1. 不動産クラウドファンディング市場でも導入が進むAI
不動産業界では、AIの特性を活かした独自の不動産AIの利用が進んでいます。ファンドを選ぶ際には、AIを導入しているかはもとより、どのように活用しているかにも注目して企業を見てみましょう。
1.1. TSON(ティーソン)
TSONは、不動産AIによるクラウドファウンディングがウリ。ファンドの運用数や総額に定評があります。
不動産AIが約300万件の不動産データを収集し分析、市場価値を的確に判断した対象不動産に投資するため、比較的堅実な資産運用ができると考えられます。
また、土地の仕入れ、商品開発、販売のすべてを自社で行い、定期借地権を利用するなどで、コスト削減を実現。高利回りを可能にした商品が揃うのも強みです。
1.2. FANTAS funding
FANTAS fundingでは、「適正価格ですぐに売りたい」と考える不動産オーナーのニーズに応えるため開発されたAIによる独自の自動査定サービス「FANTAS check」を活用し、中古の不動産を取得。クラウドファンディングで運用します。
このプロジェクトは、東京都新宿区の区分マンションの部屋を取得して得る家賃収入や売却益が配当資源です。配当を安定させるため、満期日の前日を初回計算期間の終了日とし、売却損益が発生した場合にも、初回計算期間までの損益により分配計算を行う枠組みを設けています。
1.3. RENOSYクラウドファンディング
RENOSYクラウドファンディングは、都心の中古マンション専門のクラウドファンディング。過去の成約実績、類似物件情報などを学習したAIを活用し、月間約1万件の不動産情報を評価。
さらに、不動産コンサルティングマスターやビル経営管理士、公認会計士など複数の業界のプロで構成されたチームが審査し、優良物件をいち早く確保しファンドを組成する2段階分析による信頼性が魅力です。入居者からの賃料収入と売却益を分配金として配当します。
2. 不動産AIの仕組み
AIには、機能的な点で分類すると「汎用型AI」と「特化型AI」に分けられます。
汎用型AIとは、柔軟性が高く、状況に合わせて必要な役割や行動を考えます。そして、不動産AIに活用されているのが特化型AIです。こちらは、あらかじめ決められた場面や役割のなかで考えます。
不動産AIは、不動産価格査定において特に導入が進んでいます。査定したい物件の所在地や面積、種類、用途、築年数などを入力すると、過去の類似物件に関するデータと照合、価格を算出します。
蓄積データが増えるほどAIの精度は向上しますが、道路の位置や日当たり、デザイン性など数値化しにくい例外が多い一軒家やデザイナーズ住宅などは、AI査定で適正価格を知るのは難しくなります。
3. 不動産AIを不動産クラウドファンディングに使うメリット
従来は人が行なっていた作業を不動産AIが担うことで、精度やスピードアップが可能になります。そして、その結果多くのメリットが期待されています。不動産AIを活用する利点やメリットを見てみましょう。
3.1. 勘に頼らない適正価格の算出
従来、不動産の売却価格や賃料は、担当者の類似物件のリサーチや経験に基づき設定されてきました。この方法は、担当者の感覚に頼る部分も大きいため、適正価格を把握するのが難しく、複数の不動産業者に見積もりを依頼する必要がありました。
しかし、AIが査定をすると、大量な情報を分析し算出した、客観的な適正価格を示すことができます。
また、AIはデーター分析により、不動産投資した場合の将来利回りや価格予想も可能です。実際の情報に基づく将来予測は、不動産投資を考える判断材料として有効で、より精度の高い運用予測を可能にします。
3.2. 精度の高い予測によるリスク回避
AIによる過去のデータ分析やシミュレーションは、重大な損失を生む可能性があるリスク予測にも適しています。
たとえば、1つ目は、家賃収入にまつわるリスクです。諸事情により賃料を下げないと借り手が付かない、空室が発生し売上がゼロになるなどの場合があります。2つ目は修繕にまつわるリスクです。火災や地震の発生、経年劣化などさまざまな事例があります。また、不動産の価値そのものの価値が下落するリスクもあります。
対象物件のリスク予測により、どれほど堅実な資産運用が可能かを予測できます。
3.3. 物件捜索の高速化によるファンドの安定供給
投資先を探すのは、物件データから場所、価格、戸数などが適した条件を調査したり、ときには現場を訪れたりと、時間と労力がかかる作業です。しかし、AIを導入することで、全国の膨大なデータを一括して検証できるため、精度、スピード共に向上します。
