日本人の死因トップを占める病気、「がん」。「2人に1人がなる」ともいわれ、がんへの備え方として、多くの人ががん保険加入を選んでいます。そのようななか、がん保険でよく目にする「終身保障」という保険のタイプ。若いうちに加入すると安い保険料で一生涯保障で安心というイメージを持たれていますが、実はその本当の意味を知らないまま加入する人も多いと、CFPの谷藤淳一氏はいいます。今回は終身がん保険の注意点について、全身がんの40歳女性の事例とともにみていきましょう。
4年前の乳がん治療は「128万円」受け取れたが…全身転移した40歳女性、終身がん保険「支払い対象外」の悲劇【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

がん治療の進化と終身保障の「落とし穴」

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

筆者は過去に携わってきた10,000回を超える保険相談会のなかでがん保険の相談もたくさん受けてきました。そのなかには遠山さんのように、20年30年以上前に加入したがん保険を継続していて、「このがん保険は終身保障で、月々の負担が安い若いときに加入したものなので、見直さずにこのまま継続したい」という意向を持った方も少なくありませんでした。

 

確かに保険は加入年齢が高くなると、毎月負担するお金(保険料)が高くなるという性質があります。毎月の保険に対する経済的負担(保険料)はできる限り抑えたいので、そういった気持ちになることも致し方ないかと思います。

 

ただし、加入しているがん保険の保障内容が、その時代のがん治療の実態に合っていなければ、保険としての機能を果たすことができなくなる可能性があるという点はとても重要です。特にがんの場合、世界中で新しい治療方法や薬の研究が行われていますので、その実態は日進月歩で変わっていく可能性があります。

 

がんの平均入院日数は「短期化」し続けている

遠山さんのがん保険の保障内容が古かったために、がんの転移の際に役に立たなかった背景となったことのひとつに入院日数の短期化があげられます。がんが身近でない方ほど、がんになってしまうと数ヵ月単位の長期入院というイメージを持っている傾向があります。

 

ただ、がん治療における入院日数は、そういった方の想像よりもかなり短いといえるかもしれません。下の表は、厚生労働省が行っている調査のなかの、がん(血液のがんを除く)での、平均入院日数の推移です。

 

出典:厚生労働省「平成29年患者調査」より、筆者が作成
[図表1]がん(血液のがんを除く)での平均入院日数の推移 出典:厚生労働省「平成29年患者調査」より、筆者が作成

 

見てのとおり、ずっと平均入院日数は減り続けています。約20年で半分以下の水準になっています。この平均入院日数の短期化の理由としては

 

・国の政策

・医療技術の向上

 

などがあげられ、今後もこの傾向は変わらない可能性が高いです。そういった点から、入院でのがん治療を前提としたがん保険は、今後もさらにその保障内容が陳腐化していく可能性があります。

 

がん保険の保障内容は「一生変わらない」

入院日数の短期化を始めとして、最新のがん治療の実態は変化してきています。万が一がんになってしまった場合に、どのような治療を受けるか、いくらくらいの費用が掛かるか、ということも変化していく可能性があります。

 

ただ、がんを取り巻く環境は変わっていきますが、それに合わせて加入したがん保険の保障内容が変わっていくことはありません。がん治療の実態の変化が大きければ大きいほど、加入しているがん保険の保障内容との乖離が広がっていきます。

 

がん保険の価値は、実際がんになって保険の請求をしてみないと実感することが難しいのですが、若い時期に終身保障のがん保険に加入し、なにも気にせずに30年、40年と時間が経過したとき、想像以上のギャップが生じている可能性があります。がん保険の保障内容が変化しないということは、がん保険に加入する際、必ず知っておきたいことのひとつです。