日本経済は長期的にみれば拡大しており、今後もその傾向は変わらないはずである。経済成長に応じて労働者の報酬の「総額」は増えていくと考えられるが、それは誰にどう分配されるのだろうか。世代・性別にみた、今後の賃金の変化について、リクルートワークス研究所研究員の坂本貴志氏が解説する。 ※本連載は、書籍『統計で考える働き方の未来 ――高齢者が働き続ける国へ』(筑摩書房)より一部を抜粋・再編集したものです。
「将来の日本企業」初任給は引き上げられ、中高年層は“漂流する”事情 (写真はイメージです/PIXTA)

「政府の施策に問題あり」今後、最も困難な世代は…

そして、最も困難な状況におかれるのは、将来の高齢世代、つまり現在30代や40代に当たる人たちであろう。

 

希望する役職に就けていない今の中堅層が将来どうなるかを考えたとき、その多くが十分な役職を得られないままキャリアを終えることになる。数が多いこの年代の従業員を処遇するだけのポストを、企業は今後も用意できないからだ。

 

定年延長などの施策によって、職業人生はますます長くなる。そうなると、将来は70歳を過ぎても会社に残る人が出てくるかもしれない。そうなったときに、多くの企業で社内の人口構成の高齢化、世代交代の遅れがより深刻な問題となるはずである。

 

将来の日本企業における組織はどのようなものであるべきか。

 

理想的には、企業組織は若手や中堅に豊富なビジネス経験を与える存在であるべきである。若い人に自身がこなせるかどうかぎりぎりの役割を与え、思う存分に活躍し、職業能力を高めてもらう。そして、豊富な経験によって育まれた人材が社会に価値を創造する。経験を与えなければ人は成長しないものだ。

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しかし現在政府が行っているのは、高齢社員の雇用を企業に押しつけるような施策だ。この状態が続けば、企業組織はさらに高齢化し、適切な経験を与えられず職業能力を開発する機会を失った人々が漂流することになる。

 

少子高齢化のなかで、国とともに高齢化している日本企業。このままでは厳しい国際競争を生き残っていくことはできない。

 

 

坂本 貴志

リクルートワークス研究所 研究員