1. 堅調に人気を集める不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングは不動産を小口化し、多数の出資者から受け取った資金をもとに企業が物件を運用する仕組みです。運用によって得た収益を配当としています。
少額から始められ、不動産投資初心者の方に人気のある投資手段です。募集する金額に対して数倍の出資申し込みがあり、需要に供給が追いついていない現状です。
専門的な知識はないが、不動産投資で資産形成を始めたい方を中心に注目が集まっています。
2. 不動産クラウドファンディングの仕組み
出資者から募った資金を元手として、企業が不動産を購入します。設定されている運用期間中の賃貸収入と売却益を分配金として、出資者に配当する仕組みです。
利回りは3~5%程度です。売却する際に元本割れのリスクはありますが、企業側が先にある程度のリスクを負う仕組みが整えられています。
小口化された商品で1口1万円から始められるため手軽に取り組めます。物件の所在地が公開されており、築年数や管理情報などもインターネット上で確認可能です。
3. 不動産クラウドファンディングと他の不動産投資の違い
不動産クラウドファンディングは、他の不動産投資と具体的に何が違うのでしょうか?
それぞれ特性が異なっており、理解したうえで最適な手段を選びましょう。比較しながら違いを解説します。
少額で不動産投資を始めたい方は、不動産クラウドファンディングをおすすめします。
3.1. 現物不動産投資と不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングは、運用を企業に任せられる一方で、現物不動産投資は不動産の取得から運営、売買までをする必要があります。個人でも行えるという点でも違いがあります。
現物不動産投資にかかる予算は、数百万円~数千万円です。銀行から融資を受けられますが、事業計画書の作成が必要です。
資金の少ない方や不動産投資の経験がない方にはおすすめできず、リスクを負う必要のある投資といえます。
3.2. REITと不動産クラウドファンディング
REITとは、不動産投資信託のことです。証券会社を通じて出資者から資金を募り、不動産の購入と運営をします。得られた利益が分配金として受け取れます。
不動産クラウドファンディングは運用中の譲渡が難しい一方で、REITは価格の変動を見ながら売買することで現金化できます。
REITは、発行している企業が決めた複数の不動産に投資をします。出資者側は投資先を決められません。
3.3. ソーシャルレンディングと不動産クラウドファンディング
ソーシャルレンディングは、融資型(貸付型)のクラウドファンディングと呼ばれます。
企業が不特定多数の方から出資を募る点で同じである一方、企画をする企業の立場が異なる点で不動産クラウドファンディングとは異なります。
不動産クラウドファンディングは出資を募る会社と運用会社が同じです。ソーシャルレンディングは出資を募りますが、運用は別の企業が行います。
不動産クラウドファンディングが持つ、出資者の利益を守る仕組みである優先劣後構造も、ソーシャルレンディングではありません。
3.4. 不動産小口化商品と不動産クラウドファンディング
不動産小口化商品は、不動産を小口化して投資商品として販売します。1口数万円〜数百万円単位に小口化された商品を投資家が購入し、その口数に応じて賃料収入や売却益などを分配する仕組みです。
出資案件を選べる点と、一つの物件を共同出資して保有する点で不動産小口化商品と不動産クラウドファンディングは同じです。
その一方で、不動産小口化商品のなかには、節税対策ができるものがある点と、出資の最低金額は不動産クラウドファンディングのほうが低い点に違いがあります。
4. 不動産クラウドファンディングが人気を集める理由
不動産クラウドファンディングが人気を集めている理由は、少ない資金で始められるうえ、多くのリスク回避をする選択肢があるためです。その詳細について解説します。
4.1. 1口1万円から不動産投資に挑戦できる
従来の不動産投資の場合、数百万円〜数千万円の自己資金を用意する必要がありました。しかし不動産クラウドファンディングは、ほとんどのファンドで1口1万円からの出資を募っています。
そのため、銀行からの融資を受けずに不動産投資を始められます。少ない資金で不動産投資を始めたい方におすすめです。
4.2. 少額ながら他の不動産投資手法に近い利回り
他の不動産投資手法と比較しても、不動産クラウドファンディングはほぼ同様の利回りです。比較してみましょう。
