日本の研究者にとって、研究持続のための“命綱”となるのが「科研費」です。科研費とは、文部科学省が公募している補助金のこと。この「科研費」を巡るシビアな現実と、そこから見える日本の問題点について、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「インパクト重視」の科研費審査…“研究大国”復活のカギは
では、どのような研究が科研費に通りやすいのでしょうか。
一言でいうと、審査員に「いかに研究自体にインパクトがあり、実現可能と思われるか」というところがポイントになります。
つまり、
●インパクトのある研究か
●研究は実現可能か
●実績があるか
●研究は実現可能か
●実績があるか
などを中心に評価されることとなります。一見まっとうに思えますよね。
しかし、これらを基準にすると「もともと実績を作りにくい研究」「成果が長期にかかる研究」というのはインパクトが薄く、科研費が獲得しにくくなってしまいます。
以上のことを考えると、
●「比較的成果がすぐに出そうな研究」が優遇されやすい
●研究をしようと思っても採択率が低く(約4件に1件)、なかなか研究が始められない
といった科研費にまつわる日本の現状と問題点が見えてきます。
2021年度決算の検査報告によると、税金の無駄遣いや有効活用できていないお金は「約455億円」にものぼるといわれています。
それらを研究にあてるだけで、日本を「研究大国」として発展させ、長期的にみれば経済面でプラスの影響を与えるのではないでしょうか。長期的な視野をもって、税金の配分を正しく行っていただくことを、切に願います。
秋谷 進
東京西徳洲会病院小児医療センター
小児科医