「コロナ禍で給与減」と言われているが、「実質賃金指数」でみてみると
失業率、生活保護の状況をみてきましたが、確かにコロナ禍前と後と比べてみると少々悪化がみられましたが、よく報じられているような「コロナ禍で困窮者急増」というようなことは実際には起きていないようです。
ただ数値に表れていない部分も多いでしょう。生活保護に関していえば、不正受給問題などもあり、良いイメージがあるとはいえません。生活保護を受けることにネガティブに捉え、本当に必要な支援が行き届いていないことが考えられます。
また厚生労働省『毎月勤労統計調査』(2020年)によると、現金給与総額は31万8,387円で前年比1.2%減。うち一般労働者が41万7,453円で前年比1.7%減、パートタイム労働者が9万9,378円で前年比0.4%減。 コロナ禍において仕事を失っていなくても、「給与減」の苦しい思いをしている人たちが多いことが推測されます。
ただ給与に関していえば「コロナ禍だから」というわけではないようです。前出調査で2015年平均を100とした際の実質賃金指数(労働者が実際に受け取った給与=名目賃金から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を考慮して算出した指数)を時系列でみていくと、2020年は98.6と確かにコロナ禍の影響を受けたようにみえますが、2019年も99.8と、100を割っています。
さらに2015年よりも前についてみていくと、いずれも100以上。実質、私たちが手にしている給与は低下傾向にあり、コロナ禍以前から苦しくなる一方だったことがわかります(図表3)。
コロナ禍で給与減、賞与ゼロ、失業、生活保護……困窮する人がクローズアップさえていますが、だいぶ前から日本はダメだった、というのが真実です。