このように、人では時間がかかる分析作業をAIに任せることで、物件選定の高速化が実現。ファンドの満期後も、次のファンドを途切れず供給することが可能になります。
4. AI以外に不動産クラウドファンディング選びで気をつけたいポイント
不動産クラウドファンディングを取り扱うサイトは多数あり、どこを選ぶかがカギになります。どのサイトを選べばよいのか、どんなファンドを選ぶと有利かなどを紹介します。
4.1. 不動産クラウドファンディング事業者の信頼性
どの不動産クラウドファンディングを選ぶかと同時に、どんな事業者が運営しているかはとても重要です。そもそも、事業者はサービスを開始するために、法律で定められた要件を満たしたうえで免許を取得する必要があるため、ある程度の信頼性があると言えます。
しかし、運営会社に資金力があるほど、対応力があり、倒産の可能性も低く安心して投資できると考えられます。また、上場しているかも確認したいポイントで、経験に基づく対応力や運営力を期待することができます。
4.2. ファンドの募集方法
不動産クラウドファンディングは主に「先着順」か「抽選」で募集されます。これは、一般的に不動産ファンドは募集数に対し人気が高いためです。
先着順では、募集開始時刻が設定され、多くはパソコンやスマートフォンで申し込みます。人気のファンドは申し込み数分で締め切られる場合もあるため、募集開始時刻に応募できるスケジュールを組んでおくようにしましょう。手続きを完了すれば、その時点でファンドへの投資か確約されます。
抽選では、募集期間中にいつでも応募できます。募集金額により当選率が変化したり、複数申し込んで当選率を上げる努力をしたりなど、工夫が可能です。投資できるのか、場合によっては投資額がいくらになるのかは、抽選結果の発表後になります。
両方の応募に対応しているファンドならば、自分の状況に合った方法で応募することができます。
4.3. ファンドの豊富さ・更新頻度
運営会社選びは、サイトの物件の豊富さや更新頻度に注目しましょう。取り扱うファンドが豊富なほど、よい物件に出会える可能性がアップします。
また、先ほど説明した通り、希望するファンドに必ず投資できるとは限らないため、複数の候補があると投資できるチャンスが増えます。不
動産クラウドファンディングでは、個人での不動産投資と違い、商業施設やビル、病院、学校とさまざまな種類や規模の物件への投資が可能です。そのため、多数のファンドがあり、新しい情報が順次追加されるサイトがおすすめです。
4.4. 物件情報の細かさ
よいファンドを選ぶには、物件についてよく知ることが欠かせません。そのため、物件についてどれほど詳細な情報を紹介しているかに注目します。
多くのサイトが公表する情報は、住所、周辺情報、築年数、想定家賃などで、情報が詳しいほど判断の精度も上がります。物件情報を元に、災害情報や環境など気になる点はないか自身でも調べてみましょう。
そして、物件価格や家賃を推測し、提示されている想定利回りが妥当かどうかを検証することが大切です。
4.5. 優先劣後出資の割合
優先劣後出資とは、運用期間が終了し物件を売却する際、運用開始時の取得価格より下回った場合、または賃貸物件で、空室が多数発生し運用益が上がらない場合など損失が発生したときに、事業者側が優先して損失をカバーする仕組みを言います。
出資割合は、元の価格よりナンパーセント損失が出た場合まで事業者がカバーするかを表し、数字が高いほど投資家に有利なファンドと考えられます。出資割合は20%前後のものが多くなっています。
ファンドを選ぶ場合、優先劣後出資方式を採用しているか否かは重要です。また、出資割合もいざというときに大きな差を生みます。そのため、両方を必ずセットでチェックしましょう。また、運用会社が借り入れにより取得した物件の場合は、出資割合の計算が通常と異なるため、注意が必要です。
4.6. 任意匿名型・匿名組合型
クラウドファンディングの契約のタイプには「匿名組合型」と「任意組合型」があり、税金の区分などにより自分に合うほうを選びます。
匿名組合型は、投資家と事業主は匿名契約を個々に結びます。そして事業主が不動産の所有権を持ち、投資家は不動産からの収益や出資金の返金要求をする権利を持ちます。1万円くらいからの少額で投資できる運用期間の短いファンドに多いタイプで、税金は雑所得として扱われます。利益が20万円を超える雑所得は確定申告の対象となるため注意が必要です。
