1. 不動産投資クラウドファンディングとは?
不動産投資のクラウドファンディングとは、ひとつの不動産を複数の投資家からインターネットを通じて募った資金で運用する方法です。
募集から償還までの流れは、以下の通りです。
- 事業者がファンドを立ち上げ、投資家から資金を募る
- 事業者は集まった資金を元にファンドの運用を開始する
- ファンドの運用期間が満期になった段階で、家賃収入と売却益を投資家に分配する
不動産投資クラウドファンディングでは、1口数万円と少額から投資できる点が魅力です。また、初心者でも参加しやすいことから、個人投資家の注目を集めています。
1.1. 不動産投資クラウドファンディングのメリット
現物の不動産投資は、数千万円から数億円規模の資金が必要です。それに対し、クラウドファンディングでは前述の通り1口数万円から投資できます。
また、事業者の多くはオンラインで比較的簡単に応募できるシステムを採用しています。そのため、他の金融商品に比べて参加しやすい点が特徴です。
現物の不動産投資では、物件の維持管理が負担になります。その点、クラウドファンディングでは維持管理や入居者の募集、物件の売却などをすべて事業者が行うため、運用に手間がかかりません。
2. 不動産投資クラウドファンディングを始める際に確認すべき点
不動産投資のクラウドファンディングを始めるにあたって、どの情報をもとに投資先を決めるかが重要です。この章では、判断の基準となる以下の7つのポイントをご紹介します。
- 運営会社の取引実績
- 物件数の多様性
- 取引の方式
- 優先劣後方式の劣後出資割合
- 契約運用期間
- 開示物件情報の詳細さ
- 物件の状態や周辺環境
2.1. 運営会社の取引実績
不動産投資のクラウドファンディングは比較的新しいジャンルの金融商品です。そのため、事業者の企業情報やファンドの取引実績が、投資先を選ぶ基準のひとつになります。
チェックする主な項目は、以下の通りです。
- 運用会社の事業内容
- 取引件数の多さ
- クラウドファンディング事業を開始してからの期間の長さ
運用会社選びでは、不動産に関する事業を継続するポテンシャルがあるかを見極めることが重要です。
2.2. 物件数の多様性
事業者が取り扱っているファンドの数が多いほど、投資先の選択肢がより広がります。
不動産投資のクラウドファンディングは近年認知度が高くなっています。そのため、募集されてから完売するまでの期間が短くなっている傾向にあります。投資先を迅速に探し出すためには、ファンドを数多く運用している事業者を押さえておくことが重要です。
2.3. 取引の方式
不動産投資のクラウドファンディングの応募方式は、以下の3パターンに分類されます。
①抽選式 |
募集期間内に申し込んだすべての投資家から抽選を行い、出資者を選ぶ方式。 事業者によっては、申し込んだ口数に応じて確率が変動する仕組みを採用しているケースがある。 |
②先着式 |
募集金額の上限に到達するまで、投資家を先着順で優先して受け付ける方式。 申し込みが完了した時点で投資が確約される。 |
③オークション式 |
現状では、オークション式を採用している事業者はほとんどない。 しかし、株式会社クラウドリアルティは「均一利回りオークション」のシステムを独自に開発し、 特許を取得。オークション式を採用している数少ない事業である。 |
2.4. 優先劣後方式の劣後出資割合
不動産投資のクラウドファンディングの分配金に関する割合は、優先劣後方式を採用しているケースが一般的です。
優先劣後方式とは、2種類の出資者から資金を得て運用する方法を指します。
出資者①:優先出資者 |
・出資者は投資家 ・事前に決められた配当額を優先して受け取れる |
出資者②:劣後出資者 |
・出資者は事業者 ・最終的に損失が発生した場合、劣後出資者が出資した分から先に補填される ・利益が事前に決められた配当額を超えた場合、超えた分だけ利益を得られる |
損失額が劣後出資の出資額を超えない限り、投資家の元本が減少することはありません。つまり、劣後出資の割合が大きいほど、投資家の元本割れが発生するリスクを抑えられるのです。
2.5. 契約運用期間
不動産投資クラウドファンディングは、同じ事業者のファンドであってもファンドによって運用期間が異なります。運用期間中の譲渡や途中解約ができないケースが多く、長期運用が難しい商品です。短いもので3ヵ月、長くても2年〜3年が相場です。
