかりとした食生活や運動をすることによってHbA1c値が10→6へと変化する患者さんも少なからず経験しています。

 

糖尿病のコントロールには保険医薬品を利用しても限界があるのですから、賢明な読者の方は、基準の甘い健康食品や特殊な食材を利用したら糖尿病が良くなった…という話には与(くみ)しないでください。

 

しかし、ご安心ください。食生活はある一定の知識とルールさえ守れば、なんら難しくはありません。

炭水化物には「血糖値に影響大のもの、気にしなくていいもの」がある

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血糖値とは「血中ブドウ糖濃度」のことです。

 

炭水化物とは「糖質+食物繊維」ですが、炭水化物と糖質を同義語のように書かれているケースもよくあります。

 

もし「炭水化物」と「糖質」の両方が記載されている場合は、糖質を優先して考えてください。本稿でも、以降に出てくる「炭水化物」という表現は「糖質」を意味するとお考えください。

 

糖質は、最小単位でみると「ブドウ糖」「果糖」「ラクトース」に分けられますが、このうち糖尿病で問題となるのは「ブドウ糖」と「果糖」です。ブドウ糖は食後血糖変動に直接影響しますが、血中果糖濃度は血糖値ではありません。

 

つまり、果糖は、食後血糖変動に関しての直接的な影響はありません。ただし過剰な果糖摂取が続くと内臓脂肪へと体内で変換され、インスリン抵抗性の要因となります。そしてやがて糖尿病のコントロールへ悪影響を引き起こします。私はこのことを果糖の血糖変動に対しての間接的作用と呼んでいます。

気にするべきは「カロリー」でなく「ブドウ糖の量」

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糖尿病、境界型糖尿病および正常を理解・診断するにあたり、糖尿病専門医らがそれぞれ同一人物に対して行った「75gブドウ糖負荷試験」と「テストミール負荷試験」の比較結果が重要な示唆を与えていると考えています。

 

75gブドウ糖負荷試験では、300キロカロリーのブドウ糖を液体(ブドウ糖を溶かした水)として摂取し、テストミール負荷試験では、450キロカロリーのテストミールを固形物として摂取しています。

 

知っておいてほしいのは、正常な方の食後血糖はおおむね80mg/dl〜140mg/dlの間で変動しているということです。この「食後140mg/dl」を覚えておいてください。

 

ここでのテストミール負荷試験の血糖変動は、別日に同一人物で行った「75gブドウ糖負荷試験」(以下、75gGTT)における血糖変動と比較すると、テストミール負荷試験のほうが75gGTTよりカロリー負荷量が高いにも関わらず、糖尿病・境界型糖尿病・正常人とも低値であることが明らかです(図表1)。

 

[図表1]「75gブドウ糖負荷試験」と「テストミール負荷試験」の比較結果

 

テストミール負荷試験で出た数値は、200キロカロリーのブドウ糖を液体で摂取する「50gブドウ糖負荷試験(50gGTT)」に近似した結果になったと想定しています。(ちなみに50gGTTは妊婦の糖尿病のスクリーニングとして現在も行われています)。

 

上記のことからわかるのは、以下6つのことです。

 

・摂取後の血糖変動パターンは固形、液体に関わらず類似している。

 

・テストミール中に含まれる脂肪やタンパク質は血糖変動パターンにあまり影響していない。

 

・血糖変動に影響するのは摂取カロリーではなく、ブドウ糖換算量である。

 

・75gGTTにおける正常人の血糖変動から、正常人でも、1食におけるブドウ糖負荷量は75gあたりが限界である。ブドウ糖負荷量75gとは、ほぼ「ごはん2膳(150g×2杯)」に相当する。

 

・テストミール負荷試験の境界型糖尿病の変動からは境界型糖尿病の方はブドウ糖換算量50gあたりが限界である。

 

・テストミール負荷試験の糖尿病の血糖変動から、糖尿病の方は恐らく1回の食事におけるブドウ糖換算量は40gあたりを超えないことが望ましい(図表3)。ちなみに、ブドウ糖換算量40gは「ごはん1膳(150g)」に相当する。

 

[図表2]糖尿病の場合、1回の食事におけるブドウ糖換算量は40gあたりを超えないことが望ましい

 

HbA1cが6あたりで良好にコントロールされている糖尿病患者さんでも、カレーをたっぷり食べてから1時間後あたりの血糖値は300mg/dl近くにまで上がります。なぜなら糖尿病の方は、血糖値を下げる「インスリン」の分泌反応が低下している状態だからです。

