「不動産投資」と聞くと、難しくて危険だと思う方もいるはずです。1994年に「不動産特定共同事業法」が施行されたことで、2000年代からさまざまな不動産投資サービスが展開されています。1994年以前からある「賃貸マンションを自ら購入・運用・管理する」といった方法の他に、初心者の方や20代からでも始めやすい不動産投資方法が数多くあります。そこで本記事では、20代から始められる「不動産小口化商品」について紹介します。
20代から少額で投資できる不動産小口化商品|基礎知識と選び方 (※画像はイメージです/PIXTA)
1. 20代から不動産投資をスタートするメリット
1.1. リターン期間が長期化する
1.2. 長期的な資産形成が見込める
1.3. 本業の妨げにならない
1.4. 実物資産を持てる
2. 20代におすすめの不動産小口化商品とは
2.1. 社会に貢献できる不動産投資
3. 不動産小口化商品は3種類
3.1. 匿名組合型
3.2. 任意組合型
3.3. 賃貸型
4. 不動産小口化商品の対象物件
5. 不動産小口化商品の選び方
5.1. 不動産小口化商品の立地条件
5.2. 物件の築年数
5.3. 不動産小口化商品により期待できる節税効果
5.4. 不動産小口化商品の利回り
5.5. 不動産小口化商品に対する分配金の支払い回数
5.6. 信頼できる不動産小口化商品取扱い事業者の選定
6. 不動産小口化商品の購入にかかる費用
6.1. 手数料と登記費用
7. 運用期間が終了したあとは?
8. まとめ

1. 20代から不動産投資をスタートするメリット

(※画像はイメージです/PIXTA)
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20代から不動産投資をスタートする主なメリット4つをご紹介します。また、ある程度貯蓄を増やして始める40〜50代からの投資とは、どのように違うのかもあわせてご説明します。

 

1.1. リターン期間が長期化する

20代の早いうちから不動産投資を始めることで、リターン期間が長期化し、生涯を通してより多くの配当金が受け取れるというメリットがあります。

 

一般的な不動産投資は、主に家賃収入から利益を得ます。不動産投資期間で比較すると、20代から運用している場合は、40〜50代からの運用よりも受け取った配当金が多くなる傾向にあります。

 

さらに、20代から不動産投資をスタートさせることで、長期にわたる投資実績を積むことができます。

 

1.2. 長期的な資産形成が見込める

20代から不動産投資を始めることで、長期間での資産形成が見込めます。

 

たとえば、20代で運用資金が少なく、ローンを組んで不動産投資をしたとしても、心身ともに健康で収入がある程度安定していれば、着実にローンを完済できるでしょう。このように、20代から不動産投資を始めることで、早ければ50代ごろの定年退職前にはローンを完済できるかもしれません。

 

また、ローン完済後に受け取った家賃収入や配当金は老後資金として準備しておけるため、退職後でも生活資金に余裕が持てるようになります。

 

1.3. 本業の妨げにならない

不動産投資は、株式のデイトレードやFXのように常に価格を見ておく必要がないため、本業の妨げになりません。不動産の運営を管理会社に委託すれば、不動産運用が楽に行えます。

 

しかし、不動産の購入前には、物件のリサーチや不動産会社の条件比較を十分に行いましょう。この段階でしっかりと時間を費やすようにし、きちんと条件を見極めたうえで商品を購入してください。

 

1.4. 実物資産を持てる

不動産を購入することで、実物資産を所有できるというメリットがあります。

 

実物資産は、株や債権などの金融資産とは異なり、経済状況や会社の不祥事などで影響を受けることがほとんどありません。2020年以降の新型コロナウイルスによる影響は、住宅用の不動産にはほとんどなかったと言われているほどです。

 

さらに、実物資産は相続財産の対象となります。そのため、不動産所有者が他界されたあとでも、正式な相続手続きを済ませることで、運用を続けられます。

2. 20代におすすめの不動産小口化商品とは

(※画像はイメージです/PIXTA)
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不動産小口化商品とは、高額な購入金額の不動産を1口数万円〜100万円程度に小口化した商品を指します。この不動産小口化商品は、不動産特定共同事業法に基づき国土交通省または都道府県知事に許可された事業者のみが取り扱うことができます。

 

