1. クラウドファンディングは資金調達の方法
クラウドファンディングとは、投資家(出資者)から資金を調達する方法の一種です。インターネット上で、不特定多数の出資者から資金調達ができます。
支援者は、自らが共感・賛同できるプロジェクトに対して金銭で支援し、プロジェクトの収益の一部が支援者のリターンになります。クラウドファンディングの多くは、サービス・商品・金銭などのリターンを出資者が受け取ることで事業が成り立っています。
2. 2種類のクラウドファンディング
クラウドファンディングの種類は、「投資型」と「非投資型」の2つです。ここでは、それぞれの違いについて解説します。
2.1. 投資型タイプのクラウドファンディング
投資型タイプは、現金や株式などの金銭に関わるリターンが確約されている投資方法です。「ファンド型」「融資型(貸付型)」「株式型」などがあり、運用で得た利益を出資者にリターンとして還元することで成り立っています。
2.2. 非投資型タイプのクラウドファンディング
非投資型タイプは、商品やサービスなどの金銭以外のリターンが確約されている投資方法です。具体的には「寄付型」「購入型」「ふるさと納税型」が挙げられます。商品開発やサービス実現に関するプロジェクトが該当します。
3. 投資型クラウドファンディングの種類
投資型タイプは、少額でも出資できる点が特徴です。
初心者にはハードルが高いとされる、不動産・未公開株・融資への投資が手軽にできます。運営会社と同じ目線でプロジェクトを見届けられる点も魅力です。
3.1. 資金を集めて物件を運用する「不動産型クラウドファンディング」
不動産型クラウドファンディングは、プロジェクトの運営会社が所有・購入した土地に投資する方法です。運営会社と出資者(支援者)が1つの不動産に共同出資することで事業が成り立ちます。
1つの物件の所有権を1口ごとに分けるため、複数の支援者による出資が可能です。所有権を細分化することで、支援者側の元本割れリスクを低くするメリットがあります。
不動産型クラウドファンディングは、不動産で得た収益の一部を出資者へ分配することをリターンとしています。
3.2. 未公開株式を売買する「株式投資型クラウドファンディング」
株式会社がプロジェクトの起案者となり、支援者に向けて未公開株式の投資を募る方法です。未公開株とは、上場していないベンチャー企業の株などを指します。
ベンチャー企業への投資となるためリスクを伴いますが、ハイリターンが見込めることで注目が高まっています。個人が未公開株を購入するには手続きや一定の資金が必要ですが、クラウドファンディングを利用すれば、手軽に購入できるようになります。
株式投資型クラウドファンディングは、株式の売却時に得た利益や株主優待による特典をリターンとしています。
3.3. 個人から資金を集める「融資型(貸付型)クラウドファンディング」
複数の出資者から集めた資金をまとめて大口化し、起案者である企業に融資する方法です。融資を希望する企業と投資家をつなぐサービスを「ソーシャルレンディング」と呼びます。少額での投資が最大の魅力であり、1円単位で投資できる案件も存在します。
ただし、あくまでも融資(貸付)であることに変わりありません。ときには、リターンが十分ではないケースもあります。いわゆる「貸し倒れ」です。
ソーシャルレンディングにおいて、高金利のリターンはリスクを上回る魅力があります。
3.4. プロジェクトに対して出資してもらう「ファンド型クラウドファンディング」
ファンド型クラウドファンディングは、特定のプロジェクトに出資する投資方法です。プロジェクトで得た利益の分配をリターンとしています。
プロジェクトの起案者は、個人・企業・自治体など、規模や募集金額の幅広さが特徴です。環境問題を解決するためなど、目的が壮大なプロジェクトも実施されています。
ファンド型クラウドファンディングは、少額で社会貢献できる有意義な投資方法として注目度が高まっています。ただし、プロジェクトの売上や収益によっては、元本割れするリスクがあります。
3.5. 不動産の取得や運営をする「不動産投資型」
出資者から調達した資金を元に、不動産の取得や運営によって得た収益をリターンとする投資方法です。発生したインカムゲイン※1やキャピタルゲイン※2を利益として、出資者に分配しています。
プロジェクトの運用は国から許可を得た事業者が運営しています。そのため、高い安全性も魅力の1つです。
