1. 少額から可能な不動産投資方法とは
不動産投資には複数の種類があり、そのなかには少額から投資できる「少額不動産投資」と呼ばれるものがあります。少額不動産投資として代表的なものとして、以下の4つが挙げられます。
- 区分マンションの所有
- J-REIT
- 不動産クラウドファンディング
- 不動産小口化商品
不動産の購入・運用費用を全額自己負担すると、多額の費用が必要となります。また、費用の額に応じてリスクも大きくなります。その点、少額不動産投資であればリスクを少なくできるため、不動産初心者の方にもおすすめです。
不動産投資に興味はあるものの、投資費用の捻出やリスクが懸念材料となり躊躇されている方こそ、少額不動産投資を検討してみましょう。
1.1. 少額で不動産投資するメリット
少額で不動産投資をする大きなメリットは、初心者でも手軽に始められる点です。なぜなら、少額不動産投資は1口単位で購入でき、1口数万円という少額で設定されているためです。
一般的に不動産物件を購入する場合には、施工や取得に多額の費用がかかるため、ローンを組まなければなりません。しかし、少額不動産投資であれば1口単位で不動産を購入でき、住宅ローンを組む必要がありません。
また、実質的な不動産オーナーには該当しないため、物件管理をする必要がないとのようなメリットもあります。実際に不動産の運用をするためには、さまざまな知識を身につけなければなりません。不動産運用についてゼロから知識を得るには時間がかかり、そのうえ運用と管理には手間がかかります。
一方、少額不動産投資においては、そのような物件管理・運用の手間が省け、さらに少ない資金から不動産投資が可能です。
2. 少額から可能な不動産投資方法4つ
前述のとおり、少額不動産投資を主な投資方法に、次の4種類があります。
■少額不動産投資方法の比較表
種類 |
利回り |
最低投資額 |
区分マンションの所有 |
平均15〜20% |
450,000円〜 |
J-REIT |
平均4% |
20,000円〜 |
不動産クラウドファンディング |
平均4〜6% |
数万円〜 |
不動産小口化商品 |
平均3〜4% |
10,000円〜 |
それぞれの投資方法における特徴・メリット・デメリットを解説します。
2.1. J-REIT
REIT(不動産投資信託)とは、複数の投資家から資金を集め、集まった資金でプロが物件を購入・運用し、そこから得られた収益を投資額に応じて投資家に分配する不動産投資システムのことです。
REITは海外REITとJ-REITに分かれており、J-REITは日本独自のシステムを持つREITです。それでは、J-REITの利回り・メリット・デメリットを見ていきましょう。
2.1.1. J-REITの利回り
REITは値動きが激しいことから、平均利回りを算出しにくいという特徴があります。参考として、2021年時点のJ-REIT平均利回りを調べると、約4%でした(参考:JAPAN REIT『利回り一覧』)。
この利回り4%を例にとり、10万円を投資して1年後に売却したと仮定すると、4,000円の利益が出るという結果が算出されます。
しかしながら、平均利回り4%は2021年の数値であるため、値動きがあるJ-REITでは、売却時期によって大きく利益額が異なります。常に値動きの動向を確認し、適正な時期に売却を決断してください。
2.1.2. J-REITのメリット
J-REITは、不動産運用を不動産会社に任せられます。そのため、不動産運用のために知識を身につける必要がなく、運用に割く時間や手間が省けます。
特に不動産投資が初めての方は、上手く運用できるかといった不安のはずです。しかし、プロに運用を任せられるため、初心者にも始めやすいことがJ-REITの特徴です。
また、最低2万円から投資できることもJ-REITのメリットです。不動産購入時に全額自己負担すると、コスト面においてかなり負担です。しかし、J-REITは1つの不動産を複数の投資家による投資総額で購入します。そのため、少額からでも不動産投資を始めることが可能です。
2.1.3. J-REITのデメリット
少額から投資できて運用をプロに任せられるJ-REIT。しかし、投資にリスクはつきものです。