■不動産小口化商品の構造

 

元手となる運用資金が少ない20代の方でも、小口化商品であれば数万円で購入でき、不動産の資産運用を実現できるのです。

 

2.1. 社会に貢献できる不動産投資

不動産小口化商品のなかには、購入することで社会貢献できる商品があります。

 

たとえば、地方都市における空家増加問題を解決することに役立つ商品です。現在、都市部に住宅需要が集約されているため、地方都市では空き家の増加が問題となっています。

 

この問題を解決するために、「空き家を再生した宿泊施設」や「古民家をリノベーションした物件」などを不動産小口化商品にしている事業者があります。

 

出資者がそのような商品を購入することで、地方都市の地域活性化につながり、社会貢献ができるのです。

3. 不動産小口化商品は3種類

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産小口化商品は3種類あります。それぞれの概要を説明します。

 

3.1. 匿名組合型

事業者と出資者が「匿名組合型契約」を結ぶ商品です。事業者は、出資者から集めた資金を元に不動産を運営・管理します。出資者は、その不動産運営で得た利益を配当金として受け取ります。

 

また、「優先劣後構造」は匿名組合型契約で見られる仕組みです。

 

3.1.1. 匿名組合型の優先劣後構造とは

出資者を優先出資、事業者を劣後出資と定めて、利益を分配する仕組みです。万が一不動産の価格が下落しても、この仕組みがあれば出資者への利益が優先されます。

 

さらに、出資者にとってのメリットとして、元本割れリスクが少なくなることが挙げられます。その反面、デメリットとして、不動産価格が高騰しても配当金は上がらない可能性があることが挙げられます。

 

3.2. 任意組合型

事業者と出資者が「任意組合型契約」を結ぶ商品です。事業者は一括して、不動産の購入・管理・運営を行います。出資者は、その不動産運営で得た利益を配当金として受け取ります。

 

また、この任意組合型の商品では相続税の節税が見込めます。

 

3.3. 賃貸型

複数の出資者が資金を出し合い、不動産を購入します。購入した不動産を元に、事業者と出資者が「賃貸借契約」を結ぶ商品が賃貸型の不動産小口化商品です。

 

出資者は、不動産運営で得た利益を配当金として受け取ります。ただし、現状において、賃貸型の不動産小口化商品に該当する物件は、数多く出回っていません。

4. 不動産小口化商品の対象物件

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産小口化商品の対象物件におけるメリットとデメリットは、以下のとおりです。

 

種類

メリット

デメリット

住居

安定した家賃収入が見込める。

高い利回りは期待できない。

商業施設

経済状況・地域・時期によって、高い利回りが見込める。

経済状況・地域・時期によって、不動産価格が下落しやすいため、空室率が変動しやすい。

事務所

都心のオフィスビルやマンションでは、空室率が低い。

商業施設ほどではないが、経済状況・地域・時期によって、不動産価格が下落しやすい。

 

このように安定した運用をされたい方には住居、やや高いリターンを期待される方には商業施設がおすすめです。ちなみに、事務所は住宅と商業施設の中間的な存在として位置しています。

5. 不動産小口化商品の選び方

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

実際に不動産小口化商品は、次の6つを基準に選びましょう。

 

  1. 立地条件
  2. 物件の築年数
  3. 期待できる節税効果
  4. 利回り
  5. 分配金の支払い回数
  6. 不動産小口化商品取扱い事業者への信頼性

 

5.1. 不動産小口化商品の立地条件

購入する商品を選ぶ際には、その物件に関するさまざまな情報を集める必要があります。少額で購入する商品であっても、入念な情報収集のもと選択しなくてはリスクが高くなります。

 

不動産小口化商品を購入する際には、以下のような物件情報を収集し、立地条件の優良性を吟味しておきましょう。

 

  • 物件が立地する地域の人口推移
  • 最寄り駅の利用者数
  • 人が集まるような商業施設や学校、企業などの有無

 

5.2. 物件の築年数

物件の築年数によっては、耐震性が不安視されることがあります。不動産小口化商品を選ぶ際には、建物の耐震性が十分にあるかどうかを基準の一つに入れておきましょう。

 

