1. 不動産投資クラウドファンディングとは
不動産投資型クラウドファンディングとは、投資家から資金を集めて不動産を購入し、運営する投資方法です。
一定以上の投資資金が集まれば運用が開始され、投資家は家賃収入や不動産の売却益などの利益に応じ、分配金を得られます。少額から始められるため、実物不動産投資のようにまとまった資金やローンを組む必要はありません。
この不動産投資型クラウドファンディングには、「不動産投資型」「融資型」「株式型」があります。
2. 運用期間とは
投資家から集めた資金を基にして運用を開始してから、元本を償還するまでの期間を「運用期間」といいます。ほとんどの不動産投資クラウドファンディングでは運用期間が設定されており、短期と長期に分けられます。
運用期間中は、譲渡や途中解約に条件が設けられていることがほとんどです。ただし、投資後は償還まで待つのみであるため運用の手間はかかりません。また、状況によっては予定よりも早く運用期間が終了するケースもあります。
3. 運用期間の目安
不動産投資型クラウドファンディングは、ファンドによって数ヵ月の短期から数年の長期までさまざまな運用期間が存在します。
また、不動産クラウドファンディングの種類によって運用期間の目安にも差があります。
不動産クラウドファンディング |
運用期間 |
備考 |
---|---|---|
通常の不動産投資型 |
短期:3ヵ月から1年程 長期:2年から3年程 |
ー |
融資型 |
短期:数ヵ月から6ヵ月程 長期:1年から3年程 |
融資先の企業が返済を早めて早期償還になり、 |
株式型 |
設定なし |
エグジット(M&AやIPO)による売却が条件となるため、 |
4. 運用期間が短いファンドのメリット
この章では、運用期間が短いファンドのメリットを紹介します。
4.1. 投資リスクを抑えられる
投資型クラウドファンディングの多くは、運用期間内での契約解除に条件が設けられています。また、運用期間が終了するまでは資金を自由に動かせません。
そのため、運用期間が短い案件では、企業の倒産リスクに巻き込まれるリスクを軽減できます。運用期間が短いと、経済状況や市況が大きく変化する可能性も低いため、損失リスクも軽減できます。
4.2. 投資先を変えやすい
今投資している案件よりも利回りがよい案件に投資したいと考えたときに、投資先を変更しやすいことがメリットです。不動産クラウドファンディングの運用期間が短いと、資金が戻ってくるまでの期間も短くなるためです。
5. 運用期間が短いファンドのデメリット
運用期間が短いファンドのデメリットを踏まえて、運用期間から投資判断を適切にできるようにしましょう。
以下で2つのデメリットについて解説します。
5.1. 投資効率が悪くなる
短期の運用期間の大きなデメリットは、投資の効率が悪くなることです。これは、不動産投資クラウドファンディングでは、投資先への入金から実際の運用開始までに時間がかかることが理由です。
また、運用終了から口座に資金が戻ってくるまでに時間がかかるため、どうしても運用期間にタイムロスが発生します。運用が終了していても、資金が戻ってくるまでの間は、その資金を別の案件で運用することはできません。
そのため、運用開始後の流れまでを事前に確認してから、投資判断を行いましょう。
5.2. 最適な案件があるとは限らない
短い運用期間だと、投資効率を上げるために次の投資先を探し続ける必要があります。
投資している運用期間が終わり、資金が戻って来てから新しい投資先を見つけようとしても、適切なファンドがあるとは限りません。投資先が見つかるまでに時間がかかると、本来運用できた資金を放置することになります。
自己資金を常に運用へ回したい方にとっては、短い運用期間はあまり適していないといえるでしょう。
6. 運用期間が長いファンドのメリット
この章では、運用期間が長いファンドのメリットを紹介します。
6.1. 収入が期待できる
多くの不動産投資クラウドファンディングでは、運用期間中は毎月分配金が支払われます。長期運用のファンドは、運用期間が長期になればその分利益が得られ、トラブルが発生しない限りは安定した収入を確保できます。
ただし、運用期間が長期になれば企業の倒産リスクや市況の影響を受けやすくなります。
6.2. 投資判断の時間や手間が少ない
