1. 不動産小口化商品とは?
不動産小口化商品とは、事業者が管理する物件に複数の投資家が出資し、家賃収入で得た利益を投資家に分配する金融商品です。分配される金額は、出資した割合に応じて決まります。
販売されている商品は、以下の3種類です。
- 任意組合型
- 匿名組合型
- 賃貸型
商品によって事業の主体や不動産の所有権が異なります。
1.1. 不動産小口化商品の3つの種類
3種類の不動産小口化商品の特徴について、以下の表で示しています。
任意組合型 |
匿名組合型 |
賃貸型 |
|
概要 |
投資家が投資額に応じた不動産の持分を購入し、 事業者が代表して運用する |
事業者が主体となり、投資家から出資を募って運用する |
投資家が投資額に応じた不動産の持分を購入し、 事業者と賃貸借契約を結ぶ |
事業主体 |
投資家 |
事業者 |
投資家 |
配当金に適用される税制 |
不動産所得 |
雑所得 |
不動産所得 |
不動産の所有権 |
投資家・事業者 |
事業者 |
投資家 |
特徴 |
金銭での出資以外にも、現物出資や労務出資が認められている |
1口数万円からと少額で始められ、 |
賃貸保証付きといった元本割れリスク対策をしている事業者もあり、比較的安定した運用が期待できる |
不動産の所有権を持つ任意組合型は、贈与税や相続税の節税対策としても有効です。
1.2. 他の不動産投資との違い
不動産小口化商品は、物件を購入する不動産投資やREITとどう違うのでしょうか。以下の表でまとめています。
不動産小口化商品 |
現物の不動産投資 |
REIT |
|
不動産の所有権 |
商品による |
投資家 |
事業者 |
換金のタイミング |
運用期間の終了時 |
自由に換金が可能 |
自由に換金が可能 |
投資にかかる費用 |
数万円から |
数百万円〜数億円 |
数万円から |
金融機関からの融資 |
受けられない |
受けられる |
受けられない |
現物の不動産投資では、物件の購入から登記の変更、運用、売却のすべてを自分で行います。利益をすべて得られる一方で、運用に関する高い知識が求められます。
REITは株式と同じく金融商品取引所に上場しており、いつでも売買が可能です。また、物件の選別やメンテナンスなどは、小口化商品と同じくすべて専門家が行います。
2. 不動産小口化商品のメリットとデメリット
不動産小口化商品は、少額から始められる手軽さや、節税効果の他にもメリットがあります。同様に、購入する前に確認しておきたい注意点も存在します。
2.1. 不動産小口化商品のメリット
不動産小口化商品は、現物の不動産投資よりも少ない金額で投資を始められる金融商品です。複数の商品に投資しやすく、リスク分散の効果が期待できます。
また、専門家が選んだ物件に投資するため、自分で物件を探す必要がありません。物件の購入や管理維持、登記の変更なども事業者に一任できます。そのため、運用に手間がかからず、手軽に続けられます。
さらに、購入する商品によっては、相続税や贈与税の節税対策にも有効です。
2.2. 不動産小口化商品のデメリット
不動産小口化商品は、運用にかかる手間を減らせるというメリットがあります。一方で、契約の初期費用や運用にかかる経費、登記の名義変更などの手数料が発生します。
契約する事業者によって料金が異なるため、慎重に検討することが重要です。また、現物の不動産とは異なり、購入した不動産を担保に融資を受けられません。購入の際は自分の資産内で投資をすることになります。
さらに、他の不動産投資と同様に「入居者が決まらない」「不動産の価値が下がった」などが原因で元本割れを起こすリスクがあります。商品によっては、中途解約できないものがあり、損失を抑えにくいことが難点です。
途中解約が可能な商品でも、一定の解約手数料を徴収されるケースが一般的です。
3. なぜ不動産小口化商品で節税できる?
