あまり起こってほしくないことですが、親であれば1度は目の当たりにする「わが子が頭を打った」場面。いったん様子を見る人もいれば、血相を変えてすぐ病院に連れていく人もいるなど、実は親の反応はさまざまです。しかし、親の対応次第で、子どもの「思わぬ部分」にも影響が出ることがあると、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師はいいます。複数の論文をもとに、詳しくみていきましょう。
子どもが頭を打った!親の対応次第でわが子に一生ついて回る「深刻すぎる影響」【小児科医が警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

当てはまったらすぐに救急車を!子どもの「11」の異変

軽視が命取り…子どもが転んだときは例外をのぞき「すぐに救急車」を呼んで

以上から、「たかが子どもの転倒」と侮ってはいけないことが十分わかったのではないでしょうか。

 

イギリスのNHS(国民保健サービス:National Health Service)は、「特に次のような場合は、すぐに救急車を呼ぶようにすべきである」と報告しています。みなさんもすぐ救急車を呼ぶようにしましょう。

 

1.ぶつけたあとになかなか目覚めない
2.転んだあとに、目を開けない
3.聴覚や視覚に異常がある
4.目に明らかな外傷がないのに、黒目である
5.耳や目から液体が出てきている
6.耳から出血していたり、耳の後ろにあざがある
7.体の一部分が脱力していたり、しびれが生じている
8.歩いたり、バランスをとったり、話したり、書いたりするのに障害が出てきている
9.頭をぶつけるスピードが非常に早かった
10.1メートル以上の高さ、もしくは階段5段分以上の高さから落ちた
11.頭がへこんでいたり、頭の中になにか異物が入っている

 

昔の日本では、脳震盪で倒れても、「すぐに意識が戻れば大丈夫」と考えられていましたが、短期間(30日、平均2週間)のあいだに繰り返し脳外傷を受けると重篤な転帰をもたらすことがわかっており、これを「セカンドインパクト症候群」と呼びます。

 

アメリカでは、中学生女子サッカー選手に多くの脳震盪が認められることから、アメリカサッカー協会は10歳以下のヘディングを禁止する通達を出しています。日本においても、全日本柔道連盟やJリーグなどが「脳震盪後の1~4週間の練習禁止」など、脳震盪後の練習復帰指針などを定めています。

 

上記にあてはまらない場合でも、子どもが頭をぶつけたら、一度はクリニックや病院に行ってきちんと診ていただくことをおすすめします。

 

 

秋谷 進

東京西徳洲会病院小児医療センター

小児科医