 

ただし糖尿病の方でも、糖質の多い「ごはん」や「ジャガイモ」の量などをうまくコントロールできれば、カレーだって安心して食べることができます。

 

繰り返しますが、糖尿病の方は大体の場合において、1食あたりのブドウ糖換算量を40gまでと考えておけば問題ありません。ブドウ糖換算量40gを3食、間食に20g相当のブドウ糖を摂取したと仮定すると、1日で140g相当のブドウ糖を摂取できます(40g×3食+20g=140g)。

 

これは炭水化物主体食品を単独で摂取したときの計算です。ここに後述する「GI値」の概念を入れて計算し、タンパク質や脂肪、野菜などの食物繊維をうまく取り入れることで、もっと炭水化物を摂ることができます。

 

食べ方にもよりますが、恐らく1日で炭水化物250gあたりまで摂ることができると考えています。それだけ摂れれば、糖尿病患者の多くは、ストイックな糖質制限やケトン食といった辛抱を強いられる必要はありません。

「血糖値への影響」を考える3つの指標

(※画像/PIXTA)
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まずはGI値(glycemic index)から説明しましょう。

 

■GI値(glycemic index)

GI値とは、食品に含まれる炭水化物中のブドウ糖比率のことです。GI値自体はブドウ糖換算量(g)を示しているわけではない、ということを記憶しておいてください。

 

(1)「炭水化物を主体とする食品」単体のGI値

例えば、ごはん、パン、各種麺類、くだもの、芋類などについて、GI値は調べられます。本来はこれらの食品こそが“狭義のGI値”です。インターネットではこれらの情報は豊富です。ただし、報告機関によって多少の誤差はあります。

 

(2)料理としてのGI値(=総合的GI値)

炭水化物の量は同じでも、「炭水化物食品だけ」で摂るより、タンパク質や脂肪主体の食品を追加して摂ったほうが総合的GI値は低下します。例えば、ごはん1膳だけ食べるより、同量のごはん1膳に魚や肉などのおかずを追加するほうが血糖値は下がります。炭水化物量が同じだとすれば、カロリー数は増えても総合的GI値が下がれば、むしろブドウ糖換算量は減るという計算です。

 

理屈は簡単です。血糖値を下げるホルモンであるインスリン分泌を刺激するのは、何もブドウ糖だけではありません。タンパク質は体内でアミノ酸に代謝されますが、このアミノ酸もインスリン分泌を促すのです。同時に、アミノ酸は血糖値を上げるグルカゴンを分泌するという動物実験報告もありますが、現実の結果としてはインスリン分泌効果が優位で、血糖値は下がります。

 

先ほど、GI値はブドウ糖量を表さないと書きました。では、ブドウ糖換算量はどうやって求めるのでしょうか。ここから説明していきます。

 

■GL値(glycemic load)

GL値とは、食品に含まれるブドウ糖換算量のことで、「食品中の炭水化物×GI値」で求められます。

 

一部の報告機関では「GI値ではブドウ糖量がわからないのでGL値のほうが良い」とする意見があり、私も賛成です。しかしそれらの報告では、GL値は「食品100g」もしくは「食品1人前」と固定し計算された数値として発表されています。

 

つまりGL値はGL値で、食品100gでの報告なのか食品1人前なのかがわかりにくく、「食品1人前」としていても、1人前の量が実際どれくらいなのかがわかりにくいという問題点があるのです。

 

そこで、「実際に摂る食品」でブドウ糖換算量を評価すべきという立場から私が提唱しているのが、次の「wtGL値」です。

 

■wtGL値(weight GL)

wtGL値とは「実際に摂取する食品」のブドウ糖換算量のことで、私の造語です。

 

<wtGL値の求め方>

(1)ブドウ糖換算量を計算したい食品(目的食品)の炭水化物量が表示されている場合には、そこから「実際に食べる分」にGI値をかけると算出されます。食品単独のGI値は、インターネットで調べればすぐ出てきます。

 

(2)目的食品の炭水化物量がわからないときは、インターネットでその食品名を検索欄に入力して炭水化物含有比率を調べれば、実際に食する食品の重量から炭水化物量がわかりますので、そこに目的食品のGI値をかけるとwtGL値が求められます。

 

例えば、ごはん150g中に糖質55gが含まれているとします。55g÷150g(糖質÷食品の量)の比率は白米固有の比率です。これに白米のGI値75を参考にすれば、実際に摂る白米量からwtGL値が求められます。