任意組合型は、登記を行い不動産の所有権を投資家が持ちます。10万円や100万円くらいからの高額な商品が多く、運用期間も10年以上が主流になっています。利益は所得として税金がかかりますが、相続や贈与の税金対策としての利用も可能です。
5. AIだけじゃない!不動産投資業界の新技術「不動産STO」とは
STOは、英語のSecurity Token Offeringの頭文字を取ったもので、ネット上の取引を記録するブロックチェーンと呼ばれるシステムを利用してデジタル化されたデジタル証券、セキュリティートークンを発行し、資金を調達することです。
ブロックチェーンは、複数のコンピュータでデータを共有して管理する厳しいセキュリティで守られており、契約書類や取引の内容などの重要な情報を記録しています。また、STOは金融庁認可の日本STO協会の規約を守り取り扱うことが定められています。
6. 不動産投資にSTOを活用するメリット
STOの活用によるメリットは多く、従来では難しかったことや不可能だったことも可能になるため、不動産投資の市場の活性化が期待できます。STO活用のメリットと要となるシステム、ブロックチェーンについて解説します。
6.1. 資金調達がしやすくなる
従来、不動産投資の分割は管理コストの上昇などの面で難しかったのですが、STOにより、不動産所有権の小口化が可能になります。
今まで投資の機会がなかった一般投資家をはじめ幅広い投資家からの資金調達が見込まれ、市場の活性化が期待されています。
6.2. 24時間取引が可能になり流動性が高まる
一般的な取引の場合は取引時間が限られていますが、ブロックチェーンの仕組みを利用すると24時間取引が可能になります。
また、売買の成立後も、従来は決済が完了するまで数日かかりましたが、即時決済が可能になります。取引の流動性が高まるとともに、市場の活性化が予想されます。
6.3. コスト削減
ブロックチェーンの応用技術を組み込むことで、名簿の自動更新、証券の小口化や配当の支払い、契約の自動執行など様々な作業の自動化や、作業の簡略化が可能になり、人件費や仲介手数料などのコスト削減につながります。
また、コスト削減の恩恵による利回りの向上や、新たな商品開発など市場の発展の可能性も期待されています。
6.4. ブロックチェーンによる高いセキュリティ
かつては法整備が不十分で、ブロックチェーンを利用した独自の仮想通貨を用いるInitial Coin Offering(ICO)によるトラブルが話題になりました。STOは、ICOの仮想通貨に対し、債権や不動産の権利などと同等のものをセキュリティートークンとして発行する点が異なります。
システムのデータは多くの場合、中心となる管理者が管理しますが、ブロックチェーンでは複数の参加者が取引履歴などの情報を共有し、記録し続けます。そのため、どれか1つのデータが何らかの理由で失われたとしても、他のデータがあるのでシステムは問題なく作動します。
また、保存された取引データは削除できないことから、不正や改ざんが不可能な高いセキュリティが特徴です。
不動産STOの事例①:葉山の古民家宿づくりファンド
1口5万円から投資可能で、想定利回りは2%~、運用期間は4年3ヵ月のファンドです。出資後、STが発行されます。
物件は、東京から電車を乗り継ぎ90分ほどの海や川、豊かな自然に恵まれた神奈川県葉山町にある古民家です。金銭的リターンのみでなく、地域のコミュニティ活性や空き家問題解決などについて考え貢献するチャンスがある、共感投資型クラウドファンディングです。
不動産STOの事例②:大家どっとこむ
大家どっとこむでは、『だれでも、かんたんに「大家」になれる』のキャッチフレーズの通り、好みの物件を選んで1口1万円から投資可能です。
賃料や売却収益により、元本や配当を受け取れるファンドが揃います。出資後、STを発行。従来は運用期間終了まで不動産投資による財産の譲渡は難しい傾向でしたが、STの利用により、STOスキーム上で書面確認などを行い譲渡できます。
7. 多様化する不動産投資
STOは日本政府も法整備を進めており、幅広い業界で注目されています。収益を生むものは将来広く導入される可能性があると考えられ、不動産、社債、株などで主流となる日も遠くないかもしれません。
STOのメリットには、信頼や利便性向上に関わる項目がたくさんあり、それぞれの市場の活性化につながる可能性があると期待されています。特に投資に興味のある人にとって、STOの知識は重要になりつつあるので、この機会に知っておきましょう。