ではこの上位6パターンとはどのような属性なのだろうか。
【図表1】からは、男女ともに10代後半から20代までのパターンのみが純増となっている。このことから、
(1)「10代後半から20代までの若者の移動が東京の人口一極集中のすべて」
であることが判明した。
次にその内訳であるが、10代後半から20代の男女の純増合計は9万183人であり(それ以外の人口の純減は5万2162人で差し引き3万8021人となる)、そのうち大学進学の年齢ゾーンにあたる10代後半人口による純増はわずか1万3795人で純増数全体の15.3%に過ぎない(10代後半の純増は18歳がほとんどだが、10代後半の移動全員が進学理由ではなく、高卒の就職移動も含まれることに注意)。つまり、20代までの若者だけが増加しているといっても、そのうち20代の純増が純増数全体の84.7%を占めているのである。このことから
(2)「20代人口の移動が東京一極集中の85%要因」
であることがあわせて判明した。
そして、この20代人口の純増(男女計7万6388人)のうち、5万7153人、74.8%が20代前半人口、つまり大学新卒(1位22歳)・専門卒(20歳)の年齢での移動であり、まさに就職による住民票の異動であろう事実が浮き彫りとなった。このことから、
(3)「20代前半の新卒男女による就職移動が20代人口の東京一極集中の75%の要因」
であることはほぼ確定といえよう。
このように、東京都に純増した人口属性6パターン(9.0万人)のうち5.7万人が20代前半人口であるが、6パターン純増合計の63.4%が20代前半の集中によるものであることがわかった。ちなみに、残る20代後半の男女の移動にも、転職移動が含まれているとみられるため、東京一極集中はほぼ「就職移動」といっても過言ではないだろう*1。
*1:住民基本台帳上の人口移動であるため、あくまでも住民票の異動を伴う転居である。よって転勤等の数年間の滞在を前提とした移動は、統計上ほぼ含まれない移動と考えられる。また、大学生などが「その先はわからない」状態で親元に住民票を残しつつ進学で引越しをする、といった移動は、地元における就職先の提供で取り戻しがききやすいが、住民票の異動を伴う就職移動は、当然ながら取り戻しがききにくい。このことから、地方創生においては男女関係なく、一時的な転勤や進学による移動ではなく「住民票上の異動状況」が最も問題視されねばならないだろう。
一極集中へのアプローチの正解は「20代新卒男女の就職誘致」
人口属性をみると東京都から転出超過(地方移住)している人口属性はばらつきが非常に大きく、全体の純増減への影響度合いが1割超となるのは、30代後半男性人口と4歳までの乳幼児人口のみである。転出超過の人口属性32パターン(7位から38位合計5万2162人)における割合は、最も多い4歳児以下男女人口でも17.3%となっている。
図表からも明らかなように、転入超過の6パターン、特に新卒就職時に住民票を移動する20代前半男女(国勢調査ではこの20代前半男女の9割以上が未婚である)への強力なアプローチ(地元から出さない、といった非多様かつ強制的な考え方でなく、全国の20代人口からの人気をどう得るかを考えたい)なくして「地方創生」などありえない、といった結論が容易に導かれるはずである。
人口問題において、自分の過去の経験や自分の置かれている環境だけから語るような「誰でも語れるいいことをしてみよう議論」ではなく、いかに科学的解決方法を導けるかが最大の課題であり、日本は戦後初めて、この分野における異次元の「学び直し」力を問われているともいえるだろう。