また、市場や経済状況によって、予定期間よりも前倒しで終了するケースや、逆に期間を延長するケースがあります。ファンドを選ぶ際には、運用期間と契約内容をあらかじめ調べておきましょう。
2.6. 開示物件情報の詳細さ
ファンドの情報量は、事業者によって異なります。情報量の多さは、不動産投資を成功させるための重要な要素です。基本的な情報だけではなく、運用に関わる詳細も開示しているかどうかが、事業者選びの判断材料になります。
少なくとも以下の情報を公開している事業者を選びましょう。
- 運用期間
- 募集総金額
- 想定利回り
- 物件の情報
- エリアの情報
- 出資比率
- リスク情報
不明な点は、直接事業者に確認することをおすすめします。
2.7. 物件の状態や周辺環境
不動産投資では、賃貸需要の有無が投資の成功を左右します。そのため、周辺の環境が整っているか、物件の管理や状態は万全かといった情報が重要です。
ファンドの概要ページで物件や周辺地域の写真を多く掲載しているかどうかを確認しましょう。可能であれば、現地まで足を運ぶことをおすすめします。
3. 不動産投資クラウドファンディングのリスク
初心者でも手軽に始められる不動産投資のクラウドファンディングですが、投資である以上リスクは避けられません。他の不動産投資に共通するリスク以外にも、クラウドファンディング特有のものがあります。
3.1. 比較的レバレッジ効果が低い
レバレッジとは、少ない資金で高い収益を得るための手段です。
たとえば、事業者に一定の金額を証拠金として預けることで、倍額の取引ができる仕組みのことを指します。100万円の自己資金で3倍のレバレッジ取引をした場合、300万円までの取引が可能です。仮に投資した商品が10%値上がりすると、レバレッジをしなかった場合との差額は以下のようになります。
レバレッジ取引 |
(100万円×3倍)×10% |
自己資産で取引 |
100万円×10%=10万円の利益 |
レバレッジでは、同じ投資金額で倍の利益を得られる可能性があります。しかし、不動産投資のクラウドファンディングでは、自己資金での投資が原則です。そのため、少額で大きな利益を得るには不向きな投資方法といえます。
3.2. 元本割れの恐れがある
元本割れとは、運用後に償還された金額が、投資した金額を下回ることを指します。たとえば、資本金10万円をある物件に投資した結果、償還された金額が8万円だった場合、2万円の元本割れが起きたことになります。
投資をするうえで、元本割れのリスクは避けて通れません。現物の不動産投資と同様、不動産クラウドファンディングにおいても、以下のような場合は元本割れが発生します。
- 運用期間中に投資先の不動産価値が下落した
- 入居率が低く、想定していた収入を得られなかった
事業者によっては、元本割れのリスクを軽減する対策が取られているところがあります。応募するファンドの概要を把握し、リスクの説明や返済原資などを確認しておきましょう。
3.3. 運用期間中の中途解約ができない
不動産投資のクラウドファンディングでは、運用期間中の解約を原則不可としている事業者が多くあります。これは、仮に急な出費で資金が必要になったとしても、運用終了まで現金化できないことを意味します。
クラウドファンディングでは、投資家から募った資金でファンドを運用します。そのため、解約した分だけ運用資金が減少します。ファンド自体に影響を及ぼすため、中途解約ができないように定めていることが通例です。
中途解約を認めている事業者も一部存在しますが、その場合は事務手数料が発生する可能性があります。
3.4. 希望する物件に出資できない可能性がある
不動産投資のクラウドファンディングは人気の高い金融商品です。優良物件のファンドは、すぐに予定金額に達成して応募できない可能性があります。
また、掲載しているファンドの数が多くても、現在募集中の物件はそれほど多くありません。ひとつの事業者につき、おおむね1件から3件程度です。そのため、継続して投資したい場合は、複数の事業者を利用することがおすすめです。
3.5. 運営会社が事業撤退するリスクがある
不動産投資では、事業者の倒産や事業撤退のリスクを考慮しておくことが重要です。市場や経営の悪化により事業者が倒産した際は、投資先の不動産にも影響が及びます。
倒産によるリスクを下げる対策として、倒産隔離をしている事業者を選ぶことが有効です。倒産隔離とは、事業を運営している会社(事業主体)と、出資を募る会社(SPC)を分けて運用する仕組みを指します。「GK-TK スキーム」と呼ばれる方法です。