1981年(昭和56年)以降の建物では、新耐震基準(震度6程度)をもとに建設することが定められています。しかし、1981年以前に建てられたほとんどの物件は、旧耐震基準を元に建設されています。そのため、建築後に耐震補強工事やリフォームが行われたかを確認する必要があります。

 

5.3. 不動産小口化商品により期待できる節税効果

任意組合型の不動産小口化商品は、相続税の節税が見込めます。

 

「評価圧縮率」とは、購入した不動産の資産価値よりも、相続税評価額がどの程度減額するかを示した数値のことです。この評価圧縮率が高いほど相続税評価額が下がり、相続税も下がるため節税効果が期待できます。

 

任意組合型の不動産小口化商品を購入する際は、どの程度の相続税に対する節税効果が見込めるのか事前に確認しておきましょう。

 

5.4. 不動産小口化商品の利回り

商品の選定には、物件利回りの確認が欠かせません。以下で、実質利回りと表面利回りの違いなどについて詳しく解説します。

 

5.4.1. 実質利回りと表面利回りの違い

商品の購入金額に対して、利益がいくら得られるか算出したものを「表面利回り」といいます。また、購入商品に対して、家賃収入をいくら得られるか算出したものが「実質利回り」です。

 

  • 表面利回り=年間家賃収入÷税込物件価格×100
  • 実質利回り=(年間家賃収入-年間コスト)÷(税込物件価格÷購入時コスト)


計算式で使用される「年間家賃収入」は、1ヵ月分の家賃をもとに12ヵ月分を算出しましょう。「年間コスト」は、年間家賃収入の約30%と見込んで割り出します。「購入時コスト」は、不動産物件の購入に付随する登録免許税や不動産取得税、印紙税や仲介手数料などを指します。

 

5.5. 不動産小口化商品に対する分配金の支払い回数

購入する商品によって、分配金の支払い回数が異なります。年1、2回程度の支払い頻度の商品が多い傾向にありますが、年6回や年12回(毎月)といった支払い頻度の商品もあります。

 

支払い回数が多いことはメリットとなりますが、支払い回数が多い商品は少ない傾向にあります。そのため、支払い回数が少ない商品のほうが希望する商品を探しやすいといえます。

 

5.6. 信頼できる不動産小口化商品取扱い事業者の選定

信頼できる事業者を選ぶには、国土交通省のホームページで公表されている「国土交通省や都道府県知事の許可を受けている事業者」に該当する事業者を選ぶことをおすすめします。

 

他にも、事業者の運用実績や、経営状態の良し悪しを見極め、商品選択の基準としましょう。

6. 不動産小口化商品の購入にかかる費用

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

実際に不動産小口化商品を購入する際にかかる費用の種類や目安を解説します。

 

6.1. 手数料と登記費用

不動産小口化商品の購入にかかる費用は、基本的に購入時の手数料や契約時の初期費用、売却時の費用などです。ただし、選択する商品によってかかってくる費用が異なります。

 

匿名組合型契約の商品は、実物資産として所有しないため、不動産登記の必要はありません。受け取る配当金は「雑所得」と定義され、購入資金以外の費用が特別にかかることはほとんどありません。

 

6.1.1. 任意組合型にかかる費用

匿名組合型契約の商品とは異なり、任意組合型契約の商品は、実物資産として不動産登記をしなければなりません。そのため、登記に関する費用が必要です。

 

購入資金以外に、別途必要な費用は以下の通りです。

 

  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 司法書士手数料
  • 生前贈与手数料

 

7. 運用期間が終了したあとは?

(※画像はイメージです/PIXTA)
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不動産の運用期間終了後、運用していた不動産の売却益を投資家に分配することがあります。一般的に、受取対象となる商品には、以下のようなものがあります。

 

  • 優先劣後構造を採用していない匿名組合型契約の商品
  • 任意組合型契約の商品

 

8. まとめ

(※画像はイメージです/PIXTA)
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不動産投資を成功させるには、知識と自分に適した投資基準を持つことが重要です。やみくもに商品購入をせず、投資について学び、実績を積み重ねながら「自分に適した基準」を持ちましょう。

 

20代のうちに資産形成を開始することで、資金形成に必要な経験や知識が身につくでしょう。そのなかでも、不動産小口化商品は、少額で投資を始めることができるので、検討してみてはいかがでしょうか。