J-REITには元本割れのリスクがあります。元本割れとは、不動産価格が投資額を下回ること。万が一投資した不動産が元本割れした場合、損失は投資家が負担しなければなりません。プロに任せたからといって、必ず利益が出るわけではありません。
また、値動きが安定しない点もJ-REITのデメリットです。特に、不動産投資が初めての方は値動きが読めないため、値動きが安定しないJ-REITは難しく挫折してしまうケースもあります。
そのため、自分で不動産の運用をしたいとお考えの方には、J-REITは向いていないといえます。なぜなら、前述の通りJ-REITは運用を不動産会社に委託するシステムのためです。不動産を自分で運用したい方は、J-REIT以外の投資方法を検討してください。
2.2. 不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングとは、2019年に新たにガイドラインが定められた投資方法です。
インターネット上で投資家を募るクラウドファンディングによって集めた資金で1つの不動産を購入し、そこから出た収益を投資額に応じて分配するシステムです。複数人の投資家で1つの不動産に投資するため、少額からの投資が可能です。
不動産クラウドファンディングは、不動産クラウドファンディングを行う事業者を選ぶことから始まります。企業によって、利回りや取扱い物件が異なるため、自分の条件に合った企業を比較・検討してください。そして、企業が決定した際は会員登録を行い、投資物件を選びます。そのあとは、サイトの規定に従い、手続きを完了させましょう。
2.2.1. 不動産クラウドファンディングの利回り
不動産クラウドファンディングは、J-REITに比べ高い利回りが期待できるという特徴があります。投資する不動産物件によりますが、6〜8%が利回りの相場として挙げられ、物件によっては10%を超えることもあります。
不動産クラウドファンディングで人気のある企業COZUCHIを例に挙げてみると、想定利回りは4.5%〜10%という結果でした。
2.2.2. 不動産クラウドファンディングのメリット
まず、不動産クラウドファンディングには1口1万円から投資できるというメリットがあります。クラウド上で不動産ファンディング(投資額)を集めるため、投資に興味がある人が気軽に始めやすいシステムです。
また、短期間の運用ができる点もメリットです。不動産クラウドファンディングは、短期間の投資がメインです。そのため、資産が少ない場合でも期間を決めて運用でき、リスクを最小限に抑えられます。
2.2.3. 不動産クラウドファンディングのデメリット
まず、不動産クラウドファンディングにも元本割れのリスクがあります。元本割れが発生した際は、投資家が負担しなければなりません。
また、投資額に上限がある点もデメリットです。特に人気物件は投資額に上限が設けられていることが多く、投資額を自由に決められません。
さらに、契約期間中は原則として売却できないというデメリットもあります。つまり、運用中の物件価格が高騰しても途中で現金化できず、契約金終了時の収益を待たなければならないのです。
このように、不動産クラウドファンディングは少額から始められるものの、投資額に上限があったり、途中で解約できなかったりといった自由度が低い不動産投資方法だといえます。
2.3. 区分マンションの所有
区分マンションの所有とは、マンションの1室を購入して運用する不動産投資のことです。マンション1棟ではなく、1室のみを購入するため、投資費用を大幅に抑えられます。
購入した1室は、賃貸に出すことで家賃収入が得られます。
2.3.1. 区分マンションの利回り
区分マンションは、空室が長期間続かない限り安定した収入が得られるため、平均利回りは高い傾向にあります。ただし、新築区分マンションか、中古区分マンションかによって平均利回りが異なります。
物件の立地場所にもよりますが、中古区分マンションの平均利回りは16%前後、新築区分マンションの平均利回りは20%以上です。
このように区分マンションは他の少額不動産投資と比較して、継続した入居者がいる場合には高い利回りが期待できます。
2.3.2. 区分マンションのメリット
まず、少額投資ができて手間が少ないというメリットがあります。マンションを1棟購入するとなると、投資費用が大幅に増えるだけではなく、全室管理しなければならないため、運用の手間がかかります。マンションの共有部分の管理などは管理会社に委託されているため、マンション全体を管理する必要がありません。
