インターネットを通じて少額から不動産投資ができる「不動産クラウドファンディング」が注目されています。不動産クラウドファンディングは基本的に節税効果がないとされていますが、ケースによっては相続税対策になることをご存じでしょうか? 本記事では、クラウドファンディングに関する税金や確定申告を中心に、相続税対策などについても解説します。
不動産クラウドファンディングにおける税金・確定申告・節税対策 (※画像はイメージです/PIXTA)
1. 不動産クラウドファンディングで所得が発生する仕組み
2. 税率20.42%の分配金源泉徴収が発生
2.1. 不動産クラウドファンディングの分配金は「雑所得」扱い
2.2. 不動産クラウドファンディングにおける計算例を紹介
3. 不動産クラウドファンディングで確定申告が必要なケース
① 雑所得の総額が20万円を超えている
② 課税所得の総額が694万円以下
③ 確定申告が別の理由で必要
4. 確定申告の具体的な手順
STEP1:確定申告が必要かを確認する
STEP2:必要書類を集める
STEP3:確定申告の書類を作成する
STEP4:税務署へ提出する
STEP5:還付金の受取・必要な金額の納税を行う
5. 匿名組合型だと節税は困難
6. 任意組合型ならば節税対策が可能(相続税)
6.1. 相続税の概要
6.2. 任意組合契約と匿名組合契約の違い
6.3. 評価額の差額で節税対策
6.4. 任意組合型の物件を紹介している不動産クラウドファンディング事業者
7. まとめ

1. 不動産クラウドファンディングで所得が発生する仕組み

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産クラウドファンディングは、事業者が一般投資家から資金を募り、集めた資金を使って不動産の取得・運営をします。そして、この事業で得られた利益が投資家に分配され、所得が発生する仕組みです。

 

不動産の種類はさまざまで、居住用マンションや商業ビルの賃貸、空き家のリノベーション、リゾート地の開発などがあります。

2. 税率20.42%の分配金源泉徴収が発生

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産クラウドファンディングで得た分配金には、税率20.42%の分配金源泉徴収が発生します。

 

ここでは、会計上の分配金の扱い方や税金の計算例をご紹介します。

 

2.1. 不動産クラウドファンディングの分配金は「雑所得」扱い

不動産クラウドファンディングで受け取った分配金は、会計上「雑所得」として扱われ、課税の対象となります。

 

また、分配前に事業者が分配金源泉徴収をするため、実際受け取る分配金は20.42%を差し引いた金額です。そのため、この差し引かれたあとの金額が雑所得として扱われます。

 

後ほど解説しますが、年間の雑所得が20万円を超える場合、確定申告が必要になります。

 

2.2. 不動産クラウドファンディングにおける計算例を紹介

分配金源泉徴収の税率は以下の通りです。

 

「所得税20%+復興特別所得税0.42%」=20.42%

 

たとえば、分配金利回り5%の不動産クラウドファンディングに200万円投資した場合、次のような計算になります。

 

投資額

200万円

分配金

10万円(200万円×5%)

源泉徴収額

20,420円(10万円×20.42%)

分配金の手取り額

79,580円(10万円-20,420円)

 

3. 不動産クラウドファンディングで確定申告が必要なケース

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産クラウドファンディングで受け取った分配金は。「雑所得」として扱います。ただし、下記のようなケースでは、確定申告が必要になります。

 

① 雑所得の総額が20万円を超えている

不動産クラウドファンディングで受け取った分配金とそれ以外の雑所得を含めた総額が20万円を超えた場合、確定申告が必要になります。

 

雑所得には、分配金以外にも下記のような所得も含まれます。

 

  • 年金収入
  • 副業収入
  • ネットショップやインターネットオークションなどの収入(営利目的)
  • FX・仮想通貨取引などの収入

 

分配金が20万円以下であっても、上記のような雑所得を合わせて20万円を超えた場合、確定申告が必要になります。

 

② 課税所得の総額が694万円以下

この場合、必須ではありませんが、確定申告をすることで節税面の恩恵が受けられます。

 

分配金は事前に20.42%の税金が徴収されているため、所得税率が20%以下の人は、税金を払いすぎていることになります。

 

課税所得金額に対する税率は、以下の通りです。

 

課税所得金額

税率

1,000〜1,949,000円まで

5%

1,950,000〜3,299,000円まで

10%

3,300,000〜6,949,000円まで

20%

 

課税所得が6,949,000円以下の人は、確定申告をして源泉徴収額を記入すれば、払いすぎた税金の還付を受けられます。

 

③ 確定申告が別の理由で必要

通常、会社員は年末調整があるため、確定申告の必要はありません。ただし、下記のような人は確定申告が必要となります。

 

  • 年収2,000万円以上の会社員
  • 青色申告者
  • 医療費控除や寄付金控除(ふるさと納税)を受ける人

 

このように、もともと確定申告が必要な人は、雑所得の金額が20万円以下であっても、確定申告が必要です。

4. 確定申告の具体的な手順

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

雑所得の金額が20万円を超える場合、確定申告が必要です。ここでは、確定申告の手順について具体的に解説します(参考:国税庁「申告手続の流れ」)。

 

