「どんなに働いても収入は上がらず、一方で生活コストは上がり続ける」傾向が顕著になっています。消費者の購買力はますます落ち込み、日本経済はますます厳しいものになっていくでしょう――。スティーブ金山氏が著書『18歳になったら、必ず押さえておきたいFIRE黄金法則』(彩流社)にて解説している、「これからの日本経済が厳しい理由」10項目のうちの3項目を見ていきます。
「どんなに働いても収入が上がらない…」日本経済は今後“ますます厳しくなる”と言えるワケ (※画像はイメージです/PIXTA)

「数千兆円」を調達する方法は…

では、この数千兆円の資金はどこから調達できるでしょうか?通常このような資金を賄うために考えられるのは、税収と国債の発行です。

 

しかしながら、日本の国の税収はわずか60兆円しかありません。それに対し、日本の国債の発行残高は国1000兆円、各地方政府による地方債の発行残高の合計が200兆円と、すでに合計で1200兆円の借金があり、返済できるかどうかも怪しい状況です。

 

しかも、金利はマイナス金利です。このような状態で、誰が貸してくれる(国債を購入してくれる)でしょうか?

 

仮にこの資金を調達できなければ、日本中の道路、トンネル、河川の堤防・護岸・水門、港湾岸壁などは朽ちていきます。それは、立ち入っては危険な場所、行きたくても道路が寸断されて辿り着くことができない場所ばかりになるということを意味します。

 

また、土砂災害や洪水、台風による高潮などの被害はますます大きくなります。山奥の限界集落は、人が入ることができなくなり、例えばそういった場所にある名湯に行くには、かなりの冒険になるでしょう。

 

●国債の対GDP比

 

国の税収が60兆円しかないにもかかわらず、国債の発行残高が1000兆円もあるという話を詳しく見ていきましょう。

 

2020年の日本の名目GDPは約5兆ドル(500兆円)です。単純に国の借金と比べると国の借金は名目GDPの2倍となります。しかしながら、GDPは国全体の収入ですので、借金と比べるのであれば、国債発行残高だけでなく、地方債発行残高と社会保障基金を足して比較しなくてはなりません。すると、国の借金の対GDP比は、256%([図表3])と2.5倍になっています。

 

出所:財務省、IMF “World Economic Outlook(2021年4月)
[図表3]主な国の債務残高(対GDP比) 出所:財務省、IMF “World Economic Outlook(2021年4月)

 

図を見れば一目瞭然で、2010年に話題になった欧州ソブリン危機(ソブリンとは、国債や政府機関債など、各国政府や政府機関が発行する債券の総称)でギリシャを筆頭に、イタリアが大問題になっていました。そのイタリアですら[図表3]では155.6%と日本よりもはるかに低いのです。いかに日本の債務状態が悪いかがうかがえます。

 

一方で、国の借金の評価については、政府の借金(金融負債)総額だけを見るのではなく、政府全体が保有する資産(その中でも金融資産)とのバランス(もしくは、負債総額から資産総額を差し引いたネットの純負債額)に着目すると、実質的な政府の借金(金融負債)総額は約120兆円程度の、会計学上”健全な”額の純負債総額なので、このままでも何も心配が要らないとする意見もあるようです。