不動産クラウドファンディングは、まとまった資金がなくても少額から不動産投資に挑戦できる仕組みが人気を集め、利用者が増えつつある投資手法です。この記事では、現在の日本市場や将来性があるかどうかなどを詳しく解説します。
不動産クラウドファンディングが今注目のワケ…将来の市場規模についても解説 (※画像はイメージです/PIXTA)
1. 不動産クラウドファンディングとは
1.1. 不動産クラウドファンディングの仕組み
1.2. 納税も忘れずに
1.3. 不動産クラウドファンディングが注目され始めたワケ
2. すでに海外では市場規模が大きい
2.1. 特にアメリカで人気
2.2. 市場規模拡大の鍵はシステムの整備にあった
2.3. 日本の将来の市場規模はどうなる
3. 他の投資との比較
3.1. 主な投資の特徴を解説
4. 不動産クラウドファンディングのメリット
4.1. 少額から始められる
4.2. 認可を受けた業者に任せられるため安心
4.3. 手間がかからない
5. 不動産クラウドファンディングの注意点
5.1. 投資対象はファンドの事業者?
5.2. 業者選びのポイント
5.3. どんな会社がどう運用している?
6. 市場規模が成長している不動産クラウドファンディングに注目

1. 不動産クラウドファンディングとは

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

現在や将来の市場規模について解説する前に、不動産クラウドファンディングについて詳しく解説します。

 

1.1. 不動産クラウドファンディングの仕組み

不動産クラウドファンディングは、インターネットを通じて複数人が1つの不動産に投資する手法のことです。

 

通常の不動産投資では、1つの不動産を丸ごと購入する必要があるため、まとまった資金を用意しなければなりません。

 

一方、クラウドファンディング型の投資は、小口化された権利を購入します。事業運営会社が不動産を運用し、家賃などで収入を得ると、権利を購入した方に配当が出る仕組みです。

 

ちなみに、購入できる物件は以下があります。

 

  • マンション
  • 一戸建て
  • 宿泊施設
  • 学校
  • リゾート地

 

1.2. 納税も忘れずに

不動産クラウドファンディングで得られた収入の金額によっては、確定申告をする義務があります。確定申告の義務があるのは、以下に当てはまる方です。

 

  • 会社員:給与所得・退職所得以外の所得が年間20万円を超える方
  • 個人事業主:年間の所得が48万円を超える方

 

あくまでも所得で判断するため、利益が基準を超えていても経費により基準を下回った場合は、確定申告の義務はありません。

 

1.3. 不動産クラウドファンディングが注目され始めたワケ

注目されている理由として、不動産特定共同事業法の改正が考えられます。

 

不動産特定共同事業法とは、事業の適正な運営と参加者の利益を確保するために制定された法律です。不動産特定共同事業法の施行当時は、不動産特定事業の許可を受けるために満たすべき条件が厳しく、高い障壁がありました。

 

しかし、過去3回の法律改正において、一定規模以下の不動産特定共同事業を行うための要件の緩和などが行われたことによって参入障壁が取り除かれ、不動産クラウドファンディング事業者の増加につながりました。

 

不動産クラウドファンディング事業者が増えるとともに、業務管理体制の整備義務など、投資家保護の規定が加えられたため、投資家も安心して不動産クラウドファンディングに挑戦できるようになり、注目され始めました。

2. すでに海外では市場規模が大きい

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

海外では、市場規模がすでに拡大しており、特にアメリカでは不動産クラウドファンディングが人気です。

 

人気になった理由と、日本でも市場拡大する可能性があるかどうかについて詳しく解説します。

 

2.1. 特にアメリカで人気

不動産クラウドファンディングは、2012年ごろから不動産クラウドファンディング市場が盛り上がりをみせています。

 

人気になった背景として、リーマンショック後の不動産市場の見直しが契機となりました。回復率が株式市場よりも不動産市場のほうが高かったため、不動産のほうが安全と考える投資家が増えました。

 

また、アメリカ人は収入や生活の変化に応じて、一生に何度も住まいを変える傾向があります。たとえば、転職です。収入や勤務地が変わると、新しい居住地を求めるため、中古物件は需要があります。

 

これらの要因から、不動産投資は人気となり、不動産クラウドファンディングが拡大しました。

 

2.2. 市場規模拡大の鍵はシステムの整備にあった

市場規模を拡大するには、手軽さと運営会社の人員削減がポイントです。

 

投資に参入するには、手軽さが重要です。たとえば、紙で行っていたことを電子システム上で完結できると手続きの簡略化につながります。投資や業務の手続きが減るため、投資者や事業会社の双方にメリットがあります。

 

