日本周辺のロシア軍は活動を活発化させていた
日本周辺のロシア軍についてみていきましょう。
そもそも、ロシアは「ロシアの軍事力が 世界の戦略的な均衡の維持につながっている」という認識をもっています。ロシアが強くあるからこそ、世界のバランスはとれているというのです。だから、米国がミサイル防衛システムの配備を進めようとすれば、それに対抗するよう新型兵器の開発を強調……そこにあるのは、ロシアが世界のパワーバランスを保っている自負です。
【ロシアの兵力】
◆総兵力:約90万人
◆陸上戦力:兵力約33万人、戦車約2,800両
◆海上戦力:戦艦1,130隻、約202万トン、空母1隻、潜水艦69隻、海兵隊:約3万5,0000人
◆航空戦力:作戦機1,380機、第4世代戦闘機(近代的戦闘機)910機、爆撃機137機
出所:防衛省『令和3年防衛白書』より
そのようななか白書では、「極東地域のロシア軍の戦力は、ピーク時に比べ大幅に削減」というものの、「核戦力を含む相当規模の戦力が存在」「日本周辺での活動の活発化の傾向」「最新の装備が極東方面にも配備」と分析し、「極東地域のロシア軍の位置づけや動向について注視していく必要がある」としています。
活動の活発化はいくつか兆候がみられていて、たとえば2018年9月、ロシア海軍艦艇28隻が宗谷海峡を通航。これは冷戦終結後、防衛省として一 度に公表した同海峡の通航隻数の中では過去最多だといいます。またロシア機への対応としてのスクランブル発進回数は、毎年、250~300回ほど記録する状況です。
さらに日本が主権を主張している北方領土での活動も活発化。最新の装備を配備する傾向にあり、択捉島、国後島では地対艦ミサイルのほか、地対空ミサイル・システム「S-300V4」 (最大射程400km)の実戦配備も報じられています。
近年、ロシア国内で領土保全の国民意識が高まっていると指摘されていますが、ウクライナ侵攻、それに伴う欧米を中心とした制裁により、その傾向はさらに高まると言われています。その流れで、より北方四島に重きを置くようになるだろう、という声も。
2014年のウクライナ・クリミア半島への侵攻後、欧米からの経済制裁から、中国との関係を急速に深めてきたロシア。実は今回のウクライナ侵攻前から、日本周辺の地政学リスクは高まっていました。日本の多くの人たちは、それを意識してこなかっただけ、といえるでしょう。
ロシアのウクライナ侵攻にとって、「日本は大丈夫なのだろうか」という意識が高まっていますが、実はだいぶ前から脅威は高まっていました。冒頭の子どもの質問に対して、気休めでも「大丈夫」とは言えない状況にあったのです。ただ、そのことを多くの日本人は知ろうとはしてこなかった……それが現実だといえるでしょう。