賃貸型や任意組合型の商品は、投資家が不動産の所有権を購入するため、税区分が不動産所得になります。不動産所得の資産は、相続税や贈与税が現金で相続・贈与するよりも低く抑えられる可能性があります。以下で詳しく解説します。
3.1. 不動産を所有している扱いになる
任意組合型の商品は、投資家が購入した不動産の持分を現物出資し、契約した事業者に運用してもらう仕組みです。実際に不動産の所有権を有しているため、相続税の評価が現物の不動産投資と同じ計算になります。
相続税の評価額は、土地であれば「路線価方式」、建物であれば「固定資産税評価額」に基づいて算出されます。
分散した不動産に投資する方法としてREITが挙げられます。ただし、REITの相続税評価は現金と同じ扱いになり、節税効果が期待できません。
3.2. 相続税評価額が適用される
相続税の評価額で算出される金額は、土地であれば公示価格の約80%程度といわれています。評価額が下がることで相続税や贈与税も同様に下がり、節税が可能です。
また、運用対象がマンションやアパートであれば、借家権割合の評価分を固定資産税の評価額から差し引けます。借家権割合は現在一律で30%です。「地積規模の大きな宅地の評価」の要件に適した物件であれば、土地の評価額も減額します。
小規模宅地等の特例が適用された場合は、さらに50%の減額が可能です(参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」 「地積規模の大きな宅地の評価」)。
4. 不動産小口化商品を節税対策に活用するメリット
資産を贈与・相続したい方にとって、不動産小口化商品は有効な商品です。節税効果の他にも得られるメリットを紹介します。
4.1. 円滑な遺産相続の分配がしやすい
現物の不動産では、遺産相続の際に、分割することが難しく配分の仕方でトラブルに発展するケースがあります。その点、不動産小口化商品では最低購入数が決められており、複数所有していることが一般的です。仮に不動産小口化商品を100口所有していたとして、それを5人に相続する場合はそれぞれ20口ずつ分配できます。
このように、遺産分割を進めやすくするうえで、小口化商品は便利です。
4.2. 安定した不労所得を得られる
不動産小口化商品は、投資する物件の選別を事業者に一任できます。そのため、投資家自身に不動産投資の知識や調査をそれほど必要としません。
実績のある事業者であれば、投資家よりもうまく優良物件を見つけてもらえる可能性が高いです。そのため、現実の不動産投資に必要な物件の選定や管理維持をすべて専門会社にまかせつつ、安定した不労所得を得られるというメリットもあります。
5. 節税対策として不動産小口化商品を利用するときの注意点
節税対策として不動産小口化商品を最大限に活用するためには、購入する金額と節税効果のバランスを考えることが重要です。ここでは、購入する際に気をつけるポイントを紹介します。
5.1. 不動産小口化商品だけが適用される特例制度がない
床面積や利用区分によっては、前述した「小規模宅地等の特例」が適用されないケースがあります。適用される土地の要件は以下の通りです。
- 賃貸マンションやアパートとして利用している土地である
- 限度面積が200平方メートル以内である
また、不動産小口化商品には、独自の特例制度が現時点では存在しません。上記の特例が認められない場合の相続税評価額は、現物の不動産と同様になります。節税対策はあくまで投資のオプションであると考えたほうが無難です。
5.2. 節税対策としての不動産小口化商品の費用はなるべく抑える
本来、相続税や贈与税の節税とは、相続する資産を多く残すための対策です。
不動産投資には節税効果があるとはいえ、空室リスクや不動産価値の下落リスクがあり、資産の全体額が減る可能性があります。
また、不動産小口化商品では、不動産を購入する費用の他にも手数料や維持管理費が必要です。そのため、利回りが現物の不動産よりも低くなる可能性があります。
相続する資産を減少させることなく、投資リスクと節税効果のバランスを考えて商品を検討することが重要です。
5.3. 名義変更時には手数料が必要な場合がある
不動産小口化商品を運用している途中で贈与や相続が発生した場合、名義変更の手続きをする必要があります。また、任意組合型や賃貸型の商品は、不動産取得税や登記費用も必要です。
これらの諸費用は契約する事業者によって異なります。商品を購入する際に確認しておきましょう。
6. 節税対策を目的とした不動産小口化商品の選び方
投資や節税の効果を上げるには、費用対効果の高い投資対象を選ぶことが欠かせません。ここでは、優良物件を選ぶ際の基準を紹介します。
6.1. 優良物件を選ぶ
不動産投資を成功させるには、優良物件を選ぶことが重要です。
事業者が公表している取扱物件の利回りや運用実績を事前に確認しましょう。また、マンションやホテル、商業ビルなど、事業者によって得意とする運用対象が異なります。自分の投資目的に合った投資対象を検討しましょう。
6.2. 財産評価基準を参考に選ぶ
国税庁では、相続税や贈与税を計算する基準となる「財産評価基準書」を毎年公表しています。公表している評価基準は以下の通りです。
