1. クーリング・オフ制度とは
まずは、そもそもクーリング・オフ制度とは何かについて解説します。
クーリング・オフ制度とは、契約の申し込みまたは契約の締結を終えた場合でも、一定期間内であれば契約を解除できる制度のことです。
本来、一度契約したものは自己都合による解約は認められません。しかし、街中で声を掛けられてその場で契約してしまったり、突然訪問してきたセールスマンの営業によって契約したりしてしまった場合、正確な知識や情報量がない状態で契約してしまったために、不利な契約をさせられることがあります。
このような事態から消費者を守るために、契約後に冷静になって考え直す時間を設けることを目的に作られたのがクーリング・オフ制度です。クーリング・オフ制度は特定商取引法により、適用される取引や期間が明確に定められています。
特定商取引法の類型についてさらに詳しく見ていきましょう。
1.1. 特定商取引法の類型
特定商取引法とは、事業者による悪質な勧誘や違法行為から消費者を守るための法律のことです。クーリング・オフ制度はすべての契約に適用されるわけではなく、取引によって適用できる期間も異なります。
そこでここからは、クーリング・オフ制度を適用できる制度と、それぞれの適用可能期間を紹介します。
① 訪問販売
まず一つ目は訪問販売です。訪問販売とは、その名の通り事業者が消費者の自宅を訪問し、商品やサービスを説明して契約する取引のことを指します。
訪問販売によって契約した取引は、法律で定められている書類を受け取った日から数えて8日以内に限り、クーリング・オフが認められます。注意点として、契約の申込や締結した日からではなく、書類を受け取った日から起算します。
また、書類を受け取った日から8日以上が過ぎていた場合でも、クーリング・オフに関して事業者が事実と異なることを告げた場合や、消費者の誤認及び困惑によってクーリング・オフしなかった場合に限り、クーリング・オフが認められます。
② 通信販売
通信販売とは、消費者が新聞やインターネットなどの広告から商品やサービスを購入し、郵便や電話などの通信手段を用いて申込する取引のことです。
通信販売でクーリング・オフが適用できるのは、商品を受け取った日から数えて8日以内です。ただし、返品にかかる送料は消費者が負担しなければなりません。
③ 電話勧誘販売
電話勧誘販売とは、事業者が電話で勧誘して申込を受ける取引のことです。電話で勧誘していれば、電話を切ったあとに申込を受けた場合も電話勧誘販売に該当します。
電話勧誘販売でクーリング・オフが認められるのは、消費者が法律で定められている書類を受け取った日から数えて8日以内です。
ただし、8日を超えていてもクーリング・オフに関して事業者が事実と異なることを告げた場合や、消費者の誤認及び困惑によってクーリング・オフしなかった場合に限り、クーリング・オフが認められます。
④ 連鎖販売取引
連鎖販売取引とは、販売組織を連鎖的に拡大して商品やサービスを販売する取引のことです。たとえば、1人を販売員として勧誘したあと、勧誘した販売員がさらに次の販売員を勧誘するという形で連鎖的に拡大させる取引のことを指します。
連鎖販売取引でクーリング・オフが認められるのは、消費者が法律で定められている書類を受け取った日から数えて20日以内です。連鎖販売取引では、書面または電磁的記録によってクーリング・オフを行います。
また、20日を超えていた場合でもクーリング・オフに関して事業者が事実と異なることを告げた場合や、消費者の誤認及び困惑によってクーリング・オフしなかった場合に限り、クーリング・オフが認められます。
⑤ 特定継続的役務提供
特定継続的役務提供とは、継続的に役務を提供して高額の対価を受け取る取引のことです。具体的には、エステティック・美容医療・パソコン教室・語学教室・家庭教師・学習塾・結婚相手紹介サービスが該当します。
特定継続的役務提供でクーリング・オフが適用できるのは、消費者が法律で定められている書類を受け取った日から数えて8日以内です。連鎖販売取引同様、書面または電磁的記録によってクーリング・オフを行います。
また、8日を超えていた場合でもクーリング・オフに関して事業者が事実と異なることを告げた場合や、消費者の誤認及び困惑によってクーリング・オフしなかった場合に限り、クーリング・オフが認められます。
⑥ 業務提供誘引販売取引
業務提供誘引販売取引とは、仕事に必要であるといった口実で消費者を勧誘し、商品やサービスを売って金銭的負担を負わせる取引のことです。具体的には、在宅でのホームページ制作業務やモニター業務などが該当します。
業務提供誘引販売取引でクーリング・オフが認められるのは、消費者が法律で定められている書類を受け取った日から数えて20日以内で、書面または電磁的記録によって行われます。
ただし、20日を超えていてもクーリング・オフに関して事業者が事実と異なることを告げた場合や、消費者の誤認及び困惑によってクーリング・オフしなかった場合に限り、クーリング・オフが認められます。
⑦ 訪問購入
訪問購入とは、事業者が消費者の自宅に訪問して物品を購入する取引のことです。
訪問購入でクーリング・オフが認められるのは、消費者が法律で定められている書類を受け取った日から数えて8日以内で、書面または電磁的記録によって行われます。
ただし、8日を超えていてもクーリング・オフに関して事業者が事実と異なることを告げた場合や、消費者の誤認及び困惑によってクーリング・オフしなかった場合に限り、クーリング・オフが認められます。
2. 不動産クラウドファンディングではクーリング・オフ制度が適用されるのか?
