1. 不動産クラウドファンディングの概要
不動産クラウドファンディングとは、不動産投資方法のひとつです。まず、事業者が投資家から資金を募ります。事業者は集まった資金を元手に不動産を運用します。そして、運用期間が満期になった段階で、収益(売却益を含む場合もある)を投資家に分配します。
不動産クラウドファンディングは、1口1万円と比較的小さな額から投資することが可能です。応募方法もスマホで完結するなど簡単な仕組みにしている事業者が多く、初心者でも挑戦しやすい点が特徴です。
2.【種類別】不動産クラウドファンディングにおける利回りと計算法
投資における利回りとは、投資した資金に対して1年間で得られた利益の割合を指します。不動産における利回りの計算方法は複数あり、それぞれ計算式に使われる要素が異なります。
2.1. 表面利回り|シンプルな計算法
表面利回りとは、経営するために必要となる経費を含まず、純粋な家賃収入だけで算出した割合を指します。計算式は以下の通りです。
仮に2,000万円で購入したマンションの家賃を10万円に設定した場合、表面利回りは次のようになります。
年間家賃収入:10万円×12ヵ月=120万円
表面利回り:120万円÷2,000万円=6%
2.2. 実質利回り|諸費用を加味する計算法
実質利回りとは、物件価格に物件を購入した際の諸経費を加え、満室状態の家賃収入から運用にかかる経費を差し引いて算出した割合を指します。計算式は以下の通りです。
仮に物件価格が6,000万円、諸経費が100万円で購入した10戸あるマンションの年間支出額が24万円、家賃が10万円の場合、実質利回りは次のようになります。
満室状態の年間収入:10戸×10万円×12ヵ月=1,200万円
実質利回り:(1,200万円ー24万円)÷(6,000万円+100万円)≒19%
2.3. 想定利回り|満室を想定した計算法
想定利回りとは、所有している物件が満室だった場合を想定して得られる収入から算出した割合を指します。計算式は以下の通りです。
仮に6,000万円で購入した10戸あるマンションを家賃10万円で貸し出した場合、想定利回りは以下のようになります。
満室状態の年間収入:10戸×10万円×12ヵ月=1,200万円
想定利回り:1,200万円÷6,000万円×100=20%
2.4. 現行利回り|空き室を加味する計算法
現行利回りとは、現在の空室状況を考慮した家賃収入から算出した割合を指します。計算式は以下の通りです。
仮に6,000万円で購入した10戸あるマンションの家賃を10万円に設定し、現在8戸が貸し出し中の場合、現行利回りは以下のようになります。
現在入居している状態での年間家賃収入:8戸×10万円×12ヵ月=960万円
現行利回り:960万円÷6,000万円×100=16%
3. 元本割れによる利回り低下リスクと対策
元本とは、金融商品の購入や維持など投資に充てた費用を指します。購入した商品の価値の減少や、相場の下落により、最終的に得られた利益が元本を下回ることを、元本割れと呼びます。
元本割れを防ぐためには、リスクを軽減させる対策をとることが重要です。
対策①:分散投資を行う
投資先をひとつに絞らず複数に分けておけば、リスクを低く抑えることが可能です。分散投資の効果を最大限に活かすためにも、分散する投資先を選ぶ際はまったく性質が異なるものを選びましょう。似たような投資先を選んだ場合、同じタイミングで価値が下がる可能性があります。
また、分散投資は損失するリスクを抑えられる反面、大きく稼ぐことが難しくなります。そのため、堅実に稼ぎたい方向きの投資方法といえるでしょう。
対策②:運用期間が短い物件を選ぶ
不動産クラウドファンディングの運用期間は、数ヵ月のファンドから2〜3年程度のファンドなどさまざまです。
目標金額に達した時点で運用が開始されるため、運用資金を確保するためにも途中解約ができないようになっていることが一般的です。そのため、経済状況が大きく変化する可能性の低い短期運用の物件を選ぶほうが、大きな損失につながりにくいといえます。
また、短期運用であれば、償還された資金を次の優良な投資先に素早く回せるというメリットがあります。
対策③:劣後出資割合を見る
不動産クラウドファンディング事業者の多くは、優先劣後出資方式を採用しています。優先劣後出資方式とは、「優先出資者」から募った資金と、「劣後出資者」からの資金で運用する方法を指します。多くの場合、劣後出資者はクラウドファンディングの事業者、優先出資者は投資家を指します。
