歯科疾患は「口の中だけの問題」に留まらない…「お口の健康」と「認知症」の深い関係

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橋村 威慶
歯科疾患は「口の中だけの問題」に留まらない…「お口の健康」と「認知症」の深い関係
(※画像はイメージです/PIXTA)

認知症対策は、日頃からの予防が大切です。本稿では、歯科医師・橋村威慶氏(サッカー通りみなみデンタルオフィス 院長)が、「お口の健康」と認知症リスクの深い関係について解説します。

認知症は誰でも発症しうる

(※画像/PIXTA)
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2022年に高齢化率29.1%となった世界一の高齢大国・日本。認知症の患者数も増加しています。2012年は65歳以上の高齢者のうちの15%、すなわち462万人が認知症だったのが(MCI〔Mild Cognitive Impairment/軽度認知障害〕を含む)、2025年には20%に達し、731万人が認知症になると予測されています。

 

誰しも認知症にはなりたくないと思うものですが、これだけ多くの方が発症している現実を見ると「自分は絶対大丈夫、認知症にはならない」とは言えず、むしろ「自分も発症するかもしれない」という心構えをしておくことが必要です。

 

認知症は普段からの予防が大切です。そこで今回は、認知症予防には「お口の健康維持」がとても重要であるということを解説していきます。

認知症の発症リスクは「歯がなくなるほど」増大

(※画像/PIXTA)
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認知症は歯の喪失と密接に関連しています。歯がなくなればなくなるほど認知症の発症リスクが高まっていくのです。ヒトの歯は親知らずを除き28本ありますが、年齢とともに、歯科疾患など何らかの原因で喪失していきます。

 

歯が19本以下になると認知症発症のリスクが1.2倍になることが研究によりわかっています。2022年のアメリカでの国民健康調査では、歯がまったくない「無歯顎症」の人は最も認知機能障害が高くなると報告しており、同様の研究でも1.85倍リスクが高まるとされています。

 

実際には「歯をなくさないこと」が大切ですが、歯が20本未満(=認知症リスクが上がる本数)になる割合は、各世代でどのくらいなのでしょうか?

 

厚生労働省の平成28年歯科疾患実態調査によると、45~49歳では歯が20本未満の人は1%ですが、年齢階級が上がることに割合は増加していき、60~64歳では14.8%、70~74歳では36.6%、80〜84歳では55.8%となっています。

 

また、歯を失う原因としては歯周病によるものが一番多く(36.6%)、その次に多いのが虫歯(29.2%)となっています。虫歯より歯周病で歯を失う人の方が多いのです。この調査の対象年齢は58歳です。歯周病は加齢とともに増加しますので、歯周病による抜歯は年齢とともに増加します。

 

実際に診療をしていると、20~30代までの抜歯はほとんど虫歯が原因ですが、40代から歯周病による抜歯が増えていき、60代では8割方が歯周病による抜歯になるのを実感します。

 

また、厚労省と歯科医師会は「8020(ハチマルニイマル)運動」を推進しています。8020運動とは、80歳で20本以上歯を残しQOL(Quality of life生活の質)を保つための運動であり、期待される効果の中には認知症予防も含まれます。

 

平成28年歯科疾患実態調査の時点で達成率は51.2パーセントと、平成23年の調査結果より増加したものの、人生100年時代に突入したことを考えると、これからがより重要な運動といえましょう。

噛めないとどうして認知症になるの?

(※画像/PIXTA)
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歯の喪失=咀嚼力の低下は私たちにどのような変化をもたらし、認知症のリスクを高めるのでしょうか。

 

●食事に偏りが出る

歯がなくなると食べ物によっては噛みづらかったり、噛めないものが出てきたりするのは容易に想像できると思います。例えば野菜は噛みづらいカテゴリーに含まれます。キャベツなどがそうです。また、肉類にも噛みづらいものがあります。

 

偏食になると食べ物から得られる栄養素が不足しがちになり、いわゆる「フレイル」の状態に陥ります。フレイルとは身体の「虚弱」を意味し、その中で「オーラルフレイル」は、口の中の衰えによる症状や病状を一括りにしてつけられた名前です。

 

認知症は「急になる病気」ではありません。フレイルから始まり、徐々に進行していきます。このフレイルにならないことが、認知症予防にもつながります。

 

●よく噛まないと認知機能が低下する

巷でも「よく噛まないと認知機能が低下する」といわれますが、これは事実です。咀嚼能力が低下すると脳の認知領域への刺激が少なくなり、記憶障害などを起こしやすくなります。脳への血液量も少なくなり、脳が活動するための栄養素が減ることで、認知症になりやすくなります。

 

●唾液が出づらくなる

唾液の分泌が少なくなるのには、糖尿病や薬によるもの、口呼吸や持続的な緊張感によるものなどさまざまな要因があります。また、歯が少なくなり噛めなくなると唾液腺(=唾液が作られるところ)が萎縮し、唾液の量も少なくなります。いわゆるドライマウスと言われる状態です。

 

このドライマウスはとても厄介な病気です。ドライマウスになると一気に歯周病が悪化したり、多数の虫歯ができたりすることがあります。ドライマウスにより歯の喪失が加速すると、これもまた認知症の一原因となります。

「お口の中の菌」がアルツハイマー病を悪化させる!?

