1. 不動産投資の始め方
不動産投資を始める大きな流れは、以下のとおりです。
- 不動産についての知識を身につける
- 目標や投資金額の設定
- 物件探し
- ローン審査
- 物件の購入
- 管理方法を決める
- 運用開始
不動産投資は、少なからずリスクを伴います。そのため、不動産投資を始める前に、物件の購入までの流れを把握し、不動産に関する基礎知識を身につけておきましょう。
① 不動産についての知識を身につける
不動産投資を始めるにあたり、基本的な不動産用語を理解しておく必要があります。不動産投資において使用される用語の多くは、普段の生活ではあまり触れる機会がありません。
そのため、不動産特有の用語を理解していないことで、不動産運用に関して困難となる場面が出てくるでしょう。書籍や不動産会社が主催するセミナーなどで不動産投資に関する基礎用語を理解し、不動産運用に生かしましょう。
② 目標や投資金額の設定
不動産投資を始める際は、不動産運用における最終目標を設定しておきましょう。初期投資額や達成目標額だけではなく、設定した目標を達成する時期について明確にしておいてください。
「不動産で稼ぎたい」といった漠然としたイメージだけで不動産投資を始めると、失敗するリスクは大きいです。まずは、投資総金額と自己資金のバランスを考慮して、自分に適した不動産商品や運用方法を選びましょう。
③ 物件探し
不動産投資に関する目標が明確化したら、投資対象となる物件を探します。新築物件や中古物件、1棟所有や区分所有のように、どの不動産物件を選ぶかによって運用方法が異なります。
また、物件の立地が都心圏であるか地方都市部であるかによっても経費や家賃収入にも差が出ます。購入する物件の選定には、情報収集が必要です。不動産会社のホームページや資料請求で検索するなどの方法がありますが、自ら現地に赴くことも大切です。
④ ローン審査
購入を希望する物件が決定すると、一般的には住宅ローンの審査を受ける段階に入ります。自己資産が多くある方でない限り、不動産の購入には多額の費用が必要となるため、ローンを活用するケースがほとんどです。
期待できる家賃収入から返済計画を立て、自分に適した住宅ローンの種類や必要な頭金などを早めに確認しておきましょう。
⑤ 物件の購入
住宅ローンの審査が通れば、融資を受けられます。融資額が決定することで、物件の購入に進めます。また、物件を購入したあとには、所有権を得るために多くの書類や手続きが必要です。そのため、物件の引き渡しまでに時間がかかることがあります。
手続きの内容が複雑なため、迅速に手続きを済ませるには不動産投資先である不動産会社に相談しながら進めるとよいでしょう。
⑥ 管理方法を決める
購入した物件の管理方法は、自己管理にするか管理会社に委託するかを決定しなければなりません。不動産投資を本業とするか、副業として始めるかで判断が異なります。
不動産投資を本業とするのであれば、物件管理を自分で行うことも可能です。一方で、副業として不動産投資を始める場合は、管理会社に委託すると手間が省けます。しかし、管理会社への委託には手数料がかかるため、収支計算を事前にしておきましょう。
⑦ 運用開始
不動産運用を始めると、まずは入居者の募集を行わなければなりません。また、退居者が出ると、次の入居者が現れるまでに修繕やクリーニングをする必要があります。
また、不動産の経年劣化により、公用部や設備のメンテナンス・取り替えをしなければなりません。
2. 不動産投資の初心者に必要な知識
不動産投資の初心者である場合、何から学習すればよいかわからない人も多いでしょう。初心者の方は、不動産に関する基礎知識を身につけておく必要があります。具体的にどのような知識が必要かを紹介します。
2.1. キャピタルゲインについて
不動産を購入すると、物件を売却するタイミングによっては売却益が得られます。
物件購入額より売却価格が大きい場合、売却益を「キャピタルゲイン」と呼びます。反対に、売却益のほうが物件購入額より下回った場合は、「キャピタルロス」と呼びます。
2.2. インカムゲインについて
前述のキャピタルゲインに対し、所有する物件を貸している期間に発生する家賃収入を「インカムゲイン」と呼びます。
不動産投資を始める際に住宅ローンを組む場合、ローンの返済が必要です。毎月返済するため、返済に充てられるだけの収入がなければなりません。そのため、安定した家賃収入を見込める物件を選ぶことが大切です。
2.3. 利回りについて
不動産投資に関する利回りは種類が複数あり、よく使われるものは「表面利回り」と「実質利回り」の2種類です。
