不動産のクラウドファンディングには、匿名組合型・任意組合型が存在します。どちらの契約方法にも長所と短所があります。他にも共通点と相違点があるため、それぞれの特徴を理解したうえでどちらの運用方法が自分に適しているかを検討してください。本記事では、上記の解説および、人気のある不動産クラウドファンディングサービスを紹介します。ぜひ参考にしてください。
匿名組合型と任意組合型の違い…不動産クラウドファンディングサービスを紹介 (※画像はイメージです/PIXTA)
1. 不動産特定事業契約における3つの型
1.1. 匿名組合型|不動産クラウドファンディングに多い
1.2. 任意組合型|不動産クラウドファンディングには少ない
1.3. 賃貸借型|一般の方は少ない
2. 匿名組合型と任意組合型の共通点
利点①:不動産投資が少額でできる
利点②:インカムとキャピタルの両方が狙える
利点③:プロが選んだ物件で運用できる
欠点①:途中解約ができない
欠点②:所得税の節税効果に乏しい
3. 匿名組合型と任意組合型の違い
違い①:基となる法律|民法と商法
違い②:相続税の節税効果|任意組合型のみ可能
違い③:運用の期間|匿名組合型は短期が可能
違い④:事業者との関係|任意組合は対等
違い⑤:不動産の登記|任意組合型のみ必要
違い⑥:責任の範囲|任意組合型は無限責任
4. 任意組合型がある不動産クラウドファンディングサービスをチェック
4.1. TSON|上場企業が運営
4.2. 利回りくん|個性的な物件が多数
4.3. Good Com Fund|掲載物件が少ない
4.4. アセットシェアリング|少額投資の火付け役だが掲載物件が少ない
5. まとめ

1. 不動産特定事業契約における3つの型

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産特定事業契約において、契約方法には以下のとおり3つの型があります。

 

  • 匿名組合型
  • 任意組合型
  • 賃貸借型

 

これらは、それぞれの契約内容や方法が異なります。ここからは、3つの型における特徴について解説します。

 

1.1. 匿名組合型|不動産クラウドファンディングに多い

匿名組合型は、不動産クラウドファンディングで多く利用されている契約方法です。

 

事業者に対し、投資家が出資をします。その後、事業者が不動産を購入し、不動産運用にて得た収益を投資家に配分する契約です。

 

匿名組合型の特徴として、投資した投資家は不動産そのものを所有せずとも、収益の権利を得られることが挙げられます。また、少額での投資が可能であり、不動産クラウドファンディングで多く利用されています。

 

一方で、投資家は不動産を所有していないため、不動産運用に関わる権限がないことも意味し、積極的に運用したい方には不向きであるといえます。

 

1.2. 任意組合型|不動産クラウドファンディングには少ない

任意組合型では、不動産の事業者と投資家が共同の事業を行います。また、組合員の投資金額に応じて、不動産の権限を持つ契約のため、運用において投資家はさまざまな権限を有しています。

 

そのため、万が一不動産の運用が失敗した際には、投資家は共同事業者であるため損失も被る可能性があります。

 

任意組合型の契約方法を取る不動産クラウドファンディングは、そのリスクから募集が集まりにくいため、数が少ない傾向にあります。

 

1.3. 賃貸借型|一般の方は少ない

賃貸借型では、投資家が不動産を購入します。その後、事業者と賃貸借契約をして、事業者にその運用を任せる契約方法です。

 

賃貸借型は、投資家が不動産を所有しているため、不動産登記簿には投資家の名前が掲載されます。事業者は、賃貸運用にて得られた収益を投資家に配分します。

 

現在のところ賃貸借型の契約は、対象の不動産物件数が少なく、一般の投資家が契約できる物件は限定的であるといえます。

2. 匿名組合型と任意組合型の共通点

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

匿名組合型と、任意組合型の共通点について解説します。

 

それぞれの共通点では、以下のように利点が3つ、欠点が2つ挙げられます。

 

■利点

  1. 不動産投資が少額でできる
  2. インカムとキャピタルの両方が狙える
  3. プロの選んだ物件で運用できる

 

■欠点

  1. 途中解約ができない
  2. 所得税の節税効果に乏しい

 

それぞれについて、詳しく解説します。

 

利点①:不動産投資が少額でできる

匿名組合型と任意組合型ではどちらの契約方法においても、少額から不動産投資を始められます。

 

個人の投資家が不動産物件を所有し、運用するとなると多額の投資資金と運用資金が必要です。一方で、不動産クラウドファンディングは、複数の組合員と合同で不動産を所有し収益を得られるものです。投資金額は、その物件によって異なりますが、無理なく少額から投資ができることが特徴です。

 

また、2種類の契約方法を比べると、任意組合型より匿名組合型のほうが少額での投資が可能である傾向にあります。

 

利点②:インカムとキャピタルの両方が狙える

インカムゲインとキャピタルゲインについて説明します。

 

インカムゲインは、所有している資産によって得られる利益を意味します。不動産クラウドファンディングにおいては、不動産運用で得られた配当や利益がインカムゲインにあたります。

 