(※画像/PIXTA)
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歯周病菌はお口の中にいる常在菌です。歯周病菌は何種類かいて、他の菌と共生してマイクロビオームという巣を作り増殖してきます。増殖すると歯周病が悪化します。この歯周病菌の中には「P.g菌」という悪さをする歯周病菌の代表格がいて、このP.g菌がアルツハイマー病を悪化させている可能性あるということが、複数の調査からわかってきています。

 

アルツハイマー病は脳を萎縮させる病気です。この病気の最大の特徴は、脳内にアミロイドβプラークというタンパク質が蓄積されることです。2015年の研究では、ヒトで初めてP.g菌がアミロイドβプラークの蓄積に関与していることがわかりました。2019年の研究では、P.g菌がマクロファージ(ウイルスなどから体を守る白血球の一つ)にアミロイドβプラークを蓄積させ、脳内に移行させることがわかりました。

 

アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも最も多いタイプです。このことから、重度の歯周病菌は認知症にも直接関与しているといえるのです。

認知症予防の第一歩は「お口の健康」から

(※画像/PIXTA)
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お口の健康は認知症予防にとっても非常に重要です。お口の健康を保つには3つのポイントがあります。

 

【ポイント1. オーラルフレイルにならないようにする】

先ほど少し触れましたが、オーラルフレイルとはここ10年ほどで提唱されてきた比較的新しい言葉です。日本歯科医師会の見解では、滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、かめない食品が増えるなどのささいな口腔機能の低下から始まるとしています。

 

このような症状は歯の喪失、筋力の低下から始まっていきます。前述したように歯の喪失には歯周病が大きく関わっています。歯周病予防のための日頃のお口のセルフケアが重要です。また筋力の低下も日本歯科医師会がすすめているお口の体操が有効です。上記の症状を感じたら歯科医院の受診をおすすめいたします。

 

【ポイント2. 唾液力を常にフルパワーにする】

唾液は99%以上が水分ですが、非常に重要な役割を担います。水分そのものがお口の自浄作用を促し、虫歯菌や歯周病菌の繁殖を抑えます。唾液は消化酵素も含んでおり消化の手助けをしてくれます。なんと抗がん作用もあるのです。そのほか、パロチンという新陳代謝を挙げるアンチエイジングホルモンも分泌されます。

 

良いことだらけの唾液ですが、さまざまな理由で加齢とともに減少していく人が多くいます。私たち歯科医療者も、ドライマウス患者さんに頻繁に遭遇します。ドライマウスは前述の通り厄介な病気です。

 

口の中が乾いているため入れ歯が擦れ痛くて着けられなくなったり、乾いた食べ物を食べたり飲みこんだりするのが難しくなるだけでなく、虫歯もできやすくなります。夜間には口の渇きで目が覚めてしまう人もいるくらいです。また、本来唾液によって抑えられていた菌が増殖し、口臭やカンジダ症の原因にもなります。

 

ここで、唾液力を落とさないための5ヵ条を挙げていきましょう。

 

●唾液腺マッサージをする

お口の中には大唾液腺という大きな唾液腺が3つあります。そこをマッサージすると、刺激により唾液が出やすくなります。

 

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〈簡単!誰でもできる唾液腺マッサージ〉

3つの唾液腺は①上の奥歯周辺(=耳下腺)、②下顎の先の内側(=舌下腺)、③下顎のえらが張った内側辺り(=顎下腺)にあります。

 

人によって少しポイントが違いますが、試しに以下の図のようにマッサージをしてみましょう。唾液がジワッと出るところが唾液腺の場所です。

 

[図表1]3つの唾液腺

 

[図表2]唾液腺マッサージ

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●リラックスする

唾液の分泌は自律神経によってコントロールされています。緊張していると唾液が出づらくなります。特に夜はリラックスしましょう。

 

●おしゃべりをする、カラオケで歌う

適度にお口を動かすのにちょうどいいのは「会話」です。食事の際も口を動かしますが、時間としては短く、十分ではありません。

 

会話によるお口への刺激は唾液分泌を促進します。また、カラオケもいいでしょう。コミュニケーションもとれて一石二鳥ですね。

 

●薬をチェックする

加齢とともに服薬する方も増えていきます。薬の中には喉の乾きが表れるものもあります。

 

例えば、花粉症によく使われる抗ヒスタミン薬です。抗ヒスタミン薬は副作用で口の渇きを感じる場合があります。薬を飲むことで喉の渇きを感じ、支障をきたすようであれば、医療機関を受診して相談しましょう。

 

●マウススプレーを使用する

持続的な効果はありませんが、マウススプレーも有効です。スプレーの他にもジェルタイプや、マウスウオッシュタイプのものもあります。食事の前後や就寝前などに使用するとよいでしょう。

 

【ポイント3. かかりつけ医を作る】

「かかりつけの歯科医院がない人」は、「ある人」に比べて認知症の発症リスクが1.44倍も高くなると報告されています。かかりつけ医に通院するメリットとしては、患者さんがどのような過程を経て今の口腔状態なったかを把握できます。流れに沿ったより的確な治療や口腔指導ができるからです。また患者さんと歯科医師との信頼関係も重要になりますセルフケアとプロフェッショナルケアが合わさることによりお口の健康を保ち、それが認知症予防につながります。

 

以上、口腔と認知症予防について述べていきました。お口の衛生は健康のバロメーターです。日頃の生活や定期的な歯科受診を通じ、認知症予防に取り組んでいきましょう。

 

 

橋村 威慶

サッカー通りみなみデンタルオフィス 院長

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。