結論からお伝えすると、不動産クラウドファンディングにもクーリング・オフ制度が適用されます。なぜなら、不動産クラウドファンディングは、「通販販売」に該当するためです。
特定商取引法における不動産クラウドファンディングの表記を詳しく見てみましょう。
2.1. 特定商取引法に基づく表記
不動産クラウドファンディングは特定商取引法が適用されるため、特定商取引法による明確なルールが設けられています。それは、不動産クラウドファンディング事業者の出資者に対する広告表記義務です。
表記が義務付けられているのは、起案者名と住所または販売事業者名と住所、電話番号、リターンの販売価格、送料、支援金の支払時期や支払方法、リターンの引渡時期です。
この表記がない事業者は、特定商取引法に基づいた義務を果たしておらず、健全とは言えません。出資後のトラブルを避けるためにも、広告表記義務を果たしていない事業者への出資を避けましょう。
3. 不動産クラウドファンディングを途中解約した際のメリット
不動産クラウドファンディングは、ほとんどのケースで途中解約が認められません。しかし、近年不動産クラウドファンディングを提供する企業が増えていることから、なかには途中解約できる企業も出てきました。
基本的に途中解約が認められない不動産クラウドファンディングで、途中解約することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、途中解約するメリットを2つご紹介します。
3.1. 急なトラブルに対し現金化できる
1つ目のメリットは、急なトラブルが発生した際にすぐに現金化できることです。
投資は余剰資金で行うのが基本ですが、病気や事故などの急なトラブルによって多額の資金が必要になることがあります。この際、途中解約できれば投資基金をトラブルの対応に必要な資金を充てられるというメリットがあります。
3.2. 投資資金を流動的に動かせる
2つ目のメリットは、投資資金を流動的に動かせることです。
途中解約できない不動産クラウドファンディングは、投資している不動産にどのような動きがあっても期間満了まで売却できません。しかし、途中解約できれば経済変化に応じて投資資金を流動的に動かせるため、柔軟な投資が可能です。
4. 不動産クラウドファンディングを途中解約した際のデメリット
不動産クラウドファンディングを途中解約することには、メリットだけではなくデメリットもあります。それは、想定利回りが低くなりやすい点です。
なかには想定利回りが平均的な数値である商品もありますが、多くは途中解約できない商品のほうが想定利回りが高いです。そのため、多くのリターンを求めている場合は、思うような利益が上がらないデメリットがあります。
5. クーリング・オフによる契約解除が可能な不動産クラウドファンディングサイト
前述の通り、不動産クラウドファンディングはクーリング・オフ制度によって契約解除が認められます。
ここでは、クーリング・オフ制度によって契約解除が可能な不動産クラウドファンディングサイト7社を、クーリング・オフの手順とともにご紹介します。
5.1. COZUCHI(コヅチ)
まず紹介するのは、COZUCHIです。
COZUCHIは、日本トレードリサーチによる不動産クラウドファンディング満足度調査で1位になるほど人気の高い不動産クラウドファンディングサイトです。社会貢献と利益獲得をモットーにしており、最短15分から投資できます。
また、最低1万円からと少額での投資も可能なため、投資資金があまり無い方や初めて不動産投資をする方も始めやすいです。
クーリング・オフの手順
COZUCHIでは、契約成立時の書面の電子交付を受けた日から数えて8日以内であればクーリング・オフが可能です。
クーリング・オフを申し込みたい場合は、「クーリング・オフ通知書」を印刷して必要事項を記入し、ファンド運営会社に郵送してください。
5.2. 大家.com
大家.comは、株式会社グローベルスが運営しています。
ノウハウや物件選びの目利きなどを最大限に活用して空室率を下げているため、安定した収益が見込めることから人気があります。1口1万円から投資できるため、投資資金が少ない方でも始めやすいです。