投資方法 |
平均利回り |
不動産クラウドファンディング |
4〜7% |
現物不動産 |
5〜8% |
ソーシャルレンディング |
5〜7% |
REIT |
3〜4% |
平均利回りだけを見ると現物不動産のほうが高い利回りを見込めますが、現物不動産は数百万円〜数千万円の資金を必要とします。
一方で、不動産クラウドファンディングは少額から始められ、平均利回りも他と比べてほぼ同様です。その点で人気のある投資手段として注目されています。
4.3. 優先劣後出資方式によるリスク軽減
不動産クラウドファンディングには、優先劣後出資方式と呼ばれる出資者のリスクを軽減してくれる仕組みがあり、リスクを軽減して出資できます。
特定の不動産に出資者だけではなく企画会社も出資しており、元本割れが起こった際には企画会社の出資金から優先的に損失分を補填する仕組みです。それでも損失を補填できない場合に、募った出資金を使います。
出資の割合はファンドによって異なっており、出資の際には情報をとっておくことをおすすめします。
4.4. 好みの物件に複数投資できる
現物不動産投資であれば、自分で投資先を見つけることが必要です。しかし不動産クラウドファンディングの場合、企業が厳選した物件から好みの物件に投資が可能です。
また少額から投資可能であり、複数の物件に投資できる点でも人気があります。複数の物件に投資することでリスクを分散して資産運用できます。
不動産クラウドファンディングに投資をしながら、別の不動産にも投資ができることもメリットです。
4.5. 不動産を管理する必要がない
不動産の運用や管理はファンドを企画する会社が行うため、出資をすることに集中できます。その点で現物不動産投資に比べて手間がかからず、時間を有効活用できます。
一方、現物不動産投資は物件の売買や賃貸の管理をする際に書類上で契約を結ぶ必要があり、事務作業が必要です。入居者を募ったり、家賃を回収したりすることは委託可能である一方、不動産を所有するオーナーとして判断をする場合もあります。
不動産クラウドファンディングの場合、インターネット上で手続きを完了でき、事務作業の手間はほとんどありません。投資後は、分配金や元本が入金されることを待つのみです。
4.6. 地方創生など社会貢献につながる
不動産クラウドファンディングは、社会貢献にもつながります。
地方の担保価値が低い土地では、リフォームを行うだけの金額を十分に借り入れできない場合がありました。借り入れる代わりの手段として、不動産クラウドファンディングが一役買います。老朽化したホテルや商店街の店舗がリフォームによって再生され、雇用の創出や地方創生に寄与可能です。
また、保育園のファンドに投資して新しい保育園が立ち上がることで、待機児童の解消につながります。投資家の支援によって地方の活性化に影響を与えられます。
4.7. 投資対象のバリエーションが豊富
投資対象のバリエーションが豊富にある点でも、不動産クラウドファンディングは人気があります。
マンションや一軒家などの居住用不動産や、宿泊施設、託児所、ロケット工場などさまざまな投資先があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。
居住用不動産は安定した家賃収入を見込みやすい一方で、高い利回りを求めることが困難です。宿泊施設は景気次第で大きな需要があり、高い収益が期待できます。しかし、景気が悪化して需要が低下すると収益も大きく低下するリスクがあります。
4.8. 価格変動を気にする必要がない
REITであれば、値動きが収益に大きな影響を与えます。そのため、市場の変化に敏感になる必要があり、市場を分析する力も求められます。
一方、不動産クラウドファンディングは、市場の変化に価格が左右されにくいことが特徴です。出資をすれば、安定した収益が期待できることは大きなメリットです。
4.9. スマートフォンで完結できる
現物不動産の場合、事務処理や物件管理などの作業が必要です。
一方で不動産クラウドファンディングは、スマートフォンだけでも手軽に投資が可能です。案件の募集時期に合わせて申込みをするだけで、素早く投資できます。申込みから分配金の受け取り、元本の償還がスマートフォンで完結できることはメリットです。
5. 知っておきたい不動産クラウドファンディングのリスク
不動産クラウドファンディングのリスクについても知っておきましょう。
5.1. 事業者が倒産するリスクがある