表面利回りは、年間の家賃収入を購入時の価格で割って計算します。空室率や費用面は加味されておらず、不動産サイトでは表面利回りが表示されていることが多いです。
実質利回りは、将来的に見込まれる手取り収入に対してのものです。そのため、空室率や経費などが加味されています。
2.4. レバレッジ効果について
物件を購入する際に不動産投資ローンを利用した場合、自己資金で全額を出すよりも高い収益性になることがあります。これを、「レバレッジ効果」と呼びます。
利回りの計算は物件価格が基準となり、ローンを組むことで表面利回りと投資利回り(投資にかけた自己資金に対しての利回り)が一致しない状況に陥ることがあります。そのため、物件価格の大半をローンで賄うことで、自己資金をあまりかけずとも大きな収入が見込めます。
2.5. 不動産投資の種類について
不動産投資には、「区分所有」「1棟買い」「戸建て」と数種類あります。
区分所有は、アパートやマンションのような集合住宅を1部屋や1戸のように単位で所有する不動産投資です。
1棟買いは、土地とマンションなどの建物1棟を所有する不動産投資です。収益は期待できますが、物件の購入金額が高額であり、負担が大きい側面があります。
戸建て所有の場合、土地と建物を所有できますが、安定した家賃収入はあまり期待できません。
3. 物件タイプにおけるメリットやデメリット
不動産投資では、購入する物件によってさまざまなメリットやデメリットがあります。それぞれの物件におけるメリットやデメリットを紹介します。
物件の種類 (タイプ) |
メリット |
デメリット |
1棟マンション |
区分投資より利回りが高く、収入も多い傾向。 |
維持や管理に費用や手間がかかる。 |
区分マンション (ワンルーム) |
価格が低く、分割しての管理も可能。 |
所有している物件が1室のみの場合、空室だと収入がなくなる。 |
区分マンション (ファミリー向け) |
長期間、安定して居住する場合が多い。 |
ワンルームの物件と比べると価格が高い。 |
アパート |
1棟マンションと比べて費用がかからない。 |
1棟マンションよりも家賃による収入が少ない。 |
戸建て |
土地の割合が大きく、資産価値が低下しにくい。 |
集合住宅とは異なり、居住する世帯が一つのみのため、空室となるリスクが高い。 |
新築・築浅 |
物件そのものの価値が高く、ローンを組む際に融資を受けやすい。 |
物件の価格が高く、利回りも低くなる。 |
中古 |
安い価格で購入できて、利回りが高い。 |
リフォームが必要だったり、耐震性を確認する必要があったり、費用や手間がかかる。 |
上の表のように、不動産投資物件には多くの種類があり、それぞれメリットやデメリットがあります。
何のために不動産投資を始めるのかという目的や目標、投資にかけられる時間や手間、費用などを考えて、自分自身に合う物件を探すことが大切です。
4. 初心者におすすめの物件
前述のように、不動産投資にはさまざまな種類があります。不動産投資に関して経験者と初心者では、おすすめの投資方法が異なります。
初心者にはワンルームの区分マンションがおすすめです。ワンルームの区分マンションのメリットを解説します。
4.1. 少額で購入可能
1棟買いやファミリー物件と比べて、ワンルームの区分マンションは低価格で購入できます。副業として不動産投資を始める人に人気の不動産投資です。
自己資金が少ない方にも比較的購入しやすく、住宅ローンの返済額を低く抑えられます。そのため、低リスクで投資を始めたい方に向いているといえます。
4.2. 複数所有できる
ワンルームの区分マンションであれば複数の物件に分けて投資が可能です。ワンルームの区分マンション所有を複数の物件に分散することで、いずれかの物件について価値が下落した場合でも他に所有している物件で損失を補うことができます。
1棟買いの場合エリアにおける需要が下がると、空室率が急激に上がる可能性もあるため、ワンルームの区分マンションであるほうが低リスクであるといえます。
4.3. 修繕費を抑制できる
マンションのような集合住宅では、定期的な外壁や共有設備などの修繕が必要です。そのため、1棟買いの場合、メンテナンスに要する費用を考慮する必要があります。
しかし、区分マンションであれば、管理組合を通して修繕費が積み立てられ、修繕が実施されます。そのため、自分で多額の出費を捻出するリスクが少なくなります。室内の設備は自分で修繕を行わなければなりませんが、1棟買いに比べると修繕費用を低く抑えられます。
4.4. 管理しやすく手間がかかりにくい