この場合、不動産の所有権はSPCが保有しているため、事業主体が倒産しても投資した不動産に影響が及ぶことはありません。
4. 不動産投資クラウドファンディングのリスクを回避する運用方法
前述したリスクを少しでも減らすためには、いくつか対策を立てる必要があります。この章では、初めて不動産投資のクラウドファンディングを始める方向けに、比較的簡単な方法をご紹介します。
4.1. 少額から始める
不動産投資のクラウドファンディングは、1口あたりの最低投資額はおよそ1万円です。そのため、投資初心者でも比較的気軽に始められるというメリットがあります。
不動産投資に自信が持てない段階では、小さな金額から始めることがおすすめです。回数を重ねていくことで知識やスキルが身につき、ファンドを選ぶ目が養われます。
4.2. 短期間運用をする
不動産投資のクラウドファンディングは、ファンドによって運用期間が異なります。短いものは3ヵ月程度から、長いものは1年以上です。長期間の運用では、市場や不動産価格の影響を受ける可能性が短期間の運用よりも大きくなります。そのため、投資に慣れていない場合は運用期間が短いファンドを選んで、リスクを抑えることが得策です。
4.3. 分散させる
投資にはリスクがつきものです。不動産投資では、投資した不動産の価値が下落したり、空室が増えたりすることにより、損失が生じるケースがあります。ひとつの投資先だけでは、損失した際のフォローができません。
損失額を低く抑えるためには、性質が異なる複数のファンドに投資して、リスクを分散させることが重要です。
不動産投資のクラウドファンディングは比較的少額から投資できます。そのため、リスク分散に適した商品であるといえます。
4.4. 知識と経験を蓄え続ける
投資の知識を蓄えるには、座学よりも実践が重視されます。実際に投資することで初めて理解できることがあります。経験を重ね、自分に合った投資スタイルを見つけましょう。
また、効率よく利益を上げるためには情報収集が欠かせません。毎日のニュースをチェックしたり、知識が豊富な相談相手を見つけたりすることが重要です。
5. 不動産投資クラウドファンディングのおすすめ運営会社
この章では、運用実績が豊富で、比較的安定した運用を行っている事業者を2社ご紹介します。また、ファンドを選ぶ際の基準として、平均的な想定利回り・劣後出資の割合・運用期間も合わせて記載しています。
5.1. クリアル株式会社|CREAL
「creal」は、クリアル株式会社が運用している不動産投資クラウドファンディングです。2022年5月の時点で組成ファンド数が59件、うち運用が終了しているファンドが44件。すべて元本割れをすることなく償還され、配当されています。
また、ファンドの多くはマスターリース契約を結んでおり、賃料収入が保証されているので、安定した運用を始めたい方におすすめです。
平均想定利回り |
平均劣後出資の割合 |
平均運用期間 |
約4.7% |
要会員登録 |
16ヵ月 |
※出典:CREAL
※2022年5月現在、検索結果上位20件から算出
5.2. LAETOLI株式会社|COZUCHI
LAETOLI株式会社が運用している不動産投資のクラウドファンディング「COZUCHI」では、リターンの上限を設定していません。そのため、想定した利回りよりも高い配当を得られる可能性があります。
また、ファンドの概要ページでは投資シミュレーションを設置しています。投資金額に対する分配金の計算をする際に便利です。
さらに、COZUCHIでは買取申請をすることで、運用中でも換金が可能です。ただし、事務手数料が発生します。
平均想定利回り |
平均劣後出資の割合 |
平均運用期間 |
約7% |
約20% |
16.5ヵ月 |
※出典:COZUCHI
※2022年5月現在、検索結果上位20件から算出
6. まとめ
不動産投資のクラウドファンディングは、以下の理由から不動産投資の初心者におすすめです。
- 募集方法が比較的簡単
- 比較的少額から始められる
- ファンド情報の開示量が多い
- 投資者を損失から守る対策がとられている
- 短期間で運用可能
本記事でご紹介したさまざまな対策は、リスクを軽減させるために有効的な手段です。
不動産投資のクラウドファンディングで少額からコツコツ投資し、自分に合った投資スタイルを見つけましょう。