1. 不動産クラウドファンディングの仕組み
不動産クラウドファンディングとは、インターネットを通じて、複数の投資家から資金を募り、不動産を取得・運営することです。
投資する不動産によって期間は異なりますが、運用期間が決まっています。数ヵ月から2年程度が運用期間の目安です。そして、運営期間中に出た利益を各投資家に分配します。
2. 不動産クラウドファンディングの取扱物件
主な取扱物件は、住居・商業施設・宿泊施設の3種類です。
商業施設と宿泊施設は景気に左右されやすい特性があります。よって、不動産クラウドファンディングのなかでも、ハイリスク・ハイリターンの傾向があります。
マンションを筆頭とした居住用不動産は、安定した収益が見込めます。そのため、商業施設や宿泊施設に比べ、低リスクで運用が可能です。
3. 不動産クラウドファンディングのメリット
不動産クラウドファンディングのメリットとは、どのようなものでしょうか?
ここでは、不動産クラウドファンディングのメリットを紹介します。
3.1. 少額で始められる
最初に挙げるメリットとして、少額で始められる点が挙げられます。
不動産クラウドファンディングは、1口1万円から投資が可能です。初めて投資をする人にも敷居が低く、始めやすい点がメリットです。また、少額で始められるため、限られた資産のなかでやりくりしたい人にもおすすです。
3.2. 現物の不動産投資より手間が少ない
次に、現物の不動産投資よりも手間がかからない点が挙げられます。
現物不動産投資と比較すると、利回り(利益)は下がるケースがほとんどですが、手間は大幅に減らせます。不動産クラウドファンディングに出資したあとは基本的に何もしなくてもいい仕組みです。不動産クラウドファンディングでは、各種保険の契約や修繕・リフォームの手続きを販売事業者にすべて任せられます。
設備投資の費用や不動産管理業者に運営を任せるための費用が不要なこともメリットのひとつです。源泉徴収票も事業者が代替で発行し、配当の分配をしてくれます。
ただし、投資前と運用中の事業チェックは小まめに確認しましょう。
3.3. 投資家に損失が発生しにくい
不動産クラウドファンディングは、ほとんどの事業者が優先劣後方式を採用しています。
優先劣後方式とは、先に投資を行った投資家(優先出資者)を優先し、不動産の事業者(劣後出資者)を後回しにして、利益を分配する仕組みです。
損失が出た際は、劣後出資者である事業者が優先的に損失を補填します。仮に20%劣後出資者がいる場合、20%までの損失なら優先出資者が損失を負うことはありません。
劣後出資者の割合が多いほど、損失を負うリスクが減少します。
4. 不動産クラウドファンディングのデメリット
不動産クラウドファンディングにはデメリットも存在します。デメリットも加味したうえで投資をしましょう。
4.1. 元本割れする危険性がある
どの投資にもいえますが、元本割れする危険性があることです。
特に、不動産市場全体の市場価値が暴落した場合は、投資開始時と比べ、物件の市場価値が半分以下になるケースも否定できません。投資開始時と比べ、出資金額がマイナスになることを「元本割れ」といいます。
不動産クラウドファンディングは、1口の出資金額が安価です。この利点を生かし、複数の物件に投資することで、リスクを減らすことが重要です。
4.2. 融資を受けることはほぼない
不動産クラウドファンディングでは、金融機関から融資を受けられることはほぼありません。
現物のマンション投資であれば、銀行から融資を受けることが可能です。理由として、物件を担保にできることが挙げられます。
一方で、不動産クラウドファンディングはマンションを所有するわけではないため、担保とみなされません。
不動産クラウドファンディングはミドルリスク・ミドルリターンのため、現在の貯蓄をコツコツと運用したい人に向いています。
5. マンション投資はクラウドファンディングをおすすめする理由
マンション投資について、クラウドファンディングを推奨する理由は複数あります。
1つめの理由が、不動産クラウドファンディングならマイナスになっても、多額の借金を負うことがほとんどないことです。不動産クラウドファンディングには優先劣後方式のような投資家に対して手厚い保護があるため、元本以上のリスクを負うことはありません。