また、キャピタルゲインとは、所有している資産を売却するときに発生する利益を指します。不動産物件自体や所有権を手放すときも、利益が発生することがあります。

 

不動産クラウドファンディングは、インカムゲインとキャピタルゲインどちらの利益も狙える投資方法です。

 

利点③:プロが選んだ物件で運用できる

匿名組合型と任意組合型どちらの契約方法であっても、プロが選んだ物件で不動産運用が可能です。不動産クラウドファウンディングサービスの会社は、プロが厳選した物件を数多く所有しています。会社によっては、最低運用資金額や運用期間・予想利回り率をサイトに掲載してあり、投資家が投資したい物件を決められます。

 

初めて不動産に投資する方や、少額での投資を始めたい方にとってスタートしやすい不動産投資方法です。

 

欠点①:途中解約ができない

匿名組合型と任意組合型の契約方法に共通する欠点の1つ目は、途中解約ができない点です。どちらの契約方法も、契約時点で不動産保有期間が定められています。そのため、期間内での契約変更はできません。

 

任意組合型の契約は、投資家自身も共同経営者として運用します。そのため、運用がうまくいかなかった際に、途中解約したい衝動に駆られる可能性があります。しかし、保有期間中は、不動産資産を所有している状態が継続されているため、解約できないのです。

 

匿名組合型では配当が出た際、投資家に利益が配分されます。しかし、予想利回りを下回った場合には、配当金が下がる仕組みです。

 

欠点②:所得税の節税効果に乏しい

欠点の2つ目は、どちらの契約方法においても所得税が発生することです。所得税は投資家の出資額にはかからず、不動産運用で収益を得た際に納税義務が発生します。

 

一方で、任意組合型であれば、相続税の節税効果が期待できます。しかし、所得税については配当額に応じて納税が必要であるため、節税効果は期待できません。

3. 匿名組合型と任意組合型の違い

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

匿名組合型と任意組合型の違いについて解説します。ここであげる違いは、以下の6つです。

 

  1. 基となる法律
  2. 相続税の節税効果
  3. 運用の期間
  4. 事業者との関係
  5. 不動産の登記
  6. 責任の範囲

 

それぞれ詳しく解説します。

 

違い①:基となる法律|民法と商法

匿名組合型と任意組合型は、それぞれ基となる法律が違います。

 

匿名組合型は、商法によって規定されている契約方法です。商法第535条に匿名組合について記されています。

 

■第四章 匿名組合 第五百三十五条 

 

匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。

 

引用:商法|e-Gov法令検索

 

匿名組合型は、投資家が不動産を所有する投資方法ではありません。不動産運用に対して投資をして、事業者が不動産を購入・運用します。そして、運用によって発生した利益を投資家が得られる方法です。

 

任意組合型は民法によって規定され、民法第667条から688条に詳しく記載されています。

 

任意組合型は、複数の投資家と事業者が共同経営の契約を結ぶ方法です。そのため、組合の意志決定をするときは、組合員にも判断の権限があります。

 

それぞれ異なる法律を基にして仕組みが作られているため、投資家の立ち位置や配当を得る手順も異なります。

 

違い②:相続税の節税効果|任意組合型のみ可能

匿名組合型と任意組合型の契約方法は、相続税の節税効果に違いがあります。

 

匿名組合型の不動産を相続する際には、不動産を相続するわけではなく、その投資額を相続することになります。これは、匿名組合型の契約方法が不動産の所有権を持たないためです。相続者はその時点で所有している投資金額を相続するため、相続税への節税効果は見込めません。

 

一方で、任意組合型では相続税の節税効果が期待できます。なぜなら、任意組合型は不動産の共同経営者であるため、不動産の所有権を有しているためです。現物の不動産を所有していることで、不動産評価額はその不動産の約7割分として扱われます。賃貸運用をしている場合は、さらに評価額が下がる可能性があります。

 

このように任意組合型の契約は、相続税の節税効果が期待できます。

 

違い③:運用の期間|匿名組合型は短期が可能

両者の契約方法における運用期間の違いを説明します。

 

匿名組合型は、数ヵ月〜10年以内の運用期間を設けているクラウドファンディングサービスが多くあります。これは投資金額を少額に抑え、短期運用として活用する顧客が多いためです。

 

一方、任意組合型は10年以上にわたって継続した運用方法を取ります。また、長期運用であるため、投資金額は匿名組合型と比べると高額になるという特徴があります。

 

不動産投資をこれから始める方は、少額から始められる匿名組合型がおすすめです。

 

しかし、投資家によって求める不動産の運用期間は異なります。希望する期間や金額にあった契約方法の検討を行いましょう。

 

違い④:事業者との関係|任意組合は対等

4つ目の違いは、事業者との関係です。

 

匿名組合型は、投資家と実業家がそれぞれ契約をします。投資家は、事業者に不動産の運用を「委託」するため、事業内容に関しては決定権がありません。事業者は投資家の投資額をもとに不動産の運用をして、配当が得られると配分する仕組みです。また、匿名組合員同士のつながりがない契約内容です。

 