いろいろな料理におけるwtGL値

(※画像/PIXTA)
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和食、洋食、中華、イタリアン、フレンチなどすべてに言えることですが、その料理に使われる以下の材料について知ることで、wtGL値はほとんど計算できます。

 

血糖値に影響するのは、ごはん、パン、ラーメン、うどん、蕎麦、パスタなどの穀物の量と、芋類、果物です。これらについては、それぞれ単独でwtGL値を計算してください。

 

タンパク質や脂肪主体の食品については、GI値は無視して構いません。なぜなら肉、魚、豚、豆腐、納豆、卵などのタンパク質は、穀物と一緒に摂ったほうがインスリンの追加分泌作用も手伝って、穀物単独で摂るよりも血糖値が下がるからです。ほとんどの脂肪も、炭水化物と一緒に摂ることで(食物繊維にも同様のことがいえますが)、炭水化物を単独で摂った場合に比べて、血糖値を下げることはあっても上げることはありません。

 

つまり、炭水化物量が同じという条件下では、「料理全体のwtGL値」は、「炭水化物単体で計算したwtGL値」よりも低くなります。どれくらい下がるかは、同時に摂取するタンパク質や脂肪の摂る量で異なります。

 

では、調味料のwtGL値はどうなの?と疑問に感じる方もいるでしょう。実は、通常量を使うのであれば、ほとんどの調味料は血糖値に影響しません。オリーブ油や、チーズおよび酢などは、むしろ血糖値を下げる方向に働きます。

 

ソースや醤油などについて言えば、原料自体に糖質はあっても、そこに含まれるブドウ糖は多くありません。味醂(みりん)のように糖質とカウントされているものでも、多くはアルコールへ変化しています。気にせず美味しく料理してください。

 

注意すべき調味料は、砂糖、ハチミツ、カレーのルーくらいです。これらは摂取量を多くしないことです。

【具体例】血糖値を爆上げしないための食事

(※画像/PIXTA)
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炭水化物の食品を単独で摂るよりも、タンパク質や脂質を同時に摂取したほうが、カロリーが増えても血糖値は下がります。

 

以下に具体例を少し挙げてみます。

 

●「ごはんだけ」より「牛丼」がおすすめ

ごはんの量が同じなら、「白米だけ」食べるよりは牛丼のほうが血糖値は下がります(図表3)。

 

[図表3]ごはんの量が同じなら、「白米だけ」食べるよりは牛丼のほうが血糖値は下がる

 

●「ごはんだけ」より「寿司10貫」がおすすめ

寿司10貫と一緒にお酒を飲むなら、ブドウ糖がほぼ含まれない「ワイン・シャンパン・焼酎」が理想です。

 

●「ざる蕎麦だけ」より「ざる蕎麦+卵や焼き鳥」がおすすめ

蕎麦やうどんなどの一気食いしがちな食材は、卵や焼き鳥などと摂るとなお良いでしょう。

 

●「塩おにぎり」より「明太子おにぎり」がおすすめ

おにぎりも一気食いしがちなのでおすすめしませんが、食べるのであれば、明太子や肉などが入っているほうがより良いです。

 

●「コロッケ」より「メンチカツ」、「メンチカツ」より「ハンバーグ」がおすすめ

コロッケをごはんのおかずにするのはやめましょう。コロッケよりはメンチカツ、メンチカツならハンバーグだけ、といった食べ方が良いです。

 

冒頭でも述べたように糖尿病の大半は「2型糖尿病」ですが、私は、2型糖尿病を図表4のように分類しています。

 

[図表4]筆者による2型糖尿病の分類

 

糖尿病と聞いてイメージしやすいのは①かもしれませんが、意外と②や③のタイプが多いです。

 

繰り返しますが、炭水化物の食品を単独で摂るよりも、タンパク質や脂質を同時に摂取したほうが、カロリーが増えても血糖値は下がります。ブドウ糖を摂取するとインスリン(血糖値を下げるホルモン)が分泌されるというのは、皆さんにとってもほぼ常識となっていると思いますが、アミノ酸もインスリン分泌するという事実への気づきがあれば理解できるはずです。糖尿病が心配な方はむしろおかずを増やしてください。ただし芋類は避けましょう。

 

 

團 茂樹(だん しげき)

宇部内科小児科医院 院長

総合内科専門医

 

日本大学医学部附属病院で血液のガン治療に従事した後、自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院に勤務。その後、遺伝子研究の本場・カナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

以来16年余り漢方治療を導入。2010年から現職。2015年に総合内科専門医を取得。総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。

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