※1 インカムゲイン:不動産を所有していることで得られる賃貸収益(家賃収入)
※2 キャピタルゲイン:不動産の売却によって得られる売買収益
4. 非投資型クラウドファンディングの特徴
非投資型クラウドファンディングは、「寄付型」「購入型」「ふるさと納税型」の3種類です。
主に商品やサービスがリターンとして扱われており、投資型タイプにはない魅力があります。ここでは、それぞれの特徴について解説します。
4.1. 集まった資金は全額寄付になる「寄付型」
寄付型クラウドファンディングは、原則として支援者に対するリターンがありません。そのため、通常の「寄付」と同じように扱われることが特徴です。
集まった資金は全額寄付され、プロジェクトの運用に貢献します。
寄付型のメリットは、一般の寄付や募金よりも、どのような事業に出資金が使われるのかをイメージしやすいことです。また「寄附金控除」と呼ばれる、税金に関する優遇措置を受けられるケースがあります(参考:「国税庁|一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」)。
4.2. リターンでモノやサービスを得る「購入型」
プロジェクトで企画した商品やサービスの実現のために、起案者を支援する投資方法です。資金調達が成功すれば、リターンとして商品やサービスの利用・購入ができます。
募集金額の目標達成が前提となり、商品やサービスを「事前購入」する感覚で出資できる点が特徴です。資金調達には2つの方法があり、詳細は以下の通りです。
All or Nothing型 |
All in型 |
募集期間内に資金調達が成功した場合のみ、 プロジェクトが実行される |
募集期間内に資金調達が成功できなかった場合、 1人でも出資者がいればプロジェクトが実行される※ |
※ 案件によって資金調達が実現できなかった際の条件が異なり、出資者の数によってはプロジェクトが実行できないケースもある
4.3. 自治体のプロジェクトに寄付する「ふるさと納税型」
自治体の問題を解決するために、課題をプロジェクト化して資金調達をする方法です。出資すると、同時に納税の役目も果たすため、所得税や住民税の一部を軽減できるメリットがあります。
プロジェクトによっては、リターンとして返礼品が送られてくる企画も数多く存在しています。平成27年度の税制改正によって、確定申告なしで利用できる「ワンストップ特例制度」が導入されたことにより、手軽に寄付できるようになりました(参考:「総務省|ふるさと納税ポータルサイト」)。
5. 投資型クラウドファンディングの手順
クラウドファンディングが身近な存在となったことにより、プロジェクトの掲載サイトを選べる時代になりました。ここでは、クラウドファンディングの発案から運用終了までの手順や方法について解説します。
① 目標を決める
銀行の融資と同じく、計画の見通しができなければ支援者からの出資は望めません。まずは、どのようなプロジェクトを企画したいのかを検討しましょう。
次に、企画内容が実現することで得られるメリットを明確化します。メリットが不明瞭のままでは、出資者に興味を持ってもらえないためです。
最後に、実現に必要な資金総額や運用期間(必要な時間)を割り出します。数値化すると目標が見えやすくなります。
また、プロジェクトは支援したくなるような内容であることが前提です。魅力の少ないプロジェクトを企画してしまうと、資金調達に失敗する恐れがあります。
② 利用するクラウドファンディングサイトの選択
目標や企画内容が決定したあとは、案件を掲載するクラウドファンディングサイト選びに移行します。
近年、クラウドファンディングの人気が高まっていることから、サービスサイトの選択肢が豊富になりました。手数料やサービス内容はサイトごとに異なりますが、最も重要なポイントは、「プロジェクトに合ったサイトを選択すること」です。サイトによって、扱う企画の専門分野が異なります。
サービス内容に魅力を感じるサイトがあれば、チェックしておくことをおすすめします。1つのサイトだけにこだわらず、複数のサイトを比較・検討することが大切です。
③ プロジェクトサイトに登録
掲載するサイトの決定後は、画面に沿ってプロジェクト内容を登録します。目標達成を左右する「プロジェクトの説明」「サムネイル画像の選定」には細心の注意を払いましょう。