長期の運用期間での大きなメリットは、運用にかかる時間や手間が少ないことです。
短期の運用では新しいファンドを都度探し続けなければなりませんでしたが、長期の運用では案件を探す手間の削減ができます。
7. 運用期間が長いファンドのデメリット
以下で、運用期間が長いファンドのデメリットをご紹介します。
7.1. 市況の影響を受けやすい
2年や3年と運用期間が長期になるほど、将来的な経済状況を予測することが困難になります。
たとえば、店舗運営の事業に出資した場合、短期間であれば閉店する可能性は低くても、長期になると閉店する可能性が高くなるためです。閉店してしまうと、資金の回収に時間がかかる可能性があります。
また、住居不動産の場合でも、以下のように需要が変動することで、市場価値が上がってしまうリスクがあります。
- 大学のキャンパスが変わって、学生がいなくなる
- 大手企業が撤退することで、近隣の社員がいなくなる
- 世界的な金融ショックが起こって、不動産全体の需要が低下する
このように、事業の先行きを判断しなければならない点は、デメリットといえるでしょう。
7.2. 資金の拘束が長い
運用期間が長くなると資金の拘束が長くなるため、投資資金を他に移しにくくなります。
途中解約も難しく、一度投資してしまうと資金を自由に引き出せません。資金が拘束されている間は、他の投資はもちろん、結婚や出産などでお金が必要になった際にも引き出せません。
長期のファンドを選択する際には、今後の収支計画を考えてから投資しましょう。
8. 不動産クラウドファンディングと他の短期投資とを比較
短期の投資には、不動産投資クラウドファンディング以外にもさまざまな種類があります。不動産クラウドファンディングよりもリスクの許容が大きい方は、以下も試すとよいでしょう。
■株式投資
難易度 |
リターン |
資金 |
中 |
中 |
約15万円から |
企業が発行した株式を購入する投資方法です。株式投資の短期運用は、数ヵ月で銘柄の売買を繰り返し、差額によって利益を得ます。
また、不動産クラウドファンディングに比べると、投資先の判断には銘柄の知識が必要なことや、リスクが比較的高いことが特徴です。
■FX
難易度 |
リターン |
資金 |
高 |
高 |
約4万円から |
外国の通貨を売買し、為替レートの差額を利益として得る投資方法です。24時間いつでも取引が可能で、最大25倍のレバレッジで取引できます。そのため、大きな利益を得られる反面、損失も大きくなります。
不動産クラウドファンディングよりもリスクは比較的高くなりますが、短期間で大きな利益を狙いたい方にはおすすめです。
9. 運用期間におけるJ-REITや現物不動産投資との違い
不動産投資型クラウドファンディングと似ている不動産投資に、「J-REIT」「現物不動産投資」があります。ここでは、それぞれの違いについて詳しく紹介します。
9.1. J-REIT|運用期間を自由に選べる
J-REIT(Jリート)とは、不動産の投資信託です。出資金はプロによって不動産を購入・運用する目的で使われ、利益に応じて分配金を得られます。
J-REITは、株式投資のように銘柄を売買できる証券です。不動産投資型クラウドファンディングとは異なり、いつでも現金化できることや、運用期間を自由に選べることがメリットです。
一方、不動産投資型クラウドファンディングに比べて購入物件を自由に選べず、日経平均株価や為替などの影響を受けやすいという特徴があります。そのため、購入した銘柄をチェックする手間・時間があり、運用期間に縛られたくない人にはおすすめの手法といえるでしょう。
9.2. 現物不動産投資|運用期間は自由だが、出口戦略にコストがかかる
現物不動産投資とは不動産を購入し、家賃や売却益などで利益を直接得る投資方法です。
不動産を保有して管理し、用途(事業用や住居用など)や運用期間を自由に選択可能です。ただし、現物不動産投資のデメリットとして、実際に物件を購入する必要があることが挙げられます。
物件の購入には、数百万円から数千万円の初期費用がかかります。また、リフォームや入居者募集などの労力がかかり、売却する際にも時間や手間がかかります。所有権があり、運用する当事者のため、リスクもリターンも大きいことが特徴です。