STEP1:確定申告が必要かを確認する

前述したとおり、雑所得の総額が年間20万円を超えている場合は確定申告が必要です。

 

受け取った分配金を合算して、そもそも確定申告が必要かどうかを改めて確認しましょう。

 

STEP2:必要書類を集める

確定申告が必要とわかったら、下記の書類を用意しましょう。

 

支払調書・年間取引報告書

・分配金や源泉徴収額の内訳を記載した書類

・不動産クラウドファンディング事業者が1年に1度発行する

給与所得・公的年金等の源泉徴収票

・会社員の給与や公的年金の源泉徴収票

所得控除の関連資料

・社会保険料や生命保険の控除証明書、寄付金 受領書、医療費控除の明細等

確定申告書

・確定申告書Aの第一表、確定申告書Aの第二表 ほか

参考:国税庁「確定申告の際にご持参いただくもの

 

確定申告書類は、税務署や確定申告会場で直接受け取るか、国税庁のホームページからダウンロードすることで入手できます。また、国税庁ホームページ内の「確定申告書等作成コーナー」から、インターネット上で確定申告書を作成・申告も可能です。

 

STEP3:確定申告の書類を作成する

分配金の確定申告には、「確定申告書Aの第一表」と「確定申告書Aの第二表」への記入が必要です。それぞれの記入方法を解説します。

 

【確定申告書Aの第一表】

「収入金額等」と「所得金額」欄の「配当」項目に、源泉徴収前の分配金合計金額を記入する。

 

【確定申告書Aの第二表】

「所得の内訳」と「雑所得(公的年金等以外)・配当所得・一時所得に関する事項」の欄に下記の必要事項を記入。

 

【必要事項】

所得の種類

「配当」と記入する

種目・所得の生ずる場所

分配元の事業者名等を記入する

収入金額

源泉徴収前の分配金の合計金額

所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額

収入金額の内、源泉徴収された金額(20.42%)

 

書類への記入は、紙の書類に手書きで記入するか、国税庁ホームページからインターネット上で作成しましょう。

 

STEP4:税務署へ提出する

確定申告書を作成したら、税務署へ提出します。

 

手書きで作成した場合は、郵送もしくは窓口へ提出します。国税庁のホームページで作成した場合は、印刷して税務署に提出もしくは郵送をしましょう。また、インターネット上で提出することも可能です。

 

インターネット上で提出する際は、「ID・パスワード方式」「マイナンバーカード方式」の方法から選べます。「ID・パスワード方式」では、税務署が発行するIDとパスワードが必要です。本人確認書類を持参して、税務署の窓口で発行しましょう。

 

また、マイナンバーカードとICカードリーダーがあれば、国税庁ホームページ内の「確定申告書等作成コーナー」からIDとパスワードを取得できます。

 

「マイナンバーカード方式」は、マイナンバーカードを用いて、申告書類を提出できます。ただし、この方法ではマイナンバーカード取得済み、かつマイナポータルアプリに対応した端末を所持している必要があります。

 

対応端末は、マイナポータルの公式サイト「マイナポータルアプリに対応しているスマートフォン等を教えてください。 | よくある質問」からご確認ください。

 

STEP5:還付金の受取・必要な金額の納税を行う

確定申告書類が不備なく受領されたら、税金の還付もしくは納税金額が通知されます。

 

税金を払いすぎていた場合は、還付金が受け取れます。ただし、最終的な所得に対する税率よりも、分配金の源泉徴収税率が少なかった場合は、不足分の納税が必要です。

 

還付金は申請後おおよそ1ヵ月〜1ヵ月半程度で、指定した預貯金口座へ振り込まれます。振込以外にも、ゆうちょ銀行や郵便局の窓口に行って受け取る方法もあります。

5. 匿名組合型だと節税は困難

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

匿名組合型とは、「匿名組合契約」に基づき、投資家が事業者に金銭を出資する仕組みです。匿名組合契約は、不動産に投資家自身の氏名が登記されないため、匿名性を確保できます。ただし、不動産に氏名が登記されないことは、出資者に不動産の所有権がないことを意味します。

 

一般的に、不動産投資は相続税の節税に有利とされていますが、不動産の所有権がなければ節税になりません。

 

不動産投資と相続税の関係については、後ほど詳しく説明しますが、ほとんどの場合、不動産クラウドファンディングは匿名組合型に該当します。

6. 任意組合型ならば節税対策が可能(相続税)

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産クラウドファンディングの仕組みには、匿名組合型以外に任意組合型があります。任意組合型であれば、相続税の節税対策が可能です。下記で具体的に解説します。

 

6.1. 相続税の概要

相続税とは、「現金」「株式」「不動産」などの財産を他人に相続する際にかかる税金です。2015年に相続税法が改正され、基礎控除額が大幅に減ったことから、相続税の税金負担が大きくなっています。そのため、相続税対策をするかしないかで、実際に相続できる財産の金額が大きく変化します。