クーリング・オフの手順
クーリング・オフを申し込みたい場合は、初めに大家.comのホームページ内にあるお問い合わせフォームから申請します。
そのあと郵送される書面によって通知することで、クーリング・オフが認められます。
5.3. CREAL(クリアル)
CREALは、株式会社クリアルが運営しています。
累計調達額は150億円を突破しており、2022年4月時点では元本割れ件数は0件と、十分な実績と高い安定性を誇り、安心感のあるサービスで人気を集めています。
運営会社である株式会社クリアルは上場企業で透明性の高い情報の提供しており、安心して投資できます。
クーリング・オフの手順
crealでは、契約成立時の書面の電子交付を受け取った日から起算して8日以内であればクーリング・オフが認められます。
クーリング・オフを申し込みたい場合は、crealのホームページから契約解除通知書をダウンロードして必要事項を記入し、クリアル株式会社宛に郵送してください。
5.4. 信長ファンディング
信長ファンディングは、上場企業である株式会社ウッドフレンズが運営しています。
登録や手続き、投資すべてをインターネットで完結でき、少額投資が可能なため気軽に始めやすいという特徴があります。また、地域経済の活性化をテーマに掲げているため、不動産投資を通じて地域の活性化を図りたい方にもおすすめです。
クーリング・オフの手順
電子メールで送付される契約成立時書面をダウンロードして同意した日から数えて8日以内であれば、クーリング・オフ制度が適用されます。
クーリング・オフを申し込みたい場合は、所定のクーリング・オフ通知書に必要事項を記入し、指定の送付先に郵送してください。
5.5. えんfunding
えんfundingは、株式会社えんホールディングスが運営しています。
1口1万円からの少額投資が可能で、スマホ1つで不動産投資できるため気軽に始められます。えんfundingで投資すると、不動産オーナーのような体験レポートが提供されるため、不動産投資の知識やノウハウが身につけられるのも魅力です。
クーリング・オフの手順
えんfundingが、契約成立時書面が送付された電子メールを送信した日から数えて8日以内であればクーリング・オフが認められます。
クーリング・オフを申し込みたい場合は、所定のクーリング・オフ届出書に必要事項を記入し、指定の送付先に郵送してください。
5.6. TSON(ティーソン)
TSON(ティーソン)は、上場企業である株式会社TSONが運営しています。
TSONの特徴は、不動産AIが選定した物件に投資できること。多くの情報を記憶している不動産AIが選定することで、現実性の高い投資が可能です。会員登録するとセミナーにも参加でき、不動産投資に関する知識を学べます。
クーリング・オフの手順
契約締結から数えて8日以内であればクーリング・オフが可能です。
クーリング・オフを申し込みたい場合には、書面にて申請が必要です。
5.7. FANTAS funding
FANTAS fundingは、FANTAS technology 株式会社が運営しています。
新築マンションや中古マンション、再生物件など豊富な物件の取り扱いと、キャピタル重視型やインカム重視型など複数の投資方法から、目的に合った投資が可能です。1口1万円から投資でき、投資リスクも少なくしていることから初心者でも始めやすいでしょう。
クーリング・オフの手順
電子メールにて契約成立時書面が送付された日から数えて8日以内であれば、クーリング・オフが可能です。
クーリング・オフを申し込みたい場合は、所定の書面に必要事項を記入して提出してください。
6. まとめ
多額の投資資金が必要というイメージから、興味はあるもののなかなか始められないという人も多い不動産投資。しかし、複数人の投資家で一つの不動産に投資できる不動産クラウドファンディングであれば、少ない資金で不動産投資が始められます。
不動産クラウドファンディングは通信販売に該当し、クーリング・オフ制度の対象です。万が一契約後に問題が生じた場合は、契約成立時書面を受け取った日から8日以内にクーリング・オフを申し込みましょう。