総務省より2022年の住民基本台帳の年報が公開となり、再び、東京一極集中の様相を帯びてきました。ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏が解説します。
東京一極集中、女性主導で復活へ-2022年・東京都は男性の1.6倍の女性増、男女減少格差27倍のエリアも (写真はイメージです/PIXTA)

再び人口集中、首位の座へ

総務省より2022年の住民基本台帳の年報が公開された。今回は速報的なランキングレポートであるので、2019年以降の詳細は、昨年秋までの2022年の人口動態を分析した「東京一極集中、ほぼ完全復活へ」をあわせてご確認いただきたい(関連記事:『東京一極集中、ほぼ完全復活へ(2)…2022年10月まで社会減37エリア、男性の1.4倍の女性減で出生の未来に暗雲』)。

転出超過(社会減)36エリア、83%が女性減>男性減

広島県の9207人の純減を筆頭に、36道府県が「転出数>転入数」となる社会減の状況となった。移動による人口純減となったエリアのうち30エリアで男性よりも女性の方が多く転出超過となり、平均で男性の1.3倍の女性がエリアから消えゆく結果となった。社会減エリアの8割超において、男性よりも女性の移動によるエリアからの人口減少問題がより深刻であることが示された。

 

またエリア格差が著しく、北海道は男性が-123人に対し、女性が-3353人となり、格差は27.3倍である。この大きな格差は北海道の「通常モード」であり、北海道の人口の社会減は「女性問題でしかない」といっていいだろう。

 

ところが、残念なことにこの事実に直面した地元の政策立案に携わる関係者からは「そこまで酷いという実感がなかった。衝撃だ」という声を伺っている。地方創生に関して、なぜか男性の移動が女性よりも課題ととらえるアンコンシャス・バイアスが大きな影を落としている様子がうかがえる。

 

北海道に続いて10倍を超える男女格差を見せる大分県、女性のみ転出超過のため社会減エリアとなっている群馬県、熊本県、栃木県などは、「人口減少対策を100%女性に振り切る」くらいの覚悟がないと、統計的にはエリアの人口減問題は解決しない、と断言してもいいだろう。筆者の前稿とも繰り返しになるが、出生数の増減と女性の社会増減は強い正の相関関係にあり、もはや都道府県間の合計特殊出生率の高低(地元女性の出生力)では、出生数の増減レベルの比較はできない状況にあることを強く確認しておきたい*1

 

【図表1】
【図表1】

 

*1:「都道府県の合計特殊出生率、少子化度合いと「無相関」-自治体少子化政策の誤りに迫る-」参照