ITの急激な進歩とコロナ禍を契機として、フィットネス・ビジネスの形は大きく変わりました。とりわけ、今や世界有数のIT大国となった中国ではフィットネスジムと自宅で行うトレーニング「宅トレ」のいずれにおいてもDX(デジタル・トランスフォーメーション)の進展が目覚ましく、ユニークな進化を遂げています。近い将来、日本でも同様のサービスが広く普及する可能性があります。ジャーナリスト・高口康太氏が解説します。
もうすぐ日本も席巻!? 筋トレのDX デジタル大国・中国で進化するフィットネス・ビジネス (※写真はイメージです/PIXTA)

「宅トレ」のDX

ジムでの運動以上に多いのが「宅トレ」の愛好家です。特に2020年以降は新型コロナウイルスの流行によってジムが閉鎖された時期もありましたし、感染を恐れて行く気にならない人もいたでしょう。

 

「自宅でもできる簡単筋トレ」といった本や雑誌は昔からありましたが、今は動画の時代です。動画配信サイトのユーチューブで検索すると、フィットネス・ユーチューバーによるエクササイズ動画が無数にあります。動画を見ながら自宅で体を動かすのが日課という方も増えているようです。

 

中国でもエクササイズ動画は人気ですが、録画プログラム以上に生配信されるオンラインレッスンの人気が高いのが特徴です。「もっと激しく」といった叱咤激励を受けることで、自宅にいながらにしてスタジオレッスンを受けているような感覚になるのが魅力なのだとか。

 

「ビリビリ動画」や「ドウイン」(中国版TikTok)といった動画配信サービスに加え、有料でより専門的な動画を閲覧できる「KEEP」というアプリも人気です。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先としてご存知の方もいるかもしれませんが、MAU(月間アクティブユーザー、1カ月に1度以上利用したユーザーの数)3000万人超の人気アプリに成長しています。

 

オンラインレッスンのコーチにはフィットネス・インフルエンサーに加え、オリンピック選手などのスポーツ選手も参入しています。また、インスタグラムで900万人フォロワーを誇るドイツのモデル、パメラ・ライフも高い人気を誇ります。

 

2022年、爆発的な人気を獲得したのが台湾出身の歌手、俳優の劉畊宏(リウ・ゲンホン)です。テレビのダイエット番組でコーチ役を務めるなど一定の知名度はありましたが、その激しいレッスンが癖になると話題になり、2022年に人気が爆発。ドウインのフォロワー数は7000万人を超え、スーパースターになりました。

 

また、ネット接続機能付きのエアロバイクやランニングマシン、トレーナーの動作と自分の動きを同時に確認できるフィットネスミラーなどのIoT(モノのインターネット)機器を組み合わせることで、オンラインレッスンでも「もっとがんばろう」と激励される、同時受講者のカロリー消費ランキングを表示してやる気を奮い立たせてくれるといった機能が盛り込まれていることも。

 

オンラインレッスン以外でも、AIカメラを使って正しいエクササイズを教えてくれるスマート機器も増えています。スマートフォンやスマートテレビでエクササイズ動画を流しながらトレーニングをすると、AIカメラがその姿勢をチェックし正しい動作を行えているかを確認するというものです。