日本の「綺麗に舗装された道」が“足枷”になり得るワケ
●資産の老朽化
海外の都市部ではなく地方にまで足を延ばすと、日本に比べて、コンクリートが極端に少ないことに気づきます。
当たり前の光景なので、普段気づくことはありませんが、日本の海岸線、河川などの水辺は、水害を防止するための堤防や護岸工事が行き届いています。人が入らないような森林の中にある沢を歩いていくと、土砂崩れや鉄砲水を防ぐための砂防ダムが、必ずいくつも築かれています。
日本各地でほとんどの道路が舗装され、自動車が通れる橋やトンネルがあります。これらは、すべてコンクリートでつくられています。
新興国の政府の要人たちが日本を訪れて、この光景を見ると、その豊かさに圧倒されることでしょう。
彼らの立場に立って考えてみてください。国土のほとんどが自然のままの国で、これから国土を開発していかなくてはならない立場として、日本の国土と同じくらいの面積に限定したとしても、これだけのコンクリート構造物・建造物を自国の国土で開発するとしたら、どれだけの資金が必要になるでしょうか?
想像してみてください。幹線道路を舗装するだけ、主要河川に橋を架けるだけでも、数百億円もの資金が必要になります。国土すべて(あるいは主要幹線道路沿いだけでも)をインターネット網、4G回線網でカバーしようとしたときに、その途方もない金額をどこから調達すればよいでしょうか? おそらく数千兆円は必要になるのではないでしょうか?
いくら日本が貧困化していると言っても、これだけのインフラ投資がされている日本という国は、どれだけの資産価値を持っているかという視点で考えると、とんでもなく豊かな国だと言えるのです。
しかし、これが未来の日本にとっては、重い足枷となる可能性があります。それは、こうした施設の老朽化が始まっているからです。令和3年版の国土交通白書によると、建設後50年以上経過する施設は、道路橋、水門などの河川管理施設、港湾岸壁などで60%を超えていることがわかります。
これらは、修繕などのメンテナンス費用だけでも相当の費用が掛かっていますが、そろそろ修繕ではなく、架け替えや交換が必要になってくるはずです。つまり、これから数十年に渡って、新興国の首脳たちが驚きを隠せない数千兆円にもなるだろう途方もない出費が必要になってくるのです。