アメリカでは、不動産取引を仲介する「エスクロー会社」があり、公正な取引が可能です。手続きの簡略化や公正な取引ができるシステムなどによって、事業者が競い合い、利便性の向上につながっています。

 

2.3. 日本の将来の市場規模はどうなる

日本の市場規模は、大きくなると予想されます。なぜなら、不動産特定共同事業法の改正により、市場の流動性が高まるためです。

 

2017年の改正により、以下の手続きが電子システム上でできるようになりました。

 

  • 契約成立前の説明を書面で交付
  • 契約成立時の書面を交付
  • 財産管理報告書

 

改正前は書類を郵送しなければなりませんでしたが、改正後はその必要がなくなり、業務を減らせます。

 

次に2019年の改正により、電子取引業務のガイドラインが明確化されたり、設立して間もない事業者が不動産特定事業に参入できたりするようになりました。

 

事業者の増加につながるため、市場規模はより大きくなるでしょう。

3. 他の投資との比較

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

他の投資方法として、貯金や株式投資があります。不動産クラウドファンディングを含めた、3種類の投資方法を比較しましょう。

 

3.1. 主な投資の特徴を解説

1つ目は、貯金です。銀行口座にお金を預けることで、利子を獲得して稼ぐ方法です。

 

貯金には、以下のメリットがあります。

 

  • 誰でも始められる
  • 専門知識が必要ない
  • 元本が保障されている

 

貯蓄は誰でも始められる反面、得られる利子がとても少ないため、なかなかお金が増えません。

 

2つ目は、株式投資です。企業が発行する株式を売買する投資手法です。

 

株式投資は、株価が安いときに購入し、株価が高くなったときに売却することにより値上がり益を得る方法や、株主に分配される配当金、株主優待で利益を得ることができます。

 

株式投資には、以下のメリットがあります。

 

  • 貯金と比べて大きく稼げる可能性がある
  • 短期投資や長期投資など個人のスタイルに合わせて投資できる
  • NISAを活用すれば税金控除が受けられる

 

株式投資は、資金があれば誰でも始めることができますが、専門用語や経済の動向など知識が必要です。また、大きく値下がりしてしまう可能性や、企業が倒産する可能性もあり、株式投資はリターンに応じてリスクも大きくなります。

 

3つ目は、不動産クラウドファンディングです。

 

不動産クラウドファンディングで投資するメリットは、以下の通りです。

 

  • 少額で投資できる
  • 投資先が開示されている
  • 不動産の運用・管理を任せられる

 

物件の情報が詳しく書かれているため、投資するかどうかを十分に検討できます。

 

たとえば、住所や築年数、入居者情報などを確認可能です。そのため、資金が少なく投資先を慎重に選びたい方におすすめです。

 

不動産クラウドファンディングは少額でも行える投資でありますが、短期間で稼ぐことは難しいでしょう。事業会社が利益を分配しますが、投資金額によって分配される金額が変わります。

4. 不動産クラウドファンディングのメリット

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

「不動産投資は難しい」というイメージがある方もいるでしょう。

 

しかし、不動産クラウドファンディングは、少額で始められ、不動産の管理を業者に任せられるため、投資初心者におすすめです。メリットを3つ解説します。

 

4.1. 少額から始められる

不動産クラウドファンディングは、少額でも投資可能です。その理由は、1つの不動産を丸ごと購入する必要はなく、複数の投資者が不動産を購入するためです。

 

実際、1万円から投資できる事業会社もあります。そのため「貯金の一部を投資したい」方でも気軽に投資することも可能です。

 

少額でも投資できるため、1つの不動産だけではなく2つや3つと投資する物件を増やして、利益を増やすことも容易です。1つの不動産が元本割れしたときでも、他の不動産で利益が発生すれば、利益を得られます。

 

いきなり複数の不動産への投資が不安な方は、数万円で1つの不動産に投資することから始めてみましょう。

 

4.2. 認可を受けた業者に任せられるため安心

認可を受けた業者は国から「不動産特定共同事業者」として認められています。

 

不動産特定共同事業者とは、複数の投資者から資金を募り、不動産投資事業で得られた利益を投資者に分配する事業者のことです。

 

法律でも、以下のように不動産特定事業の定義が記載されています。

 

■「不動産特定事業」の定義

 

不動産特定共同事業契約を締結して当該不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引から生ずる収益又は利益の分配を行う行為

 

引用:e-Gov法令検索「不動産特定共同事業法

 

不動産特定共同事業者として認可されるには、以下の条件を満たさなければなりません(参考:国土交通省「建設産業・不動産業:不動産特定共同事業者の許可の要件」)。

 

  • 資本金要件
  • 純資産要件
  • 役員等の過去の不正
  • 業務管理者の設置など

 

