「会計上の利益」は容易に操作できる
損益計算書に記される会計上の利益は、実は合法の範囲内でも十分に操作可能です。そのため、金融機関や株式市場からの評価を高く保ちたいがゆえに、利益を大きく見せかけようとする企業もあります。
上場企業ともなると当然、固定資産を購入したり、在庫を抱えたり、掛けで取引をしたりします。しかし、現金の入出金のみで利益を算出すると、それは実態に合わなくなってしまいます。そこで会計上、一定期間にわたって収支を配分しながら利益を計算するのですが、そこに会計操作の余地が生まれてしまうのです。
たとえば、得意先に「来期に返品してもいいから、今期に売ったことにさせて」と頼むとか、5年契約のサービスを販売した際に(1年分ずつ売上を計上せずに)5年分をまとめて最初の年の売上に計上する、などの方法があります。
他にも、親密な取引先同士で、あまった在庫を売買し合ったり、いったんまとめて買い取ってもらい来期に余った分を買い戻したり、という手もあります。
そしてその他にも、会計操作には多くの方法があるのです。
キャッシュフローの動きに不自然さはないか
しかし企業の決算書は、損益計算書だけではありません。他にも、キャッシュフロー計算書や、貸借対照表があります。そして、それらも併せて多面的にその企業の活動を見ることで、会計操作を見抜くことが可能となるのです。
まず注目すべきは、キャッシュフロー計算書に記されている「営業キャッシュフロー」ではないでしょうか。これは要するに、「本業での現金利益」を示す値です。健全な会社は、会計上の利益とともに、一定以上の営業キャッシュフローを得ているものです。
逆に、会計上の利益は出ているのに営業キャッシュフローがマイナスになっていたり、会計上の利益が大幅に増えているのに営業キャッシュフローがほとんど増えていなかったりする会社は、どこか注意が必要かもしれません。