飽食の時代、肥満の子供が増加傾向にあるなかで「うちの子供は糖尿病ではないか」という保護者からの相談が増えていると、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師はいいます。子供の肥満とはどこからを指すのか。また、子供の肥満と糖尿病の関係はどのように考えれば良いのか、実際の論文や研究結果から、秋谷氏が解説します。
BMIでは量れない「子供の肥満」…最悪の場合「糖尿病」発症の危険性も【小児科医が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「太っていないのに」糖尿病を発症する子供も

実は子供の場合「肥満と糖尿病の関連は高いが、必ずしも関連しない場合もよくある」といわれています。

 

2022年の糖尿病の子供と肥満・性別・人種・脂質異常症などの他の合併症を比べた研究によると、8,942人の参加者のうち、肥満の有病率は75.27%でした。

 

たしかに、糖尿病で肥満を合併している割合は高いのですが、4人に1人は「肥満ではないのに糖尿病になる」のです。

 

さらに、肥満症例の多くは、食事・運動療法、行動療法により、肥満や内臓脂肪蓄積、血糖コントロールが改善しうる傾向にあります。しかし、肥満のない子供では、薬での治療が必要になる可能性が高くなってしまいます。

 

つまり、肥満でない糖尿病の子供のほうが治療に難渋するのです。

 

これらの結果から、同論文では「肥満の有病率と脂質値や血糖コントロール(平均HbA1c値)に有意な関連がみとめられない」という結果になりました。肥満イコール脂質値や血糖値が悪いわけではないようです。

 

その他にも

 

● 女児のほうが糖尿病の発症が多いが、糖尿病の子供における肥満の有病率は男児のほうが多い。

● 肥満の有病率は白人で89.86%と最も高く、アジア人では64.50%と最も低い。

● 日本人では肥満でない糖尿病の場合が多く、さらに膵臓からのインスリン分泌が低下している場合が多い。

 

ことがわかっています。

 

つまり、糖尿病の発症要因にはさまざまな因子が関わっており、「うちの子が糖尿病だったのは、私の子育てが悪かったんだ」などとすべて親のせいにしなくてもよいことがわかります。

 

もちろん、食育を一緒に見直したほうがよいケースもありますので、ぜひ小児科で相談してみてください。

 

少しでも気になることがあればお近くの医療機関へ

肥満と糖尿病の関係についてお話していきました。糖尿病を患う子供のなかには、肥満でないケースも25%と比較的高い確率で存在します。

 

そして日本では、子供の糖尿病の多くは尿糖を調べる学校検診でみつかっています。しかし、尿糖陽性の場合に医療機関を受診するかどうかは、保護者の判断にゆだねられているのです。

 

「肥満ではないから糖尿病ではないだろう」などと考えずに、検査で指摘されるようなことがあれば、きちんと医療機関に受診するようにしましょう。

 

 

秋谷 進

東京西徳洲会病院小児医療センター

小児科医