たとえば、資本金要件は投資者の財産を預かる面があるため、十分な財産的基礎が必要です。資本金が少ないと会社を円滑に運営しにくくなるため、投資者に分配金を配れない可能性があります。そのため、ある程度の資金力が必要です。

 

他にも、業務管理者は不動産特定共同事業の実務経験を3年もしくはそれと同等の能力をもつ方である必要があります。不動産特定共同事業者として認可されるためには、さまざまな要件を満たさなければなりません。

 

4.3. 手間がかからない

不動産クラウドファンディングは、手間がかからないため、初心者や仕事で多忙な方におすすめです。なぜなら、入金後は不動産の管理を業者が受け持つためです。

 

通常の不動産投資は、不動産を購入したあとにリフォームや管理などが必要であるため、手間がかかります。

 

しかし、不動産クラウドファンディングでは、事業会社が物件の購入や管理などをするため、初心者や会社員でも投資できます。

 

不動産クラウドファンディングで投資するには、以下の手順で進めましょう。

 

  1. 事業会社を選択
  2. 会員登録(口座情報などを入力)
  3. 募集されているファンドに申し込む

 

物件情報も詳しく掲載されているため、投資するかどうかを十分に検討してから投資をしましょう。

5. 不動産クラウドファンディングの注意点

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

気軽に始められる投資であっても、投資であることには変わりません。そのため、分配金の原資や業者選びのポイントなどを十分に理解することをおすすめします。

 

投資を始める前に、以下の点に注意しましょう。

 

5.1. 投資対象はファンドの事業者?

通常の不動産投資と異なり、不動産クラウドファンディングでの投資先は不動産ではなくファンドの事業者である点に注意しましょう。

 

不動産クラウドファンディングで得られる収入は、ファンドの事業者が購入した不動産で得られた収入が原資です。つまり、ファンドの事業者を信用して投資するため、事業者について調べておくことをおすすめします。

 

もし、以下のようなマクロ環境が要因で事業者が存続の危機に陥った際は危険です。
 

  • 政治的環境
  • 経済的環境
  • 社会的環境
  • 技術的環境

 

ファンドの事業者が円滑に事業を運用できなくなったときに備えて、投資の際に交わした契約書などを確認しておきましょう。

 

5.2. 業者選びのポイント

不動産クラウドファンディングはファンドの事業者を信用して投資するため、業者選びは重要です。そこで、業者選びのポイントを4つ紹介します。

 

  • 不動産特定共同事業法の免許を取得している
  • 先端のプラットフォームを導入している
  • 経費削減がうまくいっている
  • 倒産のリスクはない

 

まず、不動産特定共同事業法の免許の取得は必須です。

 

他にも、募集している不動産の頻度や種類、実績を確認するためにプラットフォームが充実しているかどうかを確認しましょう。

 

このように、投資したい不動産を取り扱っているかどうかや倒産リスクの大きさなどの確認がリスクヘッジにつながります。

 

5.3. どんな会社がどう運用している?

実際にどのようなファンドの事業者があるかを解説します。マンションとテナントを扱っている会社の利回りや運用期間は、以下の通りです。

 

対象物件

マンション、テナント

期待利回り

4〜12%

運用期間

3〜24ヵ月

 

この事業者の期待利回りは4〜12%であるため、不動産投資としては利回りが高いほうです。ちなみに利回りとは、投資金額に対して一定期間後にもらえる収益の割合のことを指します。

 

10%を超える高利回りの案件もあるため、利益率を上げたい方におすすめです。しかし、高利回りの案件は枠が埋まりやすいため、早めに決断しましょう。

 

小規模な事業会社ではありますが、空き家や古民家などを扱っている会社もあります。

 

対象物件

空き家、古民家

期待利回り

6〜7%

運用期間

12ヵ月

 

地方の物件を主に扱っているため、都心の不動産と比べて高利回りです。なぜなら、都心と比べて地方の不動産は比較的安く購入できるためです。

 

利回りが高い一方で、投資した物件が利用されないと利益になりません。そのため、街の発展や人口の増加の可能性などさまざまな点を考慮してから、投資することをおすすめします。

 

このように、小規模な会社の参入も増えているため、不動産クラウドファンディングはさらに発展すると予想されます。

6. 市場規模が成長している不動産クラウドファンディングに注目

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産クラウドファンディングは将来的にシステムが発展し、市場規模は拡大すると予想されます。市場が拡大するにつれて認知度が向上するため、クラウドファンディングで投資できる不動産も増加します。

 

また、不動産クラウドファンディングは事業会社を信用して投資する仕組みです。そのため、会社の安定性や実績などをしっかり調査しましょう。