一方で、不動産投資型クラウドファンディングは、運用する手間や費用は運営会社がすべて担います。また、運用期間が終われば、分配金とともに現金で振り込まれます。
現物不動産投資は、出口戦略を含めた運用に手間と費用を割くことができ、大きな利益を得たい人におすすめの投資方法です。
10. 運用期間以外の不動産投資クラウドファンディングを比較するポイント
不動産投資型クラウドファンディングサービスを比較する際は、運用期間以外にもさまざまな比較ポイントがあります。以下で詳しくご紹介します。
10.1. 物件の選択肢
不動産投資型クラウドファンディングサービスを選ぶ際には、取り扱っている不動産の豊富さがポイントです。なぜなら、扱っている不動産が多いほど選択肢が増え、さまざまな不動産への投資が可能になるためです。
ただし、物件数が多ければよいというわけではなく、投資に最適な物件かどうかに注目しましょう。たとえば、住居用不動産は景気に左右されにくく、安定した収益が見込めます。その反面、大きな利益はあまり期待できません。
10.2. 案件の規模
案件の規模とは、募集されている金額のことです。不動産投資型クラウドファンディングでは、1,000万円程のマンション一室から数億円規模の大型物件まで幅広く募集しています。自己資金ではなかなか運用できない人も、案件によっては高単価な物件を運用できるでしょう。
また、不動産投資クラウドファンディングでは、病院や学校など、個人では投資が難しい不動産に投資できることも魅力の一つです。
10.3. 不動産情報の開示量
企業によって不動産情報の開示情報量は異なるため、不動産投資クラウドファンディングを選ぶ際のポイントとなります。不動産情報は開示量が多いほど、その物件が投資に適しているかの判断材料に役立ちます。
物件の所在地や種別、築年数、設備などの物件情報だけではなく、空室率や収支シミュレーションでも開示されていることが理想です。物件の情報を把握しないまま投資すると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
10.4. 優先劣後の出資割合
優先劣後出資とは、運営会社も投資家と一緒に投資することをいい、元本割れのリスク軽減に役立つ仕組みです。優先劣後は、運営会社の出資割合が高いほど投資家の安全性は高くなり、募集額は低くなります。
ほとんどの不動産投資型クラウドファンディングでは、優先劣後出資を採用していますが、その割合はファンドによって異なります。
10.5. 運営会社の信頼性
不動産投資型クラウドファンディングの運営会社には、大手グループ企業や中小企業などさまざまです。創業してから長期間経過していて不動産事業の実績が多い企業は、知識やノウハウが豊富だと判断できるため信頼度は高くなります。
また、東証一部上場している企業であれば資本力が高く、倒産のリスクも低いため安心度が高くなります。ただし、上場企業が運営するファンドであっても、元本割れのリスクがないわけではありません。
10.6. トラブル発生時のサポート
不動産投資型クラウドファンディングを選ぶ際には、貸し倒れや返済遅延に陥ったときにどのようなサポートがあるのかも確認しましょう。たとえば、前述した優先劣後の出資割合です。
また、分別管理や投資家保護への取り組みがされているかも判断のポイントです。
11. 償還金の扱い
償還とは運用期間が終了した日のことをいい、償還金とは投資家が受け取る資金のことです。償還金は、以下のような扱いになります。
- 利払いと一緒に投資家の指定口座に振り込まれる
- 再組成されたファンドに継続投資
- 利払いと元金が預かり金として処理される
12. 償還金の受け取り方
償還金の受け取り方には、デポジット口座に入金される方法と入出金口座に直接振り込まれる方法があります。
デポジット口座を利用すると、銀行口座への出金手続きをする際に手数料がかかる場合があります。銀行口座を利用する際には手続きは不要で、手数料もかかりません。
13. まとめ
不動産クラウドファンディングでは、物件の運用期間によってメリット・デメリットがそれぞれ異なります。自分の投資スタイルを明確にし、運用資金の動かしやすさや拘束期間などから、長期と短期のどちらが向いているかを判断することが大切です。
また、さまざまな案件を比較し、信頼できる企業を選定しましょう。