マンションの1棟買いや戸建て住宅の場合、その物件を自分で管理するか、管理会社に委託するかを選ぶ必要があります。一方、区分マンションの場合は、管理会社に物件の管理を一任することができます。
不動産投資を本業として行う場合は自己管理が可能ですが、副業として不動産投資を始める場合は、とくに区分マンションの購入がおすすめです。
4.5. 売却が容易
不動産投資は、流動性の低さが弱点として挙げられます。株式投資や投資信託などの場合はすぐに売却できますが、不動産投資の場合は売却できるまで数ヵ月かかるためです。
また、数ヵ月をかけても買い手が見つからない可能性もあります。しかし、ワンルームマンションの場合は価格が安く需要が高いため、1棟買いや戸建てなどと比べて売却しやすいことがメリットです。
5. 初心者には不動産小口化商品がおすすめ
不動産投資にはさまざまな種類があり、最近注目されている方法が不動産小口化商品です。不動産小口化商品は、1口数万円から100万円ほどに小口化して販売されている投資商品で、特に初心者におすすめの不動産投資方法です。
小口化商品には、アパートやマンション、戸建てのような賃貸物件だけでなく、オフィスや商業施設などさまざまな物件が含まれています。その多くは、中古物件や新築物件です。投資期間についても、それぞれの商品によって異なります。
不動産小口化商品の種類やほかの不動産投資との違い、メリットやデメリットについて解説します。
5.1. 不動産小口化商品は2つに分けられる
不動産小口化商品は、大きく分けると「匿名組合型」と「任意組合型」の2つです。2つの大きな違いは、不動産の所有権を誰が持つかという点です。
種類 |
匿名組合型 |
任意組合型 |
不動産の所有権 |
事業者の単独所有 |
事業者を含む、すべての組合員 |
出資金額 |
1口数万円ほど~ |
1口100万円ほど~ |
運用期間 |
数ヵ月ほど~10年以内 |
約10年~数10年 |
相続対策の可否 |
不可 |
可能 |
特徴 |
・多くは短期運用で、少額から投資できる ・配当金の扱いは雑所得 ・出資金における相続時評価は時価 |
・長期運用のため収益が安定している ・相続対策に活用できる ・配当金は不動産所得で、相続税評価についても不動産と同様 |
向いている人 |
・不動産を所有しないで事業を始めたい人 ・少額で投資を始めたい人 |
・相続税対策を考えている人 ・都心の大規模な不動産を所有したい人 |
5.2. 不動産小口化商品とほかの不動産投資の違い
実物不動産の場合、投資の目的は家賃収入や将来的な売却益です。自分で購入する不動産のため、管理方法を始め、売却するタイミングまで自分で決められます。しかし、1棟買いのように大きな物件を購入する場合は、多額の費用がかかります。
一方、不動産小口化商品の場合、最低投資口数の規定はあるものの、1口100万円ほどの少額から投資が可能です。小口化されている不動産であるため、将来的に相続する際も分けやすいことから、相続トラブルの回避にもつながります。
5.3. 不動産小口化商品のメリット
不動産小口化商品の投資対象は、不動産運用のプロが選んでいます。そのため、安定した収入や売却益が見込まれる物件が多い傾向にあります。
また、任意組合型の場合、小分けにされた不動産の所有権を保有します。相続の際も分けやすく、物件の所有者が投資家自身であるため、相続税は実物不動産と同様に相続税評価額で算出され、相続税対策が可能です。
さらに、不動産小口化商品は管理会社や事業者が物件の管理を行うため、自分で物件を管理する必要がありません。少額から投資ができるため、複数の物件に分けて投資ができリスク分散が可能です。
5.4. 不動産小口化商品のデメリット
不動産小口化商品は、1つの不動産を共同事業や組合で購入して、その利益を分配する方法を取ります。そのため、将来的に安定した収入が得られるかを見極める必要があります。
また、不動産小口化商品は、ほかの不動産投資と比べて新しい金融商品です。そのため、種類や選択肢の少なさがデメリットの1つです。
また、不動産小口化商品は保険手配や物件管理などを運用会社がすべて担っています。その費用の分、実物不動産よりも利回りが低くなる傾向にあります。
6. 少額から無理なく始められる不動産投資
不動産投資にはさまざまな種類がありますが、不動産投資初心者の方には、少額から始められる不動産小口化商品がおすすめです。不動産運営に関する知識や経験がなくても、無理なく投資を始められます。
しかし、投資には少なからずメリットやデメリット、リスクが伴います。リスクを最小限に抑えるためには、それぞれの不動産商品の特徴を理解して、自分に適した物件を選ぶことが大切です。