4― 目減りの影響:年金受給世帯が相対的貧困になる可能性が上昇
年金額の目減りには、これらの効果がある一方で、年金受給世帯が相対的貧困になる可能性が高まるという側面もある。
絶対的貧困が最低限の生存の維持が困難な状態を指すのに対して、相対的貧困は社会の大多数よりも貧しい状態を指す。具体的には、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯員数の平方根の割った値)が全体の中央値の半額を下回る世帯を指すことが多い。可処分所得の全体の中央値は現役世代の賃金の伸びにある程度連動すると考えられるため、目減りによって年金額の伸びが現役世代の賃金の伸びを下回ると、年金受給世帯が相対的貧困になる可能性が高まる。
5― 総括:年金額の改定を機に、現役世代と高齢世代の相互理解を期待
ここまで述べてきたように、年金額の目減りによって年金財政の健全化が進む。年金財政の健全化が進むと年金額を目減りさせる仕組みを早めに停止できるため、将来の年金額の目減りがより小幅で済むことになる。
現役世代は、高齢世代が物価や賃金の伸びを下回る年金の伸びを受け入れることで将来の年金額の目減りが抑えられることに、思いをはせる必要があるだろう。一方で高齢世代は、年金額の目減りがなければ少子化や長寿化の影響を将来世代に負担させる形になり、世代間の不公平が拡大することを理解する必要があるだろう。
年金額の改定を機に、現役世代と高齢世代の相互理解が進むことを期待したい。