 

相続税法を改正する前と改正したあとの基礎控除額は、以下の通りです。

 

相続税法改正前

5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)

相続税法改正後
(2015年〜)

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

 

たとえば、法定相続人が1人の場合、3,600万円が基礎控除額で、それを超過した分に対して相続税がかかります。

 

6.2. 任意組合契約と匿名組合契約の違い

任意組合型は「任意組合契約」に基づいて事業者と契約します。

 

任意組合契約と匿名組合契約の違いを、以下の表にまとめました。

 

 

任意組合契約

匿名組合契約

投資の仕組み

不動産の共有持分を購入する

事業者に金銭を出資する

不動産登記

氏名が登記される

氏名が登記されない

不動産の所有権

あり

なし

分配金の扱い

「不動産所得」として扱う

「雑所得」として扱う

相続税対策

可能

不可能

 

匿名組合型は、事業者に出資して分配金を受け取るのみで、不動産の所有権は事業者にあります。

 

一方、任意組合型は、事業者が取得・運営する不動産の持分を一部購入する仕組みです。そのため、不動産の所有権を一部保有していることになります。

 

不動産の所有権を持つことが、相続税の節税対策において重要なポイントです。下記で詳しく解説します。

 

6.3. 評価額の差額で節税対策

任意組合型の場合、不動産の所有権があるため、「不動産」として相続できます。現金と違って、不動産は相続される際、評価額が下がります。

 

評価額が下がることで、相続する財産の金額が下がるため、相続税の節税が可能です。相続の場合は地価公示価格の約80%、また不動産が賃貸用物件の場合は約65%まで評価額が下がります。

 

不動産クラウドファンディングの多くは賃貸用物件が対象であるため、任意組合型であれば相続税を大きく節税できます。

 

土地の評価額

評価額

地価公示価格

100%

相続税路線価

約80%

貸家建付地

約65%

 

  • 地価公示価格:適正な市場価格水準
  • 相続税路線価 :相続する際の評価基準
  • 貸家建付地:土地と建物を保有しており、その建物が賃貸物件である際の評価基準

 

6.4. 任意組合型の物件を紹介している不動産クラウドファンディング事業者

相続税の節税対策を考えるならば、匿名組合型ではなく任意組合型の物件に投資する必要があります。

 

ここでは、任意組合型の物件を紹介している事業者をご紹介します。

 

・「利回りくん」

(引用:利回りくん)
(引用:利回りくん

 

「利回りくん」は、株式会社シーラが運営する不動産クラウドファンディングです。

 

最低投資額

1口1万円〜

利回り

5%前後

特長

・社会貢献、地域創生、夢を叶えたい人を不動産投資を通じて応援

・著名人が関わるプロジェクトに投資できる

・楽天ポイントが貯まる

 

宿泊施設、空き家再生、介護などを前提とした物件が多いため、社会貢献・地域創生などを目的とした不動産に投資できます。

 

なかには、堀江貴文氏や前澤友作氏など、著名人が関わるプロジェクトに投資できる案件もあります。また、1口1万円〜と少額からスタートでき、投資額に応じて楽天ポイントが貯まることも特長です。

 

・「Good Com Fund(グットコムファンド)」

(引用:Good Com Fund)
(引用:Good Com Fund

 

「Good Com Fund」は、上場企業の株式会社グッドコムアセットが運営する不動産クラウドファンディングです。

 

最低投資額

1口10万円〜

利回り

4%前後

特長

・資産価値の高い投資用マンションや分譲マンションに投資

・上場企業で信用度が高い

 

「Good Com Fund」は、賃貸需要が高い東京23区かつ駅徒歩10分以内のマンションに特化しています。そのため、投資対象は資産価値の高いマンションが多く、長期的かつ安定的なリターンを期待できます。

 

・「TSON(ティーソン)」

(引用:TSON)
(引用:TSON

 

TSONの不動産小口化商品は、上場企業である株式会社TSONが運営する不動産クラウドファンディングです。

 

最低投資額

1口100万円〜

利回り

4.5〜6%前後

特長

・投資先の選別に独自の不動産AIを活用しており、約4,600万件もの賃貸データを分析している

・環境共生に貢献する物件への積極投資

 

最低投資額は少し高くなりますが、不動産AIによって導き出された優良物件への投資は、安定的なリターンが見込めます。

 

また、大気中の二酸化炭素を軽減する木造住宅への投資を積極的にしたり、国産の木材を使うことで国内の林業をサポートしたりと、社会や環境への貢献もしています。

7. まとめ

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

不動産クラウドファンディングで得た分配金には、20.42%の源泉徴収が発生します。その分配金が年間20万円を超えた場合には確定申告が必要になるため、受け取った分配金の合計を正しく把握しておきましょう。

 

また、不動産クラウドファンディングには匿名組合型と任意組合型の2つがあり、任意組合型は不動産の所有権を持つため、相続税の節税対策につながります。

 

さらに、1口1万円の少額から始められる事業者もあるため、気軽に取り組めるのも魅力です。