「年金」を含むツイートは何を契機に投稿されているか?…傾向の検証
本章の問題意識…前月までに見られた傾向は、今月にも当てはまるか
これまでに筆者は、2021年9~10月に発信された「年金」を含むツイートに対する分析から、
2.少数の投稿者のみが数回以上参照しているリンクを含むツイートは投稿日別のツイート数等がほぼ一定水準で推移するし、あるWebサイトを宣伝・周知する目的で投稿されている可能性が高い、
3.いいね数やリツイート数が多い少数のツイートが、いいね数全体とリツイート数全体の大部分を占める、
などの傾向を発見した。
そこで、これらの傾向が他の時期にも当てはまるかを確認するために、2021年11月の投稿に対してもこれまでと同じ枠組みの分析を行う。
投稿日時×リンク先Webページ区分ごとの傾向や特徴…投稿日別ではニュースへの反応のように見えるが、実際はニュース以外の記事への反応
前述した傾向のうち、1.年金に関係するニュースがあるとリンク先のWebページのタイトルに「年金」を含むツイートのツイート数や投稿者数が増える、という傾向が普遍的か否かを確認するために、投稿日とリンク先Webページの区分の組み合わせごとの傾向や特徴を見たのが[図表2]である。
まず、ツイート数と投稿者数(図表2の上段と中段)は、11月4日(木)~5日(金)辺りと11月9日(火)~10日(水)辺りで特に多くなっていた。しかし、リンク先のWebページのタイトルに「年金」を含むツイート(「c:Web年金あり」)が特に多かったのは、11月4日のみだった。また、いいね数やリツイート数が特に多いのは11月8日のみで、「c:Web年金あり」との連動は小さかった。
そこで、リンク先のWebページのタイトルに「年金」を含むツイートについて、投稿日とリンク先Webページの区分の組み合わせごとにツイート数等を集計し、参照しているツイート数が多い上位20件を列挙したのが[図表3]である。
この中で最も多くのツイートから参照されていたのは、11月4日に投稿されたツイートから参照された「就職氷河期世代の暗黒「年金すらもらえない」老後破産の現実味(幻冬舎ゴールドオンライン)-Yahoo!ニュース」であり、2位以下を大きく引き離していた。
10月には年金振込通知書の誤送付などの日本年金機構による不祥事に関する記事が多く参照され、同日(11月4日)などには同機構が発注する印刷で談合が行われた可能性に関する記事もあったが、11月に注目されたのは日本年金機構の不祥事ではなかった。
前述の記事は、いわゆるニュース(新しく判明した事実にもとづく記事)ではない。厚生労働省が2020年10月から開始した『就職氷河期世代活躍支援プラン』のWebページを元に就職氷河期世代の定義を紹介し、2020年12月に厚生労働省が公表した平均年金額と2018年9月に経済産業省が産業構造審議会2050経済社会構造部会で提示した資料を参照した論考である。
同記事のタイトル(テーマ)が参照が多かった背景の1つとして考えられるが、もう1つの背景として考えられるのが、11月3~4日に一定程度の参照を集めている「痛いニュース(ノ∀`):経産省「現役世代を74歳までとし高齢者を支えれば、2065年まで年金制度を維持できます」-ライブドアブログ」である。このブログ記事は、前述したYahoo!ニュースの記事の2ページ目を引用した5ちゃんねる掲示板(旧2ちゃんねる掲示板)のスレッドを転載したものである。
前述した経済産業省の資料は年齢別人口の比を示したものであり年金制度について明示して述べたものではなかったが、このようなタイトルのスレッドが立てられたことで年金に関心を持つ人々から多く参照された可能性がある。
単日の単独のリンク先Webページとして次に多く参照されたのは「内閣支持増47.1% 優先課題「年金・医療」トップ時事世論調査(時事通信) -Yahoo!ニュース」だったが、この記事を参照したツイートは多くのいいねを集めた一方で、リツイート数は低調だった。
また、11月22~23日には「住民税非課税世帯に10万円「資産ある年金生活者にも給付」の矛盾(NEWSポストセブン)-Yahoo!ニュース」が多く参照されており、Yahoo!ニュースだけでなく発行元のWebサイトに掲載された記事も一定の参照を集めていた。この記事も、いいね数に比べてリツイート数が低調となっている。