不動産クラウドファンディングは、企画する企業が不動産の運用を行います。そのため、不動産の名義は「運営事業者」になります。そのため、運営事業者が倒産した場合、不動産は破産管財人の管轄に移行され、出資者に還元されるかどうかは保証されません。
投資先を決める際、運営事業者の安定性や信頼性を確認しておくとリスクを回避できるでしょう。
5.2. 元本は保証されていない
優先劣後出資方式により出資金がある程度守られますが、元本を保証するものではありません。
不動産価格の暴落や家賃収入の減少、不動産の倒壊などで収益が確保できない場合、元本割れのリスクが生じます。運営会社の倒産や債務不履行が起きた場合も同様です。
リスク軽減の仕組みや不動産、それを運営する会社の状態を確認したうえでファンドを選びましょう。
5.3. 大きなリターンは期待できない
不動産クラウドファンディングは、ローリスク・ローリターンの投資と言われています。少額から投資できる一方で、元本が倍額以上になるような大きなリターンは期待できません。
複利的な運用として配当金を再投資したり、さまざまなファンドに分散して投資したりすることで利益を増やすことは可能です。しかし、それらの投資で得られる収益には限りがあります。
ただし、コツコツと着実なリターンをあげられればよい、という方にはおすすめです。
5.4. 途中解約できる事業者が少ない
不動産クラウドファンディングの場合、一度出資をすると運用が完了するまで資金は返金されないことがほとんどです。多くの事業者では、途中解約ができません。
途中解約できる事業者はありますが、そのファンドでは利回りが他と比べて低い傾向があります。
解約をする場合、返金があるタイミングも確認しておくことをおすすめします。申し込んだ月の翌月に返金されることもあります。
5.5. 節税効果は期待できない
不動産クラウドファンディングでは、匿名組合契約である場合、節税効果がありません。物件を直接所有していないためです。
節税効果を期待するためには物件を所有する必要があり、現物不動産ではそれが可能です。しかし、不動産投資をするうえでの副産物のような認識をしておくほうがよいでしょう。
5.6. 申し込みの競争率が高い
不特定多数から出資を募るため、魅力的な物件が多く、高い競争率が見込まれます。ファンドによって先着式か抽選式なのかが異なり、抽選式では申込みをしたとしても当選するかどうかはわかりません。
競争率が高いため、ファンドに出資できない可能性もあることを考慮しておきましょう。
6. 不動産クラウドファンディングで利益を受け取るまでの流れ
ここでは、不動産クラウドファンディングに登録してから利益を受け取るまでの流れを解説します。
6.1. 不動産クラウドファンディング事業者を決めて登録をする
多くの企業が不動産クラウドファンディングに参入しており、ファンドの案件もさまざまであることは前述した通りです。さまざまなサイトのファンドを見ながら、気になるファンドを提供する事業者のサービスに利用登録をしましょう。
ファンドだけではなく、信頼できる事業者なのか、取り扱っている案件数やファンドで開示されている情報はどのようなものなのかを確認したうえで登録することをおすすめします。
利用登録には個人情報の入力のほか、本人確認書類を提出する必要があります。また、オンラインでも完結します。
6.2. 投資対象を決める
登録を終えたあとは、いよいよ投資対象を決めます。最低投資額や運用期間、利回り、取り入れている仕組みなどを確認したうえで、総合的に判断して決めましょう。
6.3. 利益を受け取る
申込みが完了したあとは、運用はファンドを企画する会社が行います。分配金を受け取れる回数とタイミングは案件によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
分配金の受け取り方には、次のつの方法があります。
- デポジット口座への入金
- 入出金口座への入金
デポジット口座へ入金される場合、銀行口座に出金をする手続きが別途必要です。その際、出金手数料を支払う場合があります。入出金口座へ入金がある場合は手数料はかかりません。
どちらの場合であっても、入金の際には登録しているメールアドレスに通知が届きます。
7. 人気が高まる不動産クラウドファンディング
この記事では、不動産クラウドファンディングに人気が集まっている理由と、知っておきたいリスク、投資の流れを解説しました。
少額で始められ、低リスクで不動産投資を始められます。選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。