また、登録前に以下の項目を決めておくと、作業がスムーズです。
- 企画のタイトル
- プロジェクトのカテゴリー
- 目標金額
- 運用期間
- プロジェクトの説明や、運用後の大まかな流れ
- サムネイル画像の選定
- 出資に対するリターン(お礼)
- 企画者の連絡先
- 口座の開設及び口座情報の取得
サイトに登録をしても、審査が終了するまではプロジェクトを開始できません。そのため、時間に余裕を持った登録が大切です。
また、サイト運営者側から提案があった際には、迅速な対応が肝心です。ときには、運営者側から掲載内容に対するアドバイスを受けられるケースもあります。
④ 審査が終了したらプロジェクトのスタート
審査が進み、サイトでの掲載許可が下りれば、いよいよプロジェクトのスタートです。しかし、募集終了時まで気を抜くことはできません。
目標達成の第一歩として、1日あたりに必要な出資額を計算します。必要な出資額は募集終了日から逆算すれば試算できます。
募集期限内に資金を調達できるよう、積極的に情報発信しましょう。特に、SNSを利用した情報発信は、不特定多数の人にプロジェクト内容を知ってもらう絶好のチャンスです。
⑤ 活動報告をする
募集中の活動報告は、プロジェクト成功への有効な手段です。企画者の熱意が出資者の背中を後押しする可能性があります。
また、出資者がプロジェクトの進捗状況を確認できるメリットもあります。そのため、小まめな活動報告が重要です。報告活動の例を挙げると「残りいくらで目標を達成できそうか」「現時点での出資者人数はどの程度か」などです。
支援を迷っている人に向けて、案件に対する注目度の高さをアピールできます。
⑥ プロジェクトの終了とお礼
プロジェクトを達成できた場合、掲載手数料を差し引いた分の金額が指定口座に入金されます。反対に、達成できなかった場合は支援者に出資金が返金され、未達成のまま終了します。
プロジェクトの成功・失敗にかかわらず、支援者に対するお礼は不可欠です。出資に対するお礼の文章を掲載するほか、メールや手紙で感謝の気持ちを伝えることも大切です。
仮に、プロジェクトが達成できなかったとしても、対応次第では次回の企画で目標を達成できる可能性があります。
6. 投資型クラウドファンディングのメリット・デメリット
誰でも投資に挑戦できるクラウドファンディングですが、お金を扱う以上はメリットとデメリットが存在します。人気の高さや流行だけにとらわれてしまい、出資後に後悔することだけは避けたいものです。
ここでは、「不動産型」「株式投資型」「融資型」の特徴について解説します。
6.1. 不動産型クラウドファンディングに関するメリット・デメリット
不動産型クラウドファンディング |
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メリット |
デメリット |
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※ 掲載サイトによっては、1口あたりの出資額が異なる場合もある
6.2. 株式投資型クラウドファンディングに関するメリット・デメリット
株式投資型クラウドファンディング |
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メリット |
デメリット |
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6.3. 融資型クラウドファンディングに関するメリット・デメリット
融資型クラウドファンディング |
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メリット |
デメリット |
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7. 投資型クラウドファンディングの種類を知って投資しよう
本記事では、投資型クラウドファンディングの種類について解説しました。
投資額の大小にかかわらず、出資・投資する際は必ずリスクが伴います。そのリスクを共同投資により低減できることが、クラウドファンディングの強みであり魅力です。
どの投資方法も少額で始められ、手間のかかる管理を運営会社に一任できることは非常に大きなメリットです。どのようなプロジェクトであれば共感できるかを考え、後悔のないように始めましょう。