2つめの理由が、分散投資によるリスク分散が可能な点です。現物不動産の場合、1件だけの投資にも、購入や運用に大きな費用が伴い、複数の物件に投資することは容易ではありません。しかし、不動産クラウドファンディングであれば、少額なため異なる条件やエリアの違う物件に投資でき、手軽にリスクを分散できます。
また、現物不動産投資では、不動産業者と懇意にしないと優良物件を紹介してくれないケースもあります。一方、不動産クラウドファンディングは、必要な情報がすべてインターネット上に公開されています。そのため、自分の目で物件を選定できるうえ、契約もすべてインターネット上で完結できます。
6. 不動産クラウドファンディング事業者を選ぶポイント
ここでは、不動産クラウドファンディング事業者を選ぶ際に気を付けたいポイントについて解説します。
6.1. 運営会社の信頼性で選ぶ
運営会社の信頼性を確認することが挙げられます。信頼性を確認するためには、運営会社の資本金と創業年数、営業実績を見るようにしましょう。特に資本力が高ければ、運営会社が倒産するリスクも減ります。
また、不動産クラウドファンディングの事業についても、営業実績を確認しておくことが重要です。
6.2. 掲載案件数と募集頻度で選ぶ
掲載案件数と募集頻度で選ぶようにしましょう。案件が多く、募集頻度が高い業者は、選べる物件の選択肢が広がります。
また、物件の取り合いになりにくい点も利点のひとつです。安定した資産運用の第一歩は、不動産クラウドファンディングに参加することからです。前述した通り、不動産クラウドファンディングは、募集から契約までがインターネットで完結します。
よって、複数の不動産クラウドファンディングサイトに登録しておくことをおすすめします。そのなかでも、先着順と抽選制の両方に対応している業者がベターです。
6.3. 物件の情報の多さで選ぶ
物件の情報の多さもポイントです。表面的な情報を調べるだけでなく、各情報について以下の観点で深堀りすることをおすすめします。
- リフォームされているか:築年数が経っていても、リフォーム後の場合は空室率が少ない傾向があります。
- 施工会社の評判:ホームページ以外にも口コミを調べることをおすすめします。
- その他:近隣施設の多さや空室率、収支シミュレーションも確認しておくことをおすすめします。
物件の情報が不明瞭なまま投資をすると損失のリスクも高くなります。物件情報をよく確認し、納得できる物件に投資しましょう。
6.4. 想定利回りで選ぶ
想定利回りでの検討も重要です。利回りが妥当かを調べます。
利回りが高すぎる場合は、リスクの高さがどれだけ上がるかをよく確認しましょう。物件に対して利回りが極端に高い場合は、収益の計算に問題のあるケースがあります。
たとえば、年利計算で公開されている場合でも、実際の運用期間が1年未満だった場合は計算が変わります。
下記で説明する優先劣後方式の出資割合も考慮し、不動産クラウドファンディングサービスや物件を選びましょう。
6.5. 劣後出資割合で選ぶ
劣後出資割合で選ぶこともポイントの1つです。
劣後出資割合が高いと、損失を負ってくれる金額が増えるため、投資家が損失を負うリスクが減ります。一方で、劣後出資割合が多い場合、個人の投資家が申し込める割合を制限されることがデメリットになります。
繰り返しになりますが、不動産クラウドファンディングに参加できなければ投資は始まりません。劣後出資割合のバランスを見て申し込みましょう。
6.6. 運用期間の長さで選ぶ
運用期間はファンドごとに異なります。短いものは3ヵ月から、長いものは3年程度の案件があります。
運用期間が短い場合、経済動向が著しく変化する可能性が低い傾向にあります。よって、大きな損失を負うケースは少ないといえるでしょう。
ただし、短期間の運用の場合は、投資を続ける際に次の投資先を見つける手間がかかります。常に希望の案件があるとは限らないため、小まめに案件をチェックしましょう。
一方で、運用期間が長いファンドは、損失が発生しない限り長期的な利益を受け取れるメリットがあります。また、短期間の案件に比べて次の案件を探す回数が減ることもメリットです。
ただし、運用期間が長いケースは、経済状況が予測しにくいため、物件の資産価値が下がる恐れがあります。資産価値が下がると損失につながるため、自分に合った運用期間を見極めましょう。
