深刻度が増していく、高齢者の貧困問題。家賃を払うことができず、滞納状態となり、違法スレスレの恐ろしい取り立てに怯えることも。また家賃滞納は貧困層だけでなく、一見余裕を感じられる元エリート層でも起きうるといわれています。みていきましょう
年収1,000万円だった元・エリートの高齢者でも「もう、払えない」…日本の家賃滞納、恐ろしい実態 (※写真はイメージです/PIXTA)

元エリートの高齢者が「家賃滞納」まで追い詰めらえる

経済的な理由で「引っ越すに引っ越せない。家賃も払えない……」そんな事態に陥ったら、どうなるのでしょうか。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会による賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』によると、2020年下半期、2ヵ月以上の家賃滞納率は1.1%。100人に1人の割合で、家賃滞納という状況に至っています。

 

家賃滞納状態になると、債権回収のプロが登場。深夜や早朝に催促の電話、玄関ドアに貼り紙、支払い義務のない人に請求、部屋の鍵を勝手に交換……違法性が高いされる家賃督促が行われる場合も。「そんなの、訴えればいい」と外野はいいがちですが、当の本人は、そんなことまで気が回らずに、ただただ怖い思いをすることに。また正当な家賃督促であっても応じることができなければ、最終的には裁判となり、建物明け渡しとなり、追い出されることになります。

 

もし家賃が払えずに滞納した場合は「大家や管理会社に支払いの意思を見せる」「親族等に借入をする」「公的融資制度を活用する」「生活困窮者自立支援制度を利用する」など、対処法が考えられます。なによりも、家賃滞納に至る前の対策を十分に講じておくことが重要です。

 

また高齢者の家賃滞納は、年金受給額や貯蓄の少ない貧困層に限ったことではありません。元エリート、とされる高齢者が家賃が払えない事態に陥るケースも珍しくないのです。

 

年を重ねるなか、収入が大きく減るタイミングは、大きく2つ。定年退職するタイミングと、仕事を辞め年金収入だけになるタイミングです。昨今は定年退職して再雇用制度を利用するなどして働き続けるケースが多いですが、そこで2~3割ほど給与は減額。大卒サラリーマンであれば、定年前に平均1,000万円近くの年収がありますが、それが500万~600万円程度になります。

 

さらに仕事を辞めて年金生活に入ると、さらに収入は半分以下に。収入が下がるタイミングで、生活費のダウンサイズをしていく必要がありますが、一度あげた生活水準は下げるのが難しく、現役時代の感覚のまま年金生活に突入する高齢者は意外と多いといわれています。

 

現役時代の収入であれば払うことのできた家賃も、年金収入だけになると大きな負担に。貯蓄を取り崩して対応していたが、先がみえてきたので引越しを検討、しかし時すでに遅し。審査に落ちてばかりで、引っ越したくても引っ越せない……元エリートでさえ、そんな負のスパイラルに陥ってしまうわけです。

 

高齢化が進めば、不動産会社も高齢者を相手にせざるを得ないから心配などしなくてもいい……そんな主張もありますが、そうなるという確証はありません。賃貸派であれば「年金だけでも安心して住み続けられる住まい」をしっかりと思い浮かべ、早めに行動に移しておくことが重要です。