一方で任意組合型は、投資家と事業者が対等関係にあります。なぜなら、投資家が不動産の現物を所有し、他の組員と合同で不動産を運用する仕組みのためです。投資家は多くの権限や決定権を持ちます。さらに、事業者に運用業務を「委任」する形式であるため、投資家自身が運用する内容です。そのため、組合員同士による横のつながりも必須です。

 

違い⑤:不動産の登記|任意組合型のみ必要

5つ目の違いは、不動産登記簿への記載有無です。

 

前述の通り、匿名組合型の投資方法は、不動産に対して投資をしてその配当を受ける権利が得られる契約方法です。そのため、不動産の所有権は事業者または不動産会社が所有します。

 

任意組合型の投資方法では、不動産の所有者となり、不動産の運用に関わります。そのため、不動産登記簿への登録が必要です。さらに、登記に必要な費用についても投資家が負担しなければなりません。

 

このように匿名組合型は配当を受ける権利を所有し、任意組合型は不動産の現物を所有する権利があります。

 

違い⑥:責任の範囲|任意組合型は無限責任

6つ目の違いは、投資家の持たなければならない責任の範囲です。

 

匿名組合型は、ファンドの終了時点で事業者が投資家に対して出資金を返金する義務があります。これは、投資家がその配当をもらう権利があるだけで、不動産の所有権や運用の決定権を持たないためです。

 

一方で任意組合型は、不動産物件に対する責任の範囲が無限にあります。万が一、投資した不動産運用で損失が出た際には、投資家がその債務を負う可能性がある契約内容です。不動産運用が失敗に向かえば、出資金より多くの負債を抱える可能性があります。

4. 任意組合型がある不動産クラウドファンディングサービスをチェック

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

任意組合型の契約ができる不動産クラウドファンディングサービスは複数あります。ここからは、異なる特徴のあるサイトを4つご紹介します。それぞれに特徴が異なるため、ご自身に適したサービス会社を選んでください。

 

4.1. TSON|上場企業が運営

(引用:TSON)
(引用:TSON

 

TSONとは、株式会社TSONが運営する不動産AIを用いたクラウドファンディングサービスです。会社が独自に集めた約300万件のデータを分析し、投資家が求める物件を提供しています。匿名組合型・任意組合型どちらの契約方法にも対応しており、対象物件がわかりやすく表示されています。

 

また、日本全国の土地の仕入れ・商品開発・販売を一貫して行っていることも特徴のひとつです。他にも投資期間を約1年間として設定している物件を数多く扱っているなど多くのメリットがあります。契約期間の終了後も引き続き投資を希望する方には、ほかの投資ファンドを迅速に紹介する体制も整えられています。

 

ご利用は、Webサイト上で会員登録・出資者登録をし、プロジェクトを選択することで開始することができます。抽選の結果、出資が確定され、入金が完了次第、運用がスタートします。

 

4.2. 利回りくん|個性的な物件が多数

(引用:利回りくん)
(引用:利回りくん

 

利回りくんは、株式会社シーラが運営する応援型のクラウドファンディングです。社会貢献や地域創生を目的に掲げており、個性的な物件を多く所有しています。

 

投資家の出資金を安全に運用するため、不動産の評価額が落ちた場合は、その負担を会社が負うシステムがあります。

 

1口1万円から投資できるため、初めての方にも始めやすいサービス会社です。会員登録に必要な時間はわずか10分。投資の下落を心配せず、気軽に不動産運用を始めたい方におすすめのサービス会社です。

 

4.3. Good Com Fund|掲載物件が少ない

(引用:Good Com Fund)
(引用:Good Com Fund

 

Good Com Fundは、株式会社グッドコムアセットが運営する不動産クラウドファンディング会社です。1口10万円からの不動産投資ができる会社ですが、エリアは東京23区内、不動産物件は自社マンションのみに限定されています。また、Good Com Fundは任意組合型の不動産投資方法を採用しています。

 

Webサイトに常時掲載されている投資先の数は、他のサービスと比較すると若干少なめです。しかし、投資先物件のエリアが限定されているため、賃貸需要のある物件を選択でき、利回りが安定するシステムが構築されている側面もあります。

 

4.4. アセットシェアリング|少額投資の火付け役だが掲載物件が少ない

 

アセットシェアリングは、株式会社インテリックスが運営する不動産クラウドファンディング会社です。少額投資の火付け役である会社であり、任意組合型の投資方法を取り扱っています。

 

全国各地の物件を運用していますが、Webサイト上の物件掲載件数は他の会社と比べると少なめです。しかし、不動産運用をしている物件情報がわかりやすく掲載されており、投資家にとっては物件選びがしやすい仕組みです。

5. まとめ

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

匿名組合型と任意組合型それぞれの特徴について解説しました。どちらも少額から始められる不動産クラウドファンディングです。しかし、任意組合型は負債を抱える可能性もある契約方法です。

 

また、クラウドファンディングサービスのなかでおすすめのものをいくつかご紹介しました。クラウドファンディングの不動産投資にご興味がある方は、サービスを活用して、まずは少額から始めることをおすすめします。