6.7. 募集方式で選ぶ
不動産クラウドファンディングは、サービスによって募集様式が異なる案件を掲載しているケースもあります。
主に抽選方式と先着方式ですが、申し込みがキャンセルになった場合、事業者によっては追加募集を実施します。ただし、追加募集を実施する事業者は多くありません。
6.8. 収益モデルで選ぶ
不動産クラウドファンディングサービスによっては、収益モデルが異なる案件を掲載しているケースがあります。
主な収益モデルは、インカムゲインとキャピタルゲインです。
- インカムゲイン…物件の所有を続け、家賃収入からの利益を主軸に得ること
- キャピタルゲイン…物件の売買をし、差分で出た売却益のこと
案件購入の際は、収益がインカムゲインかキャピタルゲインかを確認しましょう。
7. マンション投資におすすめの不動産クラウドファンディングサービスを5つ紹介
投資初心者でも始めやすい、マンション投資に力を入れている不動産クラウドファンディングについて紹介します。
各サイトで比較をし、自分に向いているマンション投資をしましょう。
7.1. COZUCHI|都心のマンション
COZUCHIは、1999年創業のLAETOLI株式会社が運営しています。不動産業に長く携わっているため、不動産投資に関するノウハウが蓄積されています。
取り扱っている投資物件は、主に都心のマンションです。物件の概要や想定利回りだけでなく、物件の所在地や写真、入居状況や周辺データなどの詳細な内容が確認できます。
途中解約は不可能な事業者が多いなかで、COZUCHIは途中解約が可能な点が魅力です。
掲載案件数 |
全45件(2022年5月時点) |
募集頻度 |
月1~3件程度 |
想定利回り |
およそ4%~10%程度 |
劣後出資割合 |
およそ20%~40% |
運用期間の長さ |
3~24ヵ月 |
募集方式 |
先着・抽選 |
収益モデル |
インカムゲイン・キャピタルゲイン |
最低出資金額 |
10,000円 |
参考:COZUCHI公式サイト
直近で募集が終了した案件を紹介します。
物件名 |
中銀カプセルタワービルB9XX-5 |
所在地 |
東京都中央区銀座8丁目16-10 |
想定利回り |
10% |
劣後出資割合 |
10% |
運用期間 |
3ヵ月 |
募集方式 |
抽選 |
収益モデル |
キャピタルゲイン |
最低出資金額 |
10,000円 |
募集総金額 |
900,000,000円 |
参考:COZUCHI「銀座 EXITファンドⅡ」
7.2. Jointo α |全国のマンション
Jointo αの運営会社は、東証スタンダード市場に上場している穴吹興産株式会社です。投資対象は全国のマンションですが、西日本最大級のマンション開発実績をもつ運営企業です。
想定利回りは3%〜6%程度と手堅い運営をしています。最低投資額は10万円と、不動産クラウドファンディングとしては、高い資金が要求されます。
運営は東証スタンダード上場企業のため、不正リスクと経営破綻リスクを減らしたい人におすすめです。
掲載案件数 |
23件(2022年5月時点) |
募集頻度 |
月1件程度 |
想定利回り |
およそ3%~6% |
劣後出資割合 |
およそ30%~50% |
運用期間の長さ |
6ヵ月~1年 |
募集方式 |
先着・抽選 |
収益モデル |
インカムゲイン |
最低出資金額 |
100,000円 |
参考:Jointoα公式サイト
直近で募集が終了した案件を紹介します。
物件名 |
シティータワー四天王寺夕陽ヶ丘 |
所在地 |
大阪府大阪市天王寺区四天王寺1丁目5-43 |
想定利回り |
3.6% |
劣後出資割合 |
30% |
運用期間 |
6ヵ月 |
募集方式 |
抽選 |
収益モデル |
インカムゲイン |
最低出資金額 |
100,000円 |
募集総金額 |
28,000,000円 |
参考:Jointoα「アルファアセットファンド大阪天王寺 第3回」
7.3. property+|政令都市を中心とした人気のマンション
property+の運営会社は、東証プライム市場に上場している飯田グループ傘下、株式会社リビングコーポレーションです。
投資先は政令指定都市の物件を中心に扱っており、品質が高いと評判の自社施工物件です。幅広い金額の物件を提供しているため、予算に合わせた物件選びが可能です。