土地関係 |
・路線価図 ・評価倍率表 ・宅地造成費の金額表など |
土地関係以外 |
・借家権割合 ・森林の立木の標準価額表など |
参考 |
・家屋の固定資産税評価額に乗ずる倍率 ・伐採制限等を受けている山林の評価 |
出典:国税庁「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」
小口化商品の贈与や相続を予定している場合は、これらの評価額をもとにして節税対策に有効な土地を選ぶことをおすすめします。
6.3. 実質利回りを計算する
事業者が公表している利回りは、以下の方法で算出されていることが一般的です。
表面利回り(%)=満室時の年間賃料収入額(円)÷募集総額(円)×100
分配率(%)=(満室時の年間賃料収入額(円)-支出金額(円))÷募集総額(円)×100
これらの利回りには、諸経費は加味されていません。商品を購入する際は、個人で支払う経費も計算に含めて、実際に得られる収益を確認することが重要です。
6.4. 分割のしやすさを確認する
事業者や商品によって、購入できる最低購入数や金額が異なります。相続や贈与を考えている場合は、分割に必要な分の口数を購入できるかを確認しましょう。
また、相続する相手が多ければ、名義変更の回数も多くなります。名義変更にかかる手数料の安さも事業者を選ぶうえで重要です。
7. 節税対策から選ぶ! おすすめ不動産小口化商品
この章では、投資初心者の方におすすめの不動産小口化商品を紹介します。
今回紹介する商品は以下の4件です。
- ARISTO(アリスト)
- Vシェア
- アセットシェアリング
- SMART FUND SONAE(スマートファンドそなえ)
7.1.『ARISTO(アリスト)』
ARISTOは、株式会社エー・ディー・ワークスが提供している不動産小口化商品です。
渋谷や青山、京都など好立地の店舗ビルを取り扱っています。商品の詳細ページでは物件情報が細かく紹介されており、外観や内観がわかりやすい写真も多く掲載されています。
ARISTO掲載情報 |
|
物件取扱数 (サイト掲載数) |
6件(うち販売中は1件) |
1口単位の価格 |
100万円 |
最低出資単位 |
5口(5口以上は1口単位で追加可能) |
運用期間 |
約10年 |
表面利回り |
約3.8〜3.9% |
分配率 |
約3% |
※2022年6月現在
7.2.『Vシェア』
Vシェアは、株式会社ボルテックスが提供している不動産小口化商品です。ボルテックスは1999年の創業以来、資産作りのコンサルティングやアセットマネジメントを提供し続けています。累計販売実績135億円超(2022年3月時点)、物件組成数18件と、新しい業界内でも比較的実績のある会社です。
また、商品は中途解約が可能です。譲渡先を見つけられるかどうかで以下のように手数料が変わります。
- 解約者が譲渡先を見つけた場合は22,000円(税込)
- 事業者が譲渡先を斡旋する場合は売買価格の3.3%(税込)
Vシェア掲載情報 |
|
物件取扱数 (サイト掲載数) |
16件(うち販売中は1件) |
1口単位の価格 |
100万円 |
最低出資単位 |
5口 |
運用期間 |
10年 |
表面利回り |
問い合わせ |
分配率 |
問い合わせ |
※2022年6月現在
7.3.『アセットシェアリング』
アセットシェアリングは、株式会社インテリックスが提供している不動産小口化商品です。インテリックスは中古マンションの再生事業を中心に行っている会社です。創業以来21年で累計22,000戸以上のマンション販売実績があります。リノベーションで物件の価値を向上させるノウハウが豊富です。
アセットシェアリング掲載情報 |
|
物件取扱数 (サイト掲載数) |
7件(うち販売中は0件) |
1口単位の価格 |
100万円 |
最低出資単位 |
5口 |
運用期間 |
10年〜30年 |
表面利回り |
4.3〜6.1% |
分配率 |
問い合わせ |
※2022年6月現在
7.4.『SMART FUND SONAE(スマートファンドそなえ)』
SMART FUND SONAE(スマートファンドそなえ)は、株式会社TSONが提供している不動産小口化商品です。TSONはマーケティングを強みとしている会社です。独自に開発したAIを活用して、約4,600万件の賃貸データから購入対象となる不動産を選別しています。
SMART FUND SONAE掲載情報 |
|
物件取扱数 (サイト掲載数) |
11件(うち販売中は2件) |
1口単位の価格 |
100万円 |
最低出資単位 |
5口 |
運用期間 |
3年〜10年 |
表面利回り |
6.6〜9.6% |
分配率 |
4.5〜6.0% |
※2022年6月現在
8. まとめ
不動産小口化商品は、現物の不動産投資ほど資金を必要とせず、節税効果が期待できる金融商品です。自分の資産を大切な人に残したいと考えている方は、不動産小口化商品を検討されてみてはいかがでしょうか。
大切な資産を守るためにも、信頼できる事業者を選び、不動産価値が高くリスクを最小限に抑えられる物件を選ぶことが重要です。