また、不労所得となる点もメリットです。なぜなら、購入したマンションの1室を賃貸に出して入居者がいれば、毎月家賃収入が得られるためです。空室期間がなければ、毎月安定した収入が得られます。
さらに、売却時に利益が出る可能性があります。購入した価格よりも高い価格で売却できた際の差額が利益となります。地価が高いタイミングで売却することをおすすめします。
2.3.3. 区分マンションのデメリット
区分マンションで安定した収益が見込めるのは、入居者がいる場合のみです。つまり、入居者がいなければ収入を得ることはできません。なるべく空室期間を作らないようにする工夫が必要です。
また、住宅ローンの完済までは高い利益が見込めないというデメリットもあります。
ローン完済前までは、家賃収入のほとんどがローンの返済に充てられることも多く、収益が見込める期間が短くなる可能性があります。
2.4. 不動産小口化商品
不動産小口化商品とは、不動産を小口に分割し、取引などを簡便化した不動産投資商品のことです。不動産投資の専門家に出資して運用を委託できるため、運用の手間がかかりません。
不動産小口化商品は、主に賃貸型・匿名組合型・任意組合型の3種類に分けられます。
種類 |
特徴 |
賃貸型 |
複数の投資家で1つの不動産を購入し、業者に不動産の管理を委託する方法 |
匿名組合型 |
投資家と不動産管理者が匿名契約を結んで出資する方法 |
任意組合型 |
複数の投資家で1つの不動産を購入し、不動産の共同所有者となり運用する方法 |
2.4.1. 不動産小口化商品の利回り
不動産小口化商品は、他の少額不動産投資よりも利回りが低く、平均利回りは3〜4%、高くても5%〜6%です。運用を業者に委託する際に手数料が発生するため、利回りが低くなる傾向にあります。
2.4.2. 不動産小口化商品のメリット
不動産小口化商品には、少額で高額物件を保有できるというメリットがあります。なぜなら、不動産小口化商品は複数人の投資家で1つの不動産を購入するシステムであるためです。
たとえば、数億円する物件であっても、複数人で分割すれば1口100万円から購入することも可能です。
また、売却時にキャピタルゲイン(売却益)が見込めるというメリットもあります。これは、不動産小口化商品によっては投資家に所有権が与えられるためです。
さらに、不動産運用を管理会社に委託できるメリットもあります。
2.4.3. 不動産小口化商品のデメリット
不動産小口化商品は、今のところ商品数自体が少ないというデメリットがあります。そのため、投資したい物件に出会えない可能性が高いです。
また、金融機関の融資が利用できない側面もあります。最低1万円から投資できますが、1口100万円の物件を購入する場合も、全額自己負担となることを把握しておきましょう。
3. 不動産小口化商品の購入方法
不動産小口化商品は賃貸型・匿名組合型・任意組合型に分けられますが、それぞれで購入方法が異なります。
3.1. 匿名組合型
投資家と管理業者が匿名契約を結ぶ匿名組合型の購入方法は以下の通りです。
- 不動産特定共同事業者を選定する
- 不動産商品を確認及び選定する
- 申込期間中に申請して応募する
- 購入できたら管理業者と匿名契約を結び、出資金を支払う
匿名組合型は、不動産小口化商品のなかで最も商品数が充実しています。そのため、比較的商品を見つけ出しやすいといえます。ただし、不動産の所有権は得られず、売却時のキャピタルゲインは見込めません。
3.2. 任意組合型
任意組合型は、匿名組合型と応募方法は概ね変わりません。ただし、匿名組合型とは異なり、不動産の所有権が取得できるため、不動産登記が必要です。
3.3. 賃貸型
賃貸型は、任意組合型と同様に不動産の所有権が得られるため不動産登記が必要です。賃貸契約を結んだうえ、不動産登記を忘れずに行いましょう。ただし、現時点では賃貸型の不動産小口化商品数はごくわずかです。
4. まとめ
不動産投資を始めるには、多額の投資費用が必要であるという固定概念があります。しかし、不動産商品は多様化し、少額で不動産投資できる方法が増えてきています。
最低額1万円から投資可能な少額不動産投資方法もあります。投資額・投資期間・メリット・デメリット・利回りなどを考慮して、自分に適した投資方法を活用し、少額不動産投資を始めましょう。