また、主要都市から徒歩10分、デザイナーズマンションなど人気が高い物件を取り扱う傾向にあります。最低1万円から幅広い金額の物件を提供しており、予算に合わせて物件を選べます。
個人投資家だけではなく、機関投資家からも人気が高い不動産クラウドファンディングです。
掲載案件数 |
20件(2022年5月時点) |
募集頻度 |
月1件程度 |
想定利回り |
およそ3%~10% |
劣後出資割合 |
およそ20% |
運用期間の長さ |
3ヵ月~16ヵ月 |
募集方式 |
先着 |
収益モデル |
インカムゲイン |
最低出資金額 |
10,000円 |
直近で募集が終了した案件を紹介します。
物件名 |
quador(クアドール)中野 |
所在地 |
東京都中野区中野6-24-7 |
想定利回り |
3.2% |
劣後出資割合 |
20% |
運用期間 |
16ヵ月 |
募集方式 |
先着 |
収益モデル |
インカムゲイン |
最低出資金額 |
10,000円 |
募集総金額 |
16,780,000円 |
参考:property+「quador中野ファンド4」
7.4. Rimple|都心のワンルームマンション
Rimpleの運営会社は、東証プライム市場に上場しているプロパティエージェント株式会社です。
取引がスマートフォンで完結するため、投資初心者でも気軽に運用ができます。2020年からサービスを開始し、会員数はすでに10万人を突破しています。
取り扱いは主に都心のワンルームマンションで、ほとんどが6ヵ月以内の運用期間です。長期運用の資産形成をしたい人よりも、短期で手軽に投資したい人が向いています。
掲載案件数 |
全36件(2022年5月時点) |
募集頻度 |
月1件程度 |
想定利回り |
およそ3%~10% |
劣後出資割合 |
およそ30% |
運用期間の長さ |
6ヵ月~12ヵ月 |
募集方式 |
抽選 |
収益モデル |
インカムゲイン |
最低出資金額 |
10,000円 |
参考:Rimple公式サイト
直近で募集が終了した案件を紹介します。
物件名 |
クレイシア秋葉原 |
所在地 |
東京都台東区浅草橋5丁目29番 |
想定利回り |
2.9% |
劣後出資割合 |
30% |
運用期間 |
6ヵ月 |
募集方式 |
抽選 |
収益モデル |
インカムゲイン |
最低出資金額 |
10,000円 |
募集総金額 |
64,120,000円 |
参考:Rimple「Rimple's selection #36」
7.5. 大家どっとこむ|都心の一棟マンション
大家どっとこむの運営会社は、東証スタンダード市場に上場している株式会社ミライノベートのグループ会社である、株式会社グローベルスです。
投資対象は都心の1棟マンションが中心です。案件によっては買取保証を付けているものがあります。買取保証とは、物件売却時の想定価格を下回った場合、保証会社が買取ってくれる仕組みです。ただし、元本を完全に保証するものではないので、ご注意ください。
掲載案件数 |
全39件(2022年5月時点) |
募集頻度 |
月1~2件 |
想定利回り |
およそ3.5%~8% |
劣後出資割合 |
およそ10% |
運用期間の長さ |
3ヵ月~2年 |
募集方式 |
先着・抽選 |
収益モデル |
インカムゲイン |
最低出資金額 |
10,000円 |
参考:大家どっとこむ公式サイト
直近で募集が終了した案件を紹介します。
物件名 |
グローベル横濱大通り公園南 |
所在地 |
横浜市南区真金町1丁目8番11 |
想定利回り |
4.5% |
劣後出資割合 |
10% |
運用期間 |
3ヵ月 |
募集方式 |
抽選 |
収益モデル |
インカムゲイン |
最低出資金額 |
20,000円 |
募集総金額 |
30,370,000円 |
参考:大家どっとこむ「大家どっとこむ38号案件 新築区分マンション(横浜市南区)」
8. よく吟味して自分に合ったマンション投資を
マンション投資のうち不動産クラウドファンディングは、比較的低リスクな投資法です。
一方で、投資である以上、リスクは完全にゼロではありません。予算と想定利回り、事業者と物件をよく確認し、納得のできるマンション投資をしましょう。