優先劣後出資方式の大きな特徴として、以下の2点が挙げられます。
- 不動産の価格が下落した場合、先に劣後出資者が損失を負担する
- 配当金は、優先出資者が先に決められた額まで受け取る権利がある
損失が劣後出資の割合より少なければ、投資家は損失を負担する必要がありません。そのため、劣後出資の割合が大きい投資先ほど、安定した資産運用が可能になります。
4. 利回り比較①:不動産クラウドファンディングと他の不動産投資・クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングは、他のクラウドファンデングや不動産投資と比べてどのような違いがあるのでしょうか。この章では、各金融商品の特徴と、平均利回りを紹介します。
4.1. 現物不動産投資と不動産クラウドファンディング
現物での不動産投資とは、実際に不動産を購入して運用し、家賃収入から収益を得る方法です。購入した不動産で得られる収入や資産をすべて所有できるメリットがあります。ただし、物件の購入から運用、売却まですべてのフローに関わる必要があります。
以下は、現物不動産投資と不動産クラウドファンディングを比べた表です。
現物での不動産投資 | 不動産クラウドファンディング | |
---|---|---|
平均利回り | 約4%(都内・想定)※ | 約5% |
購入金額 | 数100万円〜数億円 | 10,000円〜 |
収益源 | 家賃収入および物件の売却益の全額 | 家賃収入および物件の売却益の一部 |
※参考:日本不動産研究所「現物不動産投資」
4.2. REITと不動産クラウドファンディング
REITとは「Real Estate Investment Trust」の略です。投資家から集めた資金を元手にオフィスビルやマンション、商業施設など複数の不動産を購入し、そこから得られる収益や売却益を投資家に分配する金融商品を指します。法律上、投資信託に分類されます。
以下は、REITと不動産クラウドファンディングを比べた表です。
REIT | 不動産クラウドファンディング | |
---|---|---|
平均利回り | 約3% | 約5% |
投資対象となる物件の数 | 複数 | 1件 |
1銘柄の時価総額 | 数100億円〜数1,000億円 | 数1,000万円〜数億円 |
換金できるタイミング | いつでも | 運用期間満期後 |
4.3. ソーシャルレンディングと不動産クラウドファンディング
ソーシャルレンディングとは、お金を借りたい企業あるいは人を、インターネット上で投資家と結びつける融資仲介サービスを指します。融資を受ける企業から支払われる貸付金利で得られた収入が、投資家に分配されます。
以下は、ソーシャルレンディングと不動産クラウドファンディングを比べた表です。
ソーシャルレンディング | 不動産クラウドファンディング | |
---|---|---|
平均利回り | 約4.8%※ | 約5% |
投資対象 | 企業あるいは人 | 物件 |
収益源 | 貸付金利 | 家賃収入および物件の売却益 |
※ソーシャルレンディング10社の平均値
4.4. 株式投資型クラウドファンディングと不動産クラウドファンディング
株式投資型クラウドファンディングとは、新規企業や成長企業が資金調達を行う方法のひとつです。投資家から資金を募り、非上場株式を発行して株主に配布します。投資先の企業が上場する、あるいはM&Aで買収された際に、非上場株式を売却することで現金化できます。
以下は、株式投資型クラウドファンディングと不動産クラウドファンディングを比べた表です。
株式型ソーシャルレンディング | 不動産クラウドファンディング | |
---|---|---|
平均利回り |
投資先企業の成長率による |
約5% |
投資対象 |
新規・成長企業 |
物件 |
収益源 |
非上場株式の売却益 |
家賃収入および物件の売却益 |
5. 利回り比較②:不動産クラウドファンディングと利回りの相場が似ている資産形成の手法
前述で紹介した金融商品以外にも、不動産クラウドファンディングと利回りの相場が似ている金融商品や保険があります。
5.1. 投資信託|初心者向け
投資信託とは、運用会社が投資家から集めた資金を元手に、さまざまな金融商品を組み合わせて運用する商品を指します。決められた指標やプロによる選定を元に投資先が組まれており、自分で投資先を選ぶ必要がないため、初心者向けの金融商品といえます。多様な金融商品を分散して購入できるためリスク対策としても有効です。
また、株式投資や不動産投資などと異なり、100円や1,000円といった少額からの投資が可能です。定期的に投資ができる投信積立を利用して、無理なく長期的に運用する方法もあります。
5.2. 一部の保険|子育て家庭向け
返戻率(へんれいりつ)の高い保険に加入することで、祝い金や満期に受け取る総額が高くなります。仮に返戻金110%の保険に加入して保険料を総額100万円支払った場合、満期に110万円を受け取れます。
利回りや利率と異なり、時間経過で返戻率が変わることはありません。そのため、子供の学費や老後など、確実に出費が発生するタイミングに備えておきたい場合に有効です。
6. おすすめの不動産クラウドファンディング事業者を利回りとリスクを基準に紹介
不動産クラウドファンディングに興味がある方は、この章で紹介する事業者がおすすめです。各社の特徴と想定利回り、劣後方式の出資割合などを参考に検討してください。
6.1. COZUCHI(コヅチ)|都心マンション・想定利回りと出資割合が高い
COZUCHIは、2019年より不動産の小口投資商品を販売するサービス「WARASHIBE」を開始。2021年に名称を変更。比較的高い想定利回りが特徴です。運営会社は、LAETOLI株式会社。
COZUCHIには、以下の特徴があります。
- 購入・運用手数料が無料
- 換金手数料3〜5.5%支払うことで投資期間中の解約が可能
- キャピタルゲインのリターンに上限設定なし
想定利回り |
平均想定利回り |
劣後出資の割合 |
平均劣後出資の割合 |
運用期間 |
平均運用期間 |
4〜13% |
約7% |
10〜55% |
約20% |
3〜84ヵ月 |
16.5ヵ月 |
※検索結果上位20件から算出
6.2. Jointo α(ジョイントアルファ)|西日本の物件・出資割合が高い
西日本大手の穴吹興産が運営するJointoαは、関西圏の物件を中心に取り扱っています。劣後出資の割合が平均して30%と高い水準に設定されている点がポイントです。
ジョイントアルファには、以下の特徴があります。
- 会員登録・投資申請手数料が無料
- 原則として途中解約は不可だが、やむを得ない事由がある場合は書面にて解約可能
- 最低投資金額は10万円から
想定利回り |
平均想定利回り |
劣後出資の割合 |
平均劣後出資の割合 |
運用期間 |
平均運用期間 |
3.2〜6% |
約3.6% |
30〜50% |
31% |
6〜12ヵ月 |
9.5ヵ月 |
※検索結果上位20件から算出
6.3. TECROWD(テクラウド)|アジア新興国の物件・想定利回りが高い
TECROWDでは、日本国内の物件以外にも、モンゴルやカザフスタンといったアジア新興国の物件を取り扱っています。珍しい物件を探している方におすすめです。
TECROWDには、以下の特徴があります。
- 自社で建築・監修した物件が中心
- 最低投資金額は10万円から
- アジア新興国の物件を取り扱っており、対象国は今後も増える予定
想定利回り |
平均想定利回り |
劣後出資の割合 |
平均劣後出資の割合 |
運用期間 |
平均運用期間 |
7〜10% |
約7.8% |
5〜30% |
約10% |
4〜30ヵ月 |
約21ヵ月 |
※検索結果上位20件から算出
6.4. A funding|想定利回りと出資割合が高い
株式会社アンビションDXホールディングスが運営するA funding。物件の開示情報が他社よりも充実しており、じっくり物件を選んで商品を購入したい方に向いているサービスです。
A fundingには、以下の特徴があります。
- 1口1万円から投資が可能
- 10,000円の手数料を支払えば譲渡が可能
- サイト上のファンド詳細ページに物件取得・管理費用の詳細な分配シミュレーションが記載されている
想定利回り |
平均想定利回り |
劣後出資の割合 |
平均劣後出資の割合 |
運用期間 |
平均運用期間 |
4.5〜6% |
5.1% |
30% |
30% |
6〜9ヵ月 |
7ヵ月 |
※検索結果上位5件から算出
7. まとめ
不動産投資を検討している方には、少額から投資できる不動産クラウドファンディングがおすすめです。他の金融商品に引けを取らない利回りの高さと、短期間で運用可能な流動性の高さが魅力です。
本記事で紹介したポイントを参考に、自分